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第11回特許制度小委員会 議事要旨

平成15年7月9日
経済産業省
特許庁

7月8日標記委員会(委員長:後藤 晃東京大学教授・先端経済工学研究センター長)が開催されたところ、概要は以下のとおり。

1.職務発明に係る特許権についての通常実施権について

事務局案に特に異論はなく、従業者が職務発明について特許を受けた時、現行制度どおり、特に契約等の定めがない場合であっても使用者が通常実施権を有することが法定されることが必要との意見で一致。

2.職務発明、自由発明に係る権利の予約承継について

事務局案には以下のようなコメントが出たが、原則としては、職務発明について特許を受ける権利等をあらかじめ使用者が包括的に継承すること等を契約等により定めることを認め、一方、自由発明については、現行制度どおり同様の定めをした場合にはこれを無効とすることでよいという意見で一致。

  • 大学の先生の発明について、職務発明と自由発明との区別が難しい。
  • 産学連携を推進するため、職務発明以外の発明についても機関帰属化を図るべき。
  • 自由発明については、大学の先生がなした発明であっても、権利の予約承継を認めるべきではない。職務発明の定義は、判例の積み重ねによる明確化が図られており、大学の先生の発明についても、その定義の枠内で取扱われるべき。

3.職務発明に係る権利の承継があった場合の対価の決定について

(1)事務局案では、対価額の決定が尊重される場合の要件について、丸1契約等の定めが合理的な手続を経て決定され、2.かつ個々の対価額の決定が当該定めに従い適切になされ、3.(さらに)決定された対価の額が不合理でないことの3点を提示したところ、以下のような意見あり。

  • 包括ライセンス契約時などは個別の発明毎の実績報酬は効率的に算出できない。報酬規程が全体として適正で、従業者毎の差別がなければよいのではないか。
  • 失敗事例についての損失負担額も考慮した規程全体としての合理性を評価すべき。
  • 丸1及び丸2には異論ないが、丸3を司法審査の対象とすると、現行制度下の司法審査と状況が変わらない。丸3は司法審査の対象としなくてもよい。
  • 研究者側には対価の額についての相場観がないため、丸3を司法審査の対象とすると、訴訟が多発する恐れがあるのではないか。
  • 丸1丸3の要件は、実情に応じて総合的に判断されるべきものである。従業者には使用者の示した条件と異なる条件を選択する自由度がないことを考慮すると、丸3の要件を残すことが適当。
  • 丸1及び丸2における手続きの合理性の程度を勘案して、丸3を判断するということであれば、民法や労働法における考え方とも整合性がとれ、好ましいのではないか。
  • 丸3については司法審査の対象としないこととすると、丸1及び丸2における手続きの合理性の要件がかえって厳しくなり、結果として企業の自由度が小さくなるのではないか。
  • 丸3は、丸1及び丸2の手続きの合理性について問題のある事例に対して例外的に判断される事項。丸1丸3がすべて考慮されるとした場合でも、対価額の決定がつねに司法審査に委ねられることにはならないのではないか。
  • 合理的手続きの要素たる「実質的交渉」として、何をなすべきなのかを明確にすべき。
  • 従業者の立場から見ても、丸1丸3が条件とされて対価額の決定がされることは好ましい。
  • 交渉の結果、従業者が納得しなかった場合に従業者を救済する道を残すという意味でも丸3は必要。
  • これまでの判例は、社内に十分な規程があることを被告企業が主張立証してこなかったものにすぎず、現行法下においても、裁判所が手続き及び内容の合理性を総合的に考慮する余地があるのではないか。

(2)裁判所が対価を決定するに際して考慮すべき事項の明確化を図るため、現行第35条第4項の規定を改正することが必要かどうか問題提起したところ、以下のような意見あり。

  • 裁判所が対価の額を算定する際の考慮要素については、使用者及び従業者が納得できるような整理を行えばよい。
  • 裁判所が対価額を算定する際には、発明がされる段階、発明が実施される段階における貢献に加え、従業者の給料等の要素も考慮した方がよい。
  • 発明の実施段階における貢献について、通常想定される事業活動による貢献は考慮されるべきでなく、顕著な貢献のみが考慮されるべき。

4.外国特許権等の取扱いについて

  • 特許法第35条によって、外国特許を受ける権利の承継は担保されない一方、承継に対する対価についてのみ規定することは問題ではないか。
  • 日本で雇用関係にある従業者が外国に一時的に出向している場合について、特許法第35条の適用があるとした場合には、特許法第35条の適用がない現地(外国)の従業者との関係で公平性が保てないのではないか。

5.対価請求権の消滅時効について

  • 短期消滅時効の規定を導入することについても引き続き検討すべき。
  • 一般債権の消滅時効の期間(10年)と、異なる規定を定めることに合理性はないのではないか。
  • 時効の起算点が難しいため、特許法第35条に規定することは難しいのではないか。

6.今後のスケジュール等

資料4として、本日付けで特許庁として決定した「特許戦略計画」を配布。
次回の小委員会は、7月22日の週に開催予定。

以上

[更新日 2003年7月11日]

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