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第20回特許制度小委員会 議事要旨

11月28日(月曜日)16時00分~18時00分に、産業構造審議会 知的財産政策部会 第20回特許制度小委員会(委員長:後藤 晃 東京大学先端科学技術研究センター教授)が開催された。

1.審議内容

以下の項目に関する現状や検討課題について事務局から説明。
その後、自由討議を行ったところ、委員からの意見は以下のとおり。

(1)先使用権制度の在り方について

  • 特許制度の原則は技術の公開であって、先使用権は例外的な規定である。先使用権の範囲を広げて技術の秘匿を推奨するのは妥当でない。
  • 先使用権については判例上、特に大きな問題は生じていない。法改正により条文を明確化するといっても、個別の事例に対応できるのか不明であり、また、その意義も不明だ。
  • 法改正には反対。今後の判例の蓄積で先使用権の範囲等が明確化されることを期待しつつ、ガイドラインで手当てするのが妥当。
  • 公証制度の利用の方法について、ガイドラインで周知徹底するのがよい。公証人連合会の協力も得られるのではないか。
  • 先使用権制度は特許権者と先使用権者とのバランスを考慮して作られた制度であって、このバランスを動かすべきではない。先使用権を強くすると、特許権が弱まることとなり、特許制度の根幹に影響する。
  • 判例を参考に法改正により条文の明確化を図っても、他の不都合を生じるおそれがある。また、たとえ法改正がされても、実際には明確化されない懸念もある。
  • 大学では特許出願をし、特許権取得についての意識が浸透しつつあるが、先使用権を拡大すると、この流れに逆行することになり好ましくない。
  • ガイドラインには、事実実験公正証書の活用法について記載し、周知して欲しい。
  • ソロー封筒制度には反対。技術流出の問題については、技術者の流出を防ぐ方策について、広い観点から検討を行うことなどが必要であって、特許制度改正で対応する類のものではない。
  • 実施形式の変更についての判例は理解しづらい。どの程度の変更が許容されるのか予測可能となるよう、ガイドラインである程度明確にすべき。ケースバイケースとするのではなく、個別判断が明確にできるよう書いて欲しい。
  • 先使用の立証については、仮に事実実験公正証書が有効であるとしても、中小・ベンチャー企業にとって金銭的に負担とならないような方法を検討すべき。
  • 各産業界の意見を聴取しつつ、きめ細かなガイドラインを作成すべき。
  • 裁判所の判示事項を基に、特許庁がガイドラインを作るといっても限界がある。無難なものしか作れないのではないか。また、数少ない事例だけで決めてしまうのは危険でもある。公証人や弁理士の使い方についてのガイドラインを作成することについては賛成。

(2)外国語書面出願の翻訳文提出期間について

大学では、英語の論文を利用して外国語書面で出願することはあるが、強い権利の取得のためには、出願までにある程度内容を精査する必要があるから、翻訳文提出期間を延長してもあまり意味がない。2月で問題ないのではないか。

(3)カラー図面等の取扱いについて

  • カラーの方が見やすいのは事実であり、審査官に参考資料として提出できるのはよいが、技術流出の問題もあり、公開公報に載せるべきではない。
  • カラーの方がわかりやすいという面もあるが、かえって表現が曖昧になる可能性もあり、好ましくないのではないか。
  • 時代はカラーであり、国際的にカラー化をすすめるべき。

(4)拒絶理由応答期間について

  • 判例では、出願後には実験データを補充できないとされている。拒絶理由通知に対する応答に実験が必要というのが、どのようなケースを意味するのか、明確にすべき。
  • ライフサイエンス分野では実験に時間が掛かるのは事実だが、応答期間を一律延長すると、全件応答期間満了を待って審査が進められることになるので、審査迅速化の観点から望ましくない。請求で延長可能とするのがよい。
  • どのような場合に延長が認められるのかを明確にすべき。
  • 何でもかんでも延長を認めるというのは妥当ではなく、正当な理由があるときにのみ延長を認めるべき。

(5)新規性喪失の例外規定の証明手続について

  • 本来、新規性喪失の例外規定は使わない方がよいもの。手続を簡素化することで利用が増えるのは好ましくない。
  • 企業では基本的に新規性喪失の例外規定は使わない。
  • 早期に公開することが公益にかなうケースもあり、新規性喪失の例外規定を使いやすくするべきだ。
  • 証明書の提出期限は、内容的緩和とのバランスで考えるべき。
  • 新規性喪失の例外規定は、基本的には「例外規定」であり、拡張すべきではない。しかし、運用面では検討の余地がある。法改正を行わずに運用で対応可能ではないだろうか。
  • 発表者の宣誓証書は、人数が多い場合などは負担が大きい。期限内に提出する必要性は低いのではないか。運用で対応して欲しい。

(6)特許庁の判定制度とADR機関との適切な役割分担について

  • 判定制度が極めて有意義とまでは言えないが、中小企業にはニーズがあり、また、紛争解決手段は多様な方がよいとの観点から、存続が妥当ではないか。
  • 判定の結果は訴訟の判断とほぼ一致しており、存在意義がある。
  • 審判の負担としては1%程度であり、廃止しなくてもよいのではないか。
  • 製薬業界では判定は利用していないが、ニーズがあるなら残しておくべき。ADRには別の機能があり、併存可能だ。
  • 判定がセンター判定より安いとのことだが、弁理士/弁護士費用を含めた全体の費用で比較すると、実質的な差がないのではないか。
  • 意匠法における判定制度は存続すべきとの声がある。
  • 判定は民業圧迫であり、ADR機関の利用を活性化させるため、廃止すべきではないか。
  • 民民の争いに官がどの程度まで関与すべきか、との観点から議論すべき。

2.今後の審議スケジュール

第21回特許制度小委員会は12月16日(金曜日)16時00分~18時00分に開催予定。

[更新日 2005年12月13日]

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