• 用語解説

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不正競争防止法違反被害への救済

不正競争防止法に違反する不正競争行為に対しては、裁判所での民事手続による救済として、侵害行為等の差止めを求めること、損害賠償を請求すること、不当利得の返還を請求すること、信用回復のための措置等を求めることが可能で、これとは別に、不正競争行為によっては、刑事事件となりえ、裁判の結果、刑事罰が適用されることもありえます。

差止請求

商品等の主体について混同誤認を生じさせる行為、他人の著名な商品等表示を使用する行為、デッドコピー商品を流通させる行為といった、不正競争防止法に違反する不正競争行為によって営業上の利益を侵害され、または侵害される恐れがある場合、これに対する差止めの態様としては、以下のものがあります(不正競争防止法第3条)。

  1. 侵害行為をする者に対するその行為の停止の請求
  2. 侵害の恐れのある行為をする者に対する侵害の予防の請求
  3. 侵害行為を組成した物(侵害行為によって作成された物を含みます。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の停止・予防に必要な措置の請求

このうち、3は、1または2とともにのみ請求することができます。また、差止め請求の際には、侵害者に侵害についての故意や過失があることは要件ではありません。

なお、既に不正競争行為による営業上の利益侵害が現実化しており、これを放置しては著しい損害が生じる可能性がある場合など緊急性があるときには、裁判所に対して、まず侵害行為の停止を内容とする仮処分を申立てることが考えられます。

損害賠償請求

不正競争行為により営業上の利益を侵害した者に対して損害賠償請求するには、多くの事実について立証しなければならないところ、その立証活動は困難な場合も多いので、損害額については法律が算定規定を設けており(不正競争防止法第5条)、不正競争行為者に対する損害賠償請求を容易にしています。ただし、損害賠償請求の前提として必要な不正競争行為者の故意・過失については、不正競争行為について過失があったものとの推定規定はありませんので、権利者の側で証明しなければなりません。

(1)損害賠償額の算定規定その1(不正競争防止法第5条第1項による救済)

商品の形態をデッドコピーする行為や、商品形態がその商品の需要者の間に周知のものとなっているときにその商品の主体と混同を生じさせる行為、さらに混同の恐れがなくとも著名表示の無断使用行為といった不正競争行為によって、自己の営業上の利益を侵害された者は、侵害者が侵害行為組成物を譲渡したときは、その譲渡した物の数量に、自らがその侵害がなければ販売することができた物の単位数量あたりの利益の額を乗じて得た額を、自らのその商品の販売等の能力に応じた額を超えない限度において、自らが受けた損害の額とすることができます。ただし、譲渡数量の全部または一部を被侵害者が販売することができない事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとされます(不正競争防止法第5条第1項)。営業上の利益を侵害された者は、損害の額をゼロから立証しなくても、これにより損害額を算定することができるとするもので、条文の構造は、特許権、商標権の場合と同様です。

なお、侵害者の製品の一構成部分のみが模倣品と言えるものであれば、全体の中の割合に応じた損害額に減額すべきであるとの寄与率を考えることになります。

「損害額」※=

「侵害者の譲渡等数量」×「被侵害者の単位あたりの利益」(ここまでの計算結果が被侵害者の販売等の能力に応じた額を超えない限度)-「被侵害者が販売等を行えない事情に応じた金額」

※寄与率の問題が損害の算定結果に影響する。

例えば、侵害者が1000個の形態模倣をした商品を販売し、被侵害者の1個あたりの利益の額が1万円だとすれば、被侵害者の損害額が1000万円とされます。もっとも、競合品が存在したり、寄与率の問題があるなどの事情があれば、減額される可能性があります。

(2)損害賠償額の算定規定その2(不正競争防止法第5条第2項による救済)

損害賠償を請求するにあたって、不正競争行為者が不正競争行為によって利益を受けているときは、その額が、営業上の利益を侵害されたものの損害額であるものと推定されます。しかし、この規定は推定規定ですので、商品の用途方法や需要者の違い、被告商品の購買力が独自の要素に起因することなどを理由として推定が覆される可能性があります。また、前述(1)と同じで、寄与率の問題は生じ得ます。

「損害額」=「不正競争行為者の利益」

例えば、不正競争行為者が1000万円の利益をあげていれば、被侵害者は1000万円の損害を受けたものと推定されることになります。

(3)損害賠償額の算定規定その3(不正競争防止法第5条第3項による救済)

本条は、不正競争行為によって、損害を受けた場合のその損害額の算定については、当該侵害に係る商品の形態の使用に際して、受けるべき金銭とすることができます。

「損害額」=「ライセンス料相当額」

  • 例:「侵害者の売上」×「商品の形態、商品等表示等のライセンス料率」

例えば、侵害者の売上が5000万円で、当該「形態」のライセンス料率の相場が売上高の7%であれば、350万円が被侵害者の損害とすることができます。

不当利得返還請求

不正競争行為により営業上の利益が侵害された場合、不当利得返還請求権を行使することができることもあります。

信用回復措置請求

不正競争行為によって営業上の信用を害された場合には、謝罪広告などの信用回復措置を命ずる裁判所の判決を求めることができます(不正競争防止法第7条)。

刑事責任の追及

不正の目的をもって不正競争防止法第2条第1項第1号(周知表示混同惹起行為)に違反した者、不正の利益を得る目的で第2号(著名表示冒用行為)、第3号(商品形態模倣行為)に違反した者は5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処するとされているので、周知の商品等表示を使用して商品の出所について混同を生じさせる行為、他人の商品形態を模倣する行為等については刑事責任の追求も視野に入れることができます。また、懲役と罰金を併科(両方を科すこと)することができます。法人については、その業務に関して違反行為を行った場合、その実行行為者の処罰に加えて、業務主体たる法人にも罰金刑が科されるとする、いわゆる両罰規定がおかれています(一部の違反については、3億円以下の罰金刑が法人に科される。不正競争防止法第22条第1項)。

[更新日 2024年2月14日]

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