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ハーグ協定のジュネーブ改正協定の概要

意匠課意匠制度企画室

意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定(以下「ジュネーブ改正協定」)は、世界知的所有権機関(WIPO)国際事務局が管理する意匠登録手続の簡素化と経費節減を目的とした国際条約であり、意匠について、一つの国際出願手続により国際登録簿に国際登録を受けることによって、複数の指定締約国における保護を一括で可能とするものです。
2015年、我が国もジュネーブ改正協定の締結国となりましたので、ユーザーの皆様は、ジュネーブ改正協定の締約国において、意匠の国際登録制度を利用した簡易かつ低廉な手段による意匠の保護を受けることができます。

ジュネーブ改正協定に基づく意匠の国際登録制度の概要を以下に御紹介します。

Ⅰ. ジュネーブ改正協定の概要

1. 経緯

ハーグ協定は、1925年に「意匠の国際寄託に関するハーグ協定」として制定されたものを起源として、その後1934年にロンドンで、また1960年にハーグで、それぞれ改正協定が制定されました。しかしながら、これらいずれの改正協定も、各国における保護の効果を拒絶するための期間が短いこと等が障害となり、実体審査国の参加は進みませんでした。
ジュネーブ改正協定は、実体審査国や政府間機関の積極的な参加を目指し、これまでの改正協定を更に修正・補完する形で1999年7月に制定され、2003年12月に発効しました。
ジュネーブ改正協定には、2022年1月4日時点、日本、EU、韓国、米国、を含む67の国と政府間機関が参加しています。(我が国については、2015年5月13日に正式発効しました。)

2. 制度の骨子

出願人がWIPO国際事務局に対して出願をすると(国際出願)、方式審査を経て、WIPO国際事務局が管理する国際登録簿にその国際出願の内容が記録され(国際登録)、国際登録された意匠は、その後所定期間が経過すると公表されます(国際公表)。国際出願は、WIPO国際事務局に対して直接行うことも(直接出願)、自国の官庁を経由して行うことも(間接出願)できます。
国際登録の名義人は、国際出願時に指定した締約国(指定国)の官庁が国際公表から6か月(又は、各国の宣言により12か月)以内に拒絶の通報をしない限り、その指定国において意匠の保護を確保することができます。

3. 意匠の保護の具体的な内容

国際登録された意匠は、指定国において、次の保護を受けることができます。

  • (1)国際登録日から、指定国の官庁に出願されていた場合と同一の効果。
  • (2)指定国の官庁が、拒絶の通報期間(国際公表から6か月又は12か月)内に拒絶する旨の通報をしない場合には同期間の経過時、拒絶の通報後に当該通報を取り下げた場合はその取下げ時、又は、拒絶の通報期間内に保護の付与の声明を行った場合はその声明時から、指定国の法令に基づく保護の付与と同一の効果。
  • (3)国際登録の存続期間は、国際登録日から5年(その後更新可能)。

4. 手続の概略

  • (1)国際出願及び使用言語
    意匠の国際出願をする時は、直接又は自国官庁を通じて、WIPO国際事務局に願書を提出します。国際出願の言語は、英語、フランス語、スペイン語の中から任意に選択します。
    1つの国際出願で、複数の指定国を選択することができます。また、1つの国際出願に、最大100までの意匠を含めることができます(ロカルノ国際意匠分類の同一の類に属することが条件。)。
  • (2)WIPO国際事務局による国際登録、国際公表
    WIPO国際事務局は、国際出願の方式審査をした後、国際登録簿に意匠を登録します。国際登録された意匠は、国際登録から12か月後(標準公表期間)、又は出願人の請求により国際登録の公表前であればいつでも若しくは国際登録後30か月以内の公表延期期間が経過した後に、WIPO国際事務局によって国際公表されます。
     
    ※2022年1月1日から、標準公表期間を6月から12月に延長し、国際登録の公表前であればいつでも早期公表の請求が可能となりました※1
    また、出願人は、次のいずれかを選択することもできます。
    (a) 国際登録の登録後直ちに公表(すなわち、即時公表)又は、
    (b) 選択された時点での公表(出願日から数えた月数で指定)※2
    • ※1:ハーグ協定の1999年改正協定及び1960年改正協定に基づく共通規則の第17規則改正の採択
      原文:Timing of Publication of International Registrations (HAGUE/2021/10)
      参照:WIPO Hague Information Notices(外部サイトへリンク)
    • ※2:出願人は、標準公表よりも早い時期を指定することができます。また、標準公表の期間を超えて公表を延期することも可能です。
      なお、可能な最大延期期間は、国際出願で指定された締約国により異なります。
  • (3)指定国官庁による拒絶の通報
    指定国の官庁は、その指定国において国際登録に係る意匠の保護を拒絶する場合には、国際公表から6か月以内(宣言をしている場合には12か月以内)に、その旨をWIPO国際事務局に通報します(拒絶の通報)。
  • (4)指定国官庁による拒絶の取下げの通報、保護の付与の声明
    指定国の官庁は、拒絶の通報を行った意匠について、後に拒絶の理由が解消した場合には、WIPO国際事務局に対して拒絶の取下げの通報を行います。
    指定国の官庁は、その指定国において国際登録に係る意匠の保護を認める場合には、上記(3)の期間の経過を待つことなく、WIPO国際事務局に対して保護の付与の声明を送付することができます。
    これらいずれの場合も、当該指定国の法令に基づく保護の付与と同一の効果が発生します。
  • (5)更新
    国際登録の存続期間は、国際登録日から5年です。また、国際登録は更新することができます。更新の手続はWIPO国際事務局に対して行うものであり、指定国ごとに行う必要はありません。
  • (6)料金
    一の通貨(スイスフラン)によるWIPO国際事務局への手数料の支払だけで、国際出願、及び国際登録の更新を行うことができます。

5. ジュネーブ改正協定を利用した場合のメリット

  • (1)一度の手続で複数国での権利取得が可能
    複数国・複数意匠(最大100意匠)について、単一書類・単一言語・単一通貨での一括出願手続が可能となるため、複数国において意匠権を取得するために必要な直接・間接コストの低廉化が図れます。
    ジュネーブ改正協定と従来の手続の違い
  • (2)複数国・複数意匠についての意匠権の管理が容易
    国際登録の更新や移転等の手続はWIPO国際事務局に対する一回の手続で可能となるため、複数国・複数意匠についての意匠権の管理が容易になります。

→ジュネーブ改正協定への加入により、以上のような効果がもたらされ、

  • 1)我が国企業の国際的経済活動に伴う高コストの改善
  • 2)我が国企業の魅力的なデザイン製品による更なる国際展開の拡大

が期待されます。

[更新日 2022年1月4日]

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