• 用語解説

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欧州共同体 意匠保護に関する指令 2

 第1条 定義

本指令においては,

  • (a) 「意匠」とは,製品自体及び/又はその装飾の特徴,とりわけ線,輪郭,色彩,形状,織り方及び/又は素材に由来する製品の全部若しくは一部の外観をいう。
  • (b) 「製品」とは,あらゆる工業製品又は手工芸品をいい,特に,複合製品に組み込まれることが意図されている部品,包装,外装,グラフィック記号及び印刷の書体等を含むが,コンピュータ・プログラムは除外する。
  • (c) 「複合商品」とは,当該製品の分解及び再組立を可能にする交換可能な複数の構成部品から構成されている製品をいう。

 第2条 適用範囲

  • (1) 本指令は次の各号に掲げるものに適用される。
    • (a) 加盟国の中央産業財産庁に登録された意匠権
    • (b) ベネルクス意匠庁に登録された意匠権
    • (c) 加盟国の1つに効力の及ぶ国際的取決に基づいて登録された意匠権
    • (d) (a),(b)及び(c)に掲げる意匠権に係わる出願
  • (2) 本指令の解釈上,意匠登録には,かかる公告に意匠権を発生させる効力を与えている加盟国の産業財産庁への意匠提出後の公告を含むものとする。

 第3条 保護要件

  • (1) 加盟国は,登録によって意匠を保護し,本指令の規定に従って意匠権者に排他的権利を与えるものとする。
  • (2) 意匠は,新規性と個性的特徴を有する範囲で,意匠権によって保護される。
  • (3) 複合製品の構成部品である製品に施された又は組み込まれた意匠は,次の各号の条件が満たされる場合に限り,新規性と個性的特徴を有すると認められる。
    • (a) 構成部品が,複合製品に組み込まれた後も,当該製品の通常の使用中に目で見えること,及び
    • (b) 当該構成部品の視覚的特徴が,新規性と個性的特徴に係わる要件を基本的に満たしていること
  • (4) (3)(a)にいう「通常の使用」とは,最終利用者による使用をいい,保守,整備又は修繕作業は除くものとする。

 第4条 新規性

意匠は,登録出願日前,又は優先権の主張を伴う場合は優先日前に,同一の意匠が公衆の利用に供されていないときは,新規であるものとみなされる。重要性のない細部のみが異なる特徴を有する意匠は,同一意匠とみなされる。

 第5条 個性的特徴

  • (1) 意匠は,それが知識を有する利用者に与える全体的印象が,登録出願日前,又は優先権の主張を伴う場合は優先日前に公衆の利用に供された他の如何なる意匠が当該利用者に与える全体的印象とも異なっているときは,個性的特徴を有するものとみなされる。
  • (2) 個性的特徴の査定においては,意匠の創作者が当該意匠の創作にあたって享受した自由度を考慮に入れなければならない。

 第6条 開示

  • (1) 第4条及び第5条の適用にあたり,意匠は,登録後の公告又はその他で公告され,展示され,業として実施され,又はその他で開示されていた場合に,公衆の利用に供せられていたとみなされる。ただし,これらの事由が,それが登録出願日前に,又は優先権の主張を伴う場合は優先日前に,共同体内で事業を営み関連する分野に専門化した当事者集団にとって通常の業務の過程で合理的に知り得なかったものであった場合は,この限りでない。意匠は,明示的又は黙示的な秘密保持条件を付して第三者に開示されたという理由だけで,公衆の利用に供せられたとみなされてはならない。
  • (2) 第4条及び第5条の適用にあたり,加盟国の1における登録意匠権に基づきその保護が主張されている意匠が,次に該当する場合は,その開示を考慮してはならない。
    • (a) 意匠創作者若しくはその権利承継人が提供した情報又は取った行動の結果として,意匠創作者,権利承継人又は第三者によって公衆の利用に供されたとき,及び
    • (b) 出願日,又は優先権の主張を伴う場合は優先日に先立つ12月の期間中に公衆の利用に供されたとき
  • (3) (2)は,意匠創作者又はその権利承継人に対する濫用の結果として,意匠が公衆の利用に供されたときにみ適用する。

 第7条 技術機能によって支配される意匠及び相互連結の意匠

  • (1) 専ら技術的機能によってのみ律せられる製品の外観的特徴には意匠権は存在しない。
  • (2) 何れか一方の製品の機能を発揮させるには,意匠が組み込まれ又は施された製品を別の製品に機械的に連結し,又は当該別の製品の中かその周囲若しくはこれに接触させて当該製品を設置する必要がある場合であって,そのような連結又は設置を可能にするためには,当該製品の外観的特徴の形状と寸法を正確に再現しなければならないときは,当該製品の外観的特徴に意匠権は存在しない。
  • (3) (2)の規定にも拘らず,モジュールシステム内の複数の組立又は相互に組替え可能な複数の連結を可能にする目的を果たしている意匠にあっては,第4条及び第5条に掲げる条件に基づき意匠権が発生する。

 第8条 公の秩序又は善良の風俗に反する意匠

公の秩序又は善良の風俗の原則に反する意匠には意匠権は存在しない。

 第9条 保護の範囲

  • (1) 1つの意匠権によって与えられた保護の範囲には,知識を有する利用者に対して全体的に異なった印象を与えない一切の意匠が含まれる。
  • (2) 保護の範囲の査定においては,意匠創作者が当該意匠の創作にあたって享受し得た自由度を考慮に入れなければならない。

 第10条 保護の存続期間

登録により,第3条(2)の要件を満たす意匠は,出願日から起算して5年を単位とする1期間又はそれを越える数期間にわたり意匠権によって保護される。意匠権者は,出願日から起算して合計25年を上限に,5年を単位とする1期間又はそれを越える数期間につき保護期間を更新することができる。

 第11条 無効又は登録の拒絶

  • (1) 意匠が次の各号に該当するときは,登録を拒絶され,登録済であれば,意匠権は無効と宣言されなければならない。
    • (a) 第1条(a)にいう意味での意匠でないとき,又は
    • (b) 第3条から第8条までの要件を満たしていないとき,又は
    • (c) 関係加盟国の法律上,意匠登録出願人又は意匠権者に意匠権を取得する権利がないとき,又は
    • (d) 登録出願日後又は優先権の主張を伴う場合は優先日後に公衆の利用に供せられた先行意匠であって,その日に先立つ一定の日から共同体登録意匠若しくは共同体意匠登録出願,又は関係加盟国の意匠権若しくは当該権利の出願によって保護されているものに抵触するとき
  • (2) 何れの加盟国も,意匠が次の各号の1に該当する場合,登録は拒絶され,登録済であれば,意匠権は無効と宣言されるべき旨を規定することができる。
    • (a) 後発意匠中に識別性を有する標識が使用されている場合であって,その標識を支配する共同体法又は関係加盟国の法令が,当該標識の権利者に,かかる使用を禁止する権利を与えているとき,又は
    • (b) 意匠が関係加盟国の著作権法のもとで保護されている著作物の権限のない使用に該当するとき,又は
    • (c) 意匠が産業財産の保護に関するパリ条約第6条の3に掲げる何れかのもの,又は当該条約当該条項に掲げるもの以外の記章,紋章及び紋章入りの盾であって関係加盟国における公益に著しく関係するものの不当使用に該当するとき
  • (3) (1)(c)に定める根拠は,専ら関係加盟国の法令上の当該意匠権の正当権利者だけがこれを行使することができる。
  • (4) (1)(d)並びに(2)(a)及び(b)に定める根拠は,専ら抵触された権利の登録出願人又は意匠権者だけがこれを行使することができる。
  • (5) (2)(c)に定める根拠は,専らその使用に係わる人その他の法主体だけがこれを行使することができる。
  • (6) (4)及び(5)は,所轄国内当局が(1)(d)及び(2)(c)に定める根拠を自らの発意で行使することもできると規定する加盟国の自由を妨げるものではない。
  • (7) (1)(b)又は(2)により意匠登録が拒絶され,又は意匠権が無効と宣言されたときは,補正後も意匠の同一性が保持され,かつ保護要件が満たされることを条件に,補正した形により意匠を登録し,又は意匠権を維持することができる。補正した形での意匠権設定登録又は維持には,意匠権者による意匠権の一部放棄又は意匠権の一部無効を宣言した裁判所の判決の意匠登録簿への記載を伴う登録が含まれる。
  • (8) 何れの加盟国も,(1)から(7)までの規定の一部修正として,本指令を遵守するために必要な規定の施行日前に当該国において有効であった,登録の拒絶理由又は登録を無効とする理由は,その日前になされた意匠登録出願及びそれに基づく登録に適用されると規定することができる。
  • (9) 意匠権は,それが消滅し,又は放棄された後であっても無効と宣言することができる。

 第12条 意匠権によって与えられる権利

  • (1) 意匠登録は,意匠権者に対し,意匠を実施する排他的な権利及び第三者が自己の承諾を得ずにこれを実施することを阻止する排他的な権利を与える。この場合の使用には,当該意匠を組み込み,又は施した製品の製造,販売の申出,販売,流通,輸入,輸出若しくは使用,又はかかる目的で当該製品を保管することが含まれる。
  • (2) 本指令を遵守するために必要な規定の施行日前の国内法では(1)に掲げる行為を阻止することができない加盟国にあっては,その日前にかかる行為を開始した者がその行為を継続することを阻止することはできない。

 第13条 意匠権によって与えられた権利の制限

  • (1) 意匠登録によって与えられる権利は,次の各号に掲げる行為に関してこれを行使してはならない。
    • (a) 私的かつ非商業的な目的でなされる行為
    • (b) 実験的な目的でなされる行為
    • (c) 引用又は教育を目的とする複製行為。ただし,公正取引慣行に適合しており,意匠の通常の実施を不当に害するものでなく,出所の表示がなされる場合に限る。
  • (2) 意匠権登録によって与えられる権利は,さらに次の各号に掲げる事項に関してもこれを行使してはならない。
    • (a) 関係加盟国の領域内に一時的に入った他国籍の船舶及び航空機上の機器
    • (b) かかる船舶又は航空機の修繕を目的とする補修部品及び付属品の輸入
    • (c) かかる船舶又は航空機に対する修繕の実施

 第14条 経過規定

各加盟国は,第18条の規定により欧州委員会が提出する提案に基づき,本指令の改正案が採択されるときまで,複合製品をその本来の外観を回復させるように修繕する目的で使用される構成部品の意匠の利用に関するそれぞれの既存法規を有効に維持するとともに,かかる部品の市場の自由化が目的の場合に限り,それら法規を修正するものとする。

 第15条 権利の消尽

登録意匠権によって与えられる権利は,当該意匠権の保護範囲に含まれている意匠を組み込み又は施した製品が,意匠権者によって,又はその承諾のもとに共同体内で販売された場合,当該製品に関する行為には及ばないものとする。

 第16条 その他の形式の保護との関係

本指令の規定は,非登録意匠権,商標,その他の識別性を有する標識,特許,実用新案,活字面,民事責任又は不正競争に関する共同体又は関係加盟国の法令の規定を妨げるものではない。

 第17条 著作権との関係

ある加盟国において,又は関して本指令に従って登録された意匠権によって保護される意匠は,その意匠が創作され,又はある形に決められた日から当該加盟国の著作権法に基づく保護を取得する資格も有するものとする。要求される独創性の程度を含む,かかる保護が与えられるための条件及び保護の範囲は,各加盟国が決定するものとする。

 第18条 改正

欧州委員会は,第19条に定める実施の日から3年後に,共同体の産業,とりわけ複合製品及び構成部品の製造業者という最も大きな影響を受ける産業分野,消費者,競争及び域内市場の機能に対する本指令の規定の結果を分析した報告書を提出しなければならない。欧州委員会は,その後少なくとも1年以内に,最も大きな影響を受ける当事者との協議に照らして,複合製品の構成部品につき域内市場を完成させるために必要な本指令の変更及び必要と認めたその他の一切の変更を,欧州議会と理事会に提案しなければならない。

 第19条 実施

  • (1) 加盟国は遅くとも2001年10月28日までに本指令を遵守するために必要な法律,規則又は行政規定を施行するものとする。
  • 加盟国がこれら法規を採択するときは,本指令に対する付託を各法規中に含めるか,又は各法規を正式に公布する際に,かかる付託を併せて行うものとする。この付託を行う方法は各加盟国が定めるものとする。
  • (2) 加盟国は,欧州委員会に対し,本指令の規定する領域において採用した国内法の規定の内容を通知するものとする。

 第20条 施行期日

本指令は,欧州共同体公報における公告の日から20日目に施行する。

 第21条 名宛人

本指令は加盟国を名宛人とする。

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