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平成21年7月に発効する特許協力条約規則(PCT規則)等の改正の概要

平成21年6月
国際政策課

平成21年(2009年)7月1日に発効するPCT規則及び実施細則の改正についてお知らせします。

主な改正内容は、1.請求の範囲の補正書の形式、2.配列表を含む国際出願に関する手続及び手数料計算方法、3.条約第十四条の(4)の改正に規定する宣言を行う意図の通知への応答、となります。

なお、本記事はPCT規則や実施細則の改正の概要を説明する趣旨で作成されています。実際には、日本国特許庁が実施しない改正も含まれていますので、個々の改正項目毎に日本国特許庁による実施の有無にご注意いただきつつご参照願います。

 1.請求の範囲の補正書の形式(規則46.5、66.8及び70.16の改正)

条約第十九条及び第三十四条の規定により、請求の範囲を補正する場合の、補正書の形式を変更するPCT規則の改正が行われました。

補正により変更が生じた用紙のみを差替え用紙として提出する方法から、請求の範囲の全用紙を差替え用紙として提出する方法に変わりました。なお、特定の請求項を削除する場合であっても、後続の請求項の番号を振り直す必要はありません(実施細則第205号)。

この手続は、2009年7月1日以降に条約第十九条又は第三十四条の規定による補正がなされる国際出願に適用されます。

これまでは、条約第十九条又は第三十四条の規定に基づき、請求の範囲の補正をする時には、当該補正前の用紙と異なる用紙についてのみを、差替え用紙として提出することとされていました(言い換えれば、補正後に変更が発生しない用紙に関しては提出不要でした)。

しかしながら、この方法では、とくに複数回の補正がなされた場合、国際予備審査機関又は指定国の審査官が、審査の対象とすべき請求項を判断するのに時間がかかり、大きな業務負担となっているとの問題が提起されていました。

今回の補正方法の変更により、出願人にとっては、ページ単位での補正書作成の煩わしさが解消され、審査官にとっても、常に最新かつ完全な請求の範囲書類をもとに迅速な審査が行えることになります。

(注)今回の改正対象手続は、条約第十九条及び第三十四条補正のみです。請求の範囲についての様式上の欠陥を補充する場合や、明白な誤記の訂正を請求する場合には、従来どおり、当該補充等により変更が生じた用紙のみを差替え用紙として提出します(規則26.4及び91.2)。また、明細書又は図面について条約第三十四条の規定に基づいて補正する場合についても、従来どおり、補正によって変更が生じた用紙のみを差替え用紙として提出します(規則66.8(a)及び(b))。

 2.配列表を含む国際出願に関する手続及び国際出願手数料計算方法

(実施細則第101号、第207号、第208号、第513号、第610号、第702号、第707号及び第713号並びに附属書C及び附属書F(Appendix III及びIV)の修正、実施細則第8部及び附属書Cの2の削除)

ヌクレオチド及び/又はアミノ酸配列表の提出方法について規定する多くの実施細則が修正されました。

修正実施細則は、2009年7月1日以降に提出された国際出願に適用されます。

(1)国際出願手数料の計算方法の変更(実施細則第707号(aの2))

テキスト形式の配列表をできるだけ出願時から提出することを出願人に促すために、テキスト形式の配列表を含む出願に対して、国際出願手数料を優遇することとなりました。具体的な変更点は、以下のとおりです。

  • (i) 電子形式で提出される国際出願に含まれる配列表が、明細書の別個の部分として表示され(規則5.2(a))、かつ、附属書C/WIPO標準ST.25に定めるテキスト形式(以下、「テキストデータ」)で提出された場合には、当該配列表部分の枚数は一切計算されません。
  • (ii) 一方で、配列表が、PDFなどのイメージデータ又は紙形式により提出された場合には、配列表のすべてのページ枚数が計算されます。
  • (iii) また、配列表に関連するテーブルを含む用紙は、電子形式であるか否かに関わらず、すべてのページ枚数が計算されます。
  改正後 改正前
ST.25準拠のテキストデータ 400ページ以下 課金しない ページ数に応じて課金
401ページ以上 一律400ページで課金
ST.25準拠のイメージデータ 400ページ以下 ページ数に応じて課金 ページ数に応じて課金
401ページ以上 一律400ページで課金
紙形式

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ページ数に応じて課金 ページ数に応じて課金
配列表に関連するテーブル 400ページ以下 ページ数に応じて課金 ページ数に応じて課金
401ページ以上 一律400ページで課金

これまでは、電子形式で国際出願がなされた配列表は、テキストデータであるかイメージデータであるかに関わらず、配列表の用紙は400枚までしか国際出願手数料額算出の対象とされていませんでした(つまり、401枚以上の配列表の用紙は何枚であっても一律400枚として計算されていました)。

今後、テキストデータ配列表の国際公開が増えることによって、公開情報の質の向上が図られ、また、第三者にとってもテキストデータを用いての検索が容易となることが期待されています。

日本国特許庁へ、オンラインで国際出願を行う場合に添付する配列表は、ST.25準拠のテキストデータですので、今回の料金優遇の恩恵を受けることができます。
手数料の計算方法については、以下の特許庁ホームページよりご確認ください。
国際出願関係手数料表

(2)その他の主な変更

  • 実施細則附属書CとWIPO標準ST.25との関係の明確化(実施細則第101号、第208号、第513号、第610号、附属書C、附属書F)
  • 国際出願の一部を構成する配列表、国際出願の一部を構成しない配列表の定義の明確化
    • 国際出願の一部を構成する配列表(実施細則附属書Cパラグラフ2.(i-bis))
      明細書の別個の部分として国際出願に含まれた配列表(紙形式、電子形式を問いません)。また、補正や明白な誤記の訂正を行った際の差替え配列表も国際出願の一部を構成する配列表に含まれます。
    • 国際出願の一部を構成しない配列表(実施細則附属書Cパラグラフ2.(i-ter))
      国際出願の一部を構成する配列表が、紙形式や電子形式ではあるがイメージ形式で提出された場合に、第十三規則の三の規定に基づき、国際調査又は国際予備審査のために別途提出された配列表。
  • 調査用(国際出願の一部を構成しない)配列表データのPATENTSCOPE®上での公表
    第十三規則の三の規定に基づき、国際調査のための配列表が提出された場合には、国際調査機関がその写しを国際事務局に送付することとなりました(実施細則第513号の修正)。当該配列表の写しは、WIPOホームページ上のPATENTSCOPE®(外部サイトへリンク)で公表されます。なお、国際出願の一部を構成する配列表も、従来どおり出願の一部として国際事務局に送付された後PATENTSCOPE®で国際公開される点に変更はありません。
  • 配列表に関する補充・補正・訂正方法の一部変更
    電子形式により提出された国際出願の一部を構成する配列表について、補充、明白な誤記の訂正、及び条約第三十四条補正(以下、「補正」という)を行う場合、補正により変更が生じる用紙のみを差替え用紙として提出する従来の方法から、当該補正を反映させた箇所を含む電子形式による配列表全体を提出する方法に変わりました(実施細則附属書Cパラグラフ3の2の修正)。
    一方、紙形式により提出された国際出願の一部を構成する配列表を補正する場合には、従来通り、当該補正により変更が生じた用紙のみの差替えを行います。
    補正を反映させた箇所を含む電子形式による配列表は、受理官庁又は管轄機関が指定する電子文書フォーマット及び送付手段で提出します(実施細則附属書Cパラグラフ38の修正)。
    配列表の補正書等を提出する場合の詳細手続については、以下にお問い合わせ下さい。

    特許庁審査業務部出願課国際出願室受理官庁担当
    電話:03(3581)1101 内線:2643
    FAX:03(3501)0659
    E-mail:お問い合わせフォーム(外部サイトへリンク)
  • 「ミックスモード出願」の廃止
    極めて長大な配列表を含む国際出願に暫定的に対処するものとして導入された「ミックスモード出願」が、電子出願及び処理システムの普及・向上に伴い廃止されました(実施細則第701号及び第713号の修正、第8部及び附属書Cの2の削除)。
    ミックスモード出願:国際出願を構成する配列表を、電子媒体(又は電子媒体及び紙の双方)で提出し、願書や明細書等、他の国際出願の部分は、紙により提出する出願形式。
    日本国特許庁は、ミックスモード出願は受け付けていません。
  • 物理媒体を用いた電子形式による配列表の提出要件の明示(附属書F添付書類IV)。

 3.PCT第十四条(4)に規定する宣言を行う意図の通知への応答(規則29.4の改正)

PCTは、国際出願日の認定要件(条約第十一条)を満たしていなかったにもかかわらず、受理官庁が誤って国際出願日を認定した場合について規定しています。この場合、出願日から4ヶ月の期間内であれば、受理官庁は、当該国際出願は取り下げられたものとみなす旨の宣言をすることとしています(条約第十四条(4))。

このようなケースは極めてまれであると考えられますが、この際の手続が、以下の通り明確化されました。

  • (i)受理官庁は、条約第十四条(4)に規定する“国際出願は取り下げられたものとみなす旨の宣言”を行う場合には、宣言前に、当該宣言を行う意図、理由を出願人に通知します。また、要素(請求の範囲又は明細書)が欠落しているために当該宣言を行う意図がある場合、引用により補充するかどうかを確認するよう出願人に求めます。
    日本は、引用補充に関する規定が国内法令と適合しないことを国際事務局に通知しており、日本国特許庁に提出された国際出願については、引用補充に関する当該規定は適用されません。
  • (ii)上記、受理官庁の暫定的な認定に同意しない場合、出願人は2ヶ月以内に抗弁を提出します。(今回、提出期間が1ヶ月から2ヶ月に変更されました。引用により含めることを確認するための期間(受理官庁による求めの日から2ヶ月)に合わせた変更です。)

最新の規則等や各種様式はWIPO国際事務局のウェブサイトを御参照ください。

[更新日 2024年6月21日]

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総務部国際政策課国際出願企画班

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