ホーム> 制度・手続> 特許> 特許協力条約(PCT)に基づく国際出願> PCT国際出願手続> 規則20.5に基づく引用による補充
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平成24年10月
※特許協力条約(以下「PCT」という。)に基づく規則(以下「規則」という。)の改正(2020年7月1日施行)により、要素又は部分を誤って提出してしまった場合、正しい要素又は部分を提出して補充する制度が整備されました。詳細は、「規則20.5の2に基づく明細書等の補充」をご参照ください。
優先権主張を伴う国際出願について、国際出願の「要素」(※1)又は「部分」(※2)が、当該国際出願に記載されていない(欠落している)が、優先権主張の基礎となる先の出願に完全に記載されている場合は、出願人は欠落した「要素」又は「部分」を先の出願から引用により補充することを受理官庁に対して請求することができます。受理官庁が認めた場合には、当該「要素」又は「部分」は、国際出願として提出された書類を受理官庁が最初に受理した日に当該国際出願に含まれていたものとみなされます。これを「引用による補充」といいます。
この引用による補充の手続は、受理官庁及び指定官庁としての日本はこれまで特許協力条約(以下「PCT」という。)規則20.8(a)及び20.8(b)の適用を受け、留保してきました。
この度、特許法施行規則及び特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律施行規則(以下、「国際出願法施行規則」という。)を改正し(※3)、前述の留保を撤回したことに伴い、平成24年10月1日以降に受理された国際出願については、出願人は受理官庁に対してこの引用による補充の手続を行うことができ、指定官庁は規則82の3.1(b)に該当する場合を除き、受理官庁が認めた引用による補充の効果を認めます。
(※1)国際出願の「要素」・・・明細書の全部又は請求の範囲の全部のこと(PCT第11条(1)(iii)(d)又は(e))
(※2)国際出願の「部分」・・・明細書の部分、請求の範囲の部分、図面の部分又は全部(PCT規則20.5(a))
(※3)特許法施行規則及び特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律施行規則の一部を改正する省令(平成24年8月31日経済産業省令第65号)
引用による補充の手続を行う場合、以下の要件を満たさなくてはなりません。
補完命令又は補充命令
受理官庁は、国際出願日の認定に際して、国際出願の要素が欠落していることを発見した場合、国際出願日を認定せず、出願人に対し当該要素を補完、又は該当する場合には引用により補充するよう命令します(規則20.3(a)、国際出願法第4条第2項、国際出願法施行規則第29条の2第1項)。
この命令に対し、出願人は上記の要件の(1)、(2)及び(3)を満たす場合には、引用による補充の手続を行うことができます(国際出願法第4条に基づく補完手続を行うことも可能です。この場合、受理官庁は補完手続に係る書面が受理官庁に到達した日を国際出願日として認定します。)。
また、意見がある場合は、意見書(PDF:78KB)を提出することができます(規則20.3(a)、国際出願法施行規則第29条の2第2項)。
なお、命令が発出される前に自発的に引用による補充の手続を行うこともできます(国際出願法施行規則第29条の3)。
国際出願日の認定及び引用による補充の手続の効果
当該命令に対し、所定の期間内に手続を行わなかった場合は、国際出願として取り扱わない旨の通知が送付されます(規則20.4(i)、国際出願法施行規則第25条)。
引用による補充手続を行い、受理官庁が認めた場合には、受理官庁は最初に国際出願として提出した書類の受理日を国際出願日として認定し、補充された要素は当該受理日において国際出願として提出された書類に含まれていたものとみなされます。(規則20.3(b)(ii)、20.6(b)、国際出願法施行規則第29条の5第1項)
受理官庁が引用補充に係る要件を満たしていないと判断したときは、受理官庁は引用による補充に係る書面が受理官庁に到達した日を国際出願日として認定します(規則20.3(b)(i)、20.6(c)、国際出願法施行規則第29条の5第1項)。
補充命令
受理官庁が国際出願日の認定に際して、国際出願の要素はあるが、部分が欠落していることを発見した場合、国際出願日を認定した上で、出願人に対し当該部分を補充するよう命令します(規則20.5(a)、国際出願法施行規則第29条の6第1項第1号)。
この命令に対し、出願人は上記の要件の(1)、(2)及び(3)を満たす場合には、引用による補充手続をすることができます(PCT規則20.5(a)(i)の規定により欠落部分を提出して補充することも可能です。この場合、受理官庁は国際出願日を補充手続に係る書面が受理官庁に到達した日に訂正します。)。
また、意見がある場合は、意見書(PDF:78KB)を提出することができます(規則20.5(a)(ii)、国際出願法施行規則第29条の6第2項)。
なお、命令が発出される前に自発的に引用による補充手続を行うこともできます(国際出願法第29条の7)。
国際出願日の訂正及び引用による補充の手続の効果
当該命令に対し、所定の期間内に手続を行わなかった場合は、受理官庁は最初に提出された(欠落部分がある)国際出願のまま、その後の処理を行います。特に当該国際出願が欠落した図面について言及している場合には、その図面への言及はないものとみなされます(PCT第14(2))。
引用による補充手続を行い、受理官庁が認めた場合には、当該補充された部分は認定された国際出願日に受理された国際出願に含まれていたものとみなされます(規則20.5(b)、20.5(d)、20.6(b)、国際出願法施行規則第29条の9第1項)。
受理官庁が引用補充に係る要件を満たしていないと判断したときは、受理官庁は国際出願日を、引用による補充に係る書面が受理官庁に到達した日に訂正します(規則20.5(c)、国際出願法施行規則第29条の9第1項)。
補充を無視することの請求
引用による補充が認められずに、国際出願日が訂正された場合、出願人は国際出願日が訂正された旨の通知の日から1月以内に受理官庁に対し、欠落部分の補充の取下書(PDF:115KB)を提出することにより、補充を無視することを請求できます。請求した場合には、当該補充の手続はなかったものとみなされ、国際出願日は訂正されなかったものとみなされます(規則20.5(e)、国際出願法施行規則第29条の10)。
国内法令との不適合のため、経過規定を適用し、引用による補充を認めていない官庁(受理官庁・指定官庁)での扱いには注意が必要です。
具体的には、規則20.8(a)の適用を受け、引用による補充を認めない受理官庁においては、手続補充書が提出された日に欠落が補充されたものとして取り扱います(規則20.8(aの3))。また、規則20.8(b)の適用を受け、引用による補充を認めない指定官庁(選択官庁を含む。以下同じ。)においては、手続補充書の提出により国際出願日が認定又は修正されたものして取り扱われます(規則20.8(c))。
国際出願日が手続補充書提出日に修正されることにより、優先期間経過後の出願(優先権の主張がない出願)とされる場合も起こり得ますので御注意ください。なお、指定官庁に対しても、引用補充のために提出した手続補充書を無視するように請求することができます(20.8(c)、82の3.1(d))。
経過規定を適用している官庁についての最新情報は、WIPOのホームページ(外部サイトへリンク)で提供されていますので、引用による補充の手続を検討する際には御確認ください。
[更新日 2020年6月25日]
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