• 用語解説

ここから本文です。

規則20.5の2に基づく明細書等の補充

2020年6月

1 概要

PCT国際出願では、明細書、請求の範囲又は図面の全部又は一部を記載せず、欠落した状態で出願してしまった場合、当該欠落部分を補充する又は先の出願からの引用により補充することができます(特許協力条約に基づく規則(以下「規則」という。)20.3及び20.5)(※1)。

この度、規則改正によって、上記の欠落部分の補充に加え、誤った明細書、請求の範囲又は図面の全部又は一部を記載して出願してしまった場合に、当該誤って提出された部分に代わるべき適当な部分(以下「適当な明細書等」)を補充する又は先の出願からの引用により補充することができるようになりました(規則20.5の2)。(※2)

これにより、2020年(令和2年)7月1日以降に受理された国際出願については、出願人は受理官庁に対してこの適当な明細書等の補充の手続を行うことができます。

(※1)詳細は、特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の手続(テキスト)第5章(PDF:469KB) 国際出願の後に行う手続の第1~3節を参照ください。

(※2)規則改正に併せて、特許法施行規則及び特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律施行規則(以下、「国際出願法施行規則」という。)を改正しました。詳細は以下をご参照ください。

特許法施行規則及び特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律施行規則の一部を改正する省令(令和2年6月25日経済産業省令第59号)

2 適当な明細書等の補充の手続の流れ

命令又は自発による補充

受理官庁は、国際出願日の認定に際して、明細書、請求の範囲又は図面の全部又は一部が誤って提出されていることを発見した場合、出願人に対し手続の補充を命じます(規則20.5の2(a)、国際出願法施行規則第29条の6第1項第2号)。

この命令において、受理官庁は、出願人の選択により、以下のいずれかのことを求めます。

  • a 適当な明細書等を提出することにより、国際出願として提出されたものを完成すること(規則20.5の2(a)(i))
  • b 規則4.18の規定による適当な明細書等が先の出願に完全に含まれていて、それを引用により含めることを、規則20.6(a)の規定に従って確認すること(規則20.5の2(a)(ii))

出願人は上記命令を受けた場合、命令の日から2月以内に、「手続補充書(第29条の6第1項の規定による命令に基づく適当な明細書等の補充)」を提出することができます。意見を述べるときは、「意見書」(PDF:117KB)を提出します。

「手続補充書(第29条の6第1項の規定による命令に基づく適当な明細書等の補充)」の記載例

また、命令を受けなくても、国際出願として提出された書類を受理官庁が最初に受理した日から2月以内に、自発で「手続補充書(第29条7の規定による適当な明細書等の補充)」を提出することができます。

「手続補充書(第29条7の規定による適当な明細書等の補充)」の記載例

補充の効果

期間内に適当な明細書等の補充の手続がなされた場合の効果は以下のとおりです。

a 先の出願からの引用ではなく補充された場合

適当な明細書等は国際出願に含まれ、誤って提出された部分は国際出願に含まれないものとみなされ、国際出願日は受理官庁が手続補充書を受理した日に訂正されます(規則20.5の2(c))。

b 引用による補充がなされた場合

補充された部分が先の出願に完全に記載されていると受理官庁が認めたときは、当該適当な明細書等は国際出願日に提出されたものに記載されていたとみなされます (規則20.5の2(d))。
補充された部分が先の出願に完全には記載されていないことを受理官庁が認めたときは、上記aの扱いになります。

補充を無視することの請求

適当な明細書等の補充の手続により国際出願日が訂正された場合、出願人は国際出願日が訂正された旨の通知の日から1月以内に、受理官庁に対し「適当な明細書等の補充の取下書」(PDF:122KB)を提出することにより、補充を無視することを請求できます。請求した場合には、当該補充の手続はなかったものとみなされるとともに、国際出願日は訂正されなかったものとみなされます(規則20.5の2(e)、国際出願法施行規則第29条の10)。

3 引用による補充についての注意事項

国内法令との不適合のため、経過規定を適用し、引用による補充を認めていない官庁(受理官庁・指定官庁)での扱いには注意が必要です。

具体的には、規則20.8(aの2)の適用を受け、引用による補充を認めない受理官庁においては、手続補充書が提出された日に適当な明細書等が補充されたものとして取り扱われます(規則20.8(aの3))。また、規則20.8(bの2)の適用を受け、引用による補充を認めない指定官庁(選択官庁を含む。以下同じ。)においては、手続補充書の提出により国際出願日が修正されたものして取り扱われます(規則20.8(c))。

国際出願日が手続補充書の提出日に修正されることにより、優先期間経過後の出願(優先権の主張がない出願)とされる場合も起こり得ますので御注意ください。なお、指定官庁に対しても、引用補充のために提出した手続補充書を無視するように請求することができます(20.8(c)、82の3.1(d))。

経過規定を適用している官庁についての最新情報は、WIPOのホームページ(外部サイトへリンク)で提供されていますので、引用による補充の手続を検討する際には御確認ください。

[更新日 2020年6月25日

お問い合わせ

審査業務部出願課国際出願室受理官庁

電話:03-3581-1101 内線:2643

お問い合わせフォーム