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令和5年4月1日以降に優先期間を徒過した国際出願の優先権の回復(「故意ではない」基準)について

令和5年2月

特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係省令の整備等に関する省令(令和5年3月13日経済産業省令第10号)により、令和5年4月1日以降に優先権主張の基礎となる出願の日から12月を徒過した国際出願について、優先権の回復請求を受理官庁である日本国特許庁に提出する場合、優先権の回復制度の要件を「相当な注意」基準から「故意ではない」基準に緩和致しました。

1 制度の概要

優先権主張の基礎となる出願の日から12月(以下「優先期間」という。)を徒過した場合であっても、優先期間内に国際出願を提出できなかったことの理由が、各受理官庁が採用する「故意ではない」基準又はより厳格な「相当な注意」基準を満たす場合は、受理官庁は出願人の請求により、優先権の回復を認めます(特許協力条約(以下「PCT」という。)に基づく規則26の2.3)。

受理官庁としての日本国は、前述のとおり「相当な注意」基準から「故意ではない」基準に緩和致しました。

2 優先権回復手続の流れ

1)優先権の回復請求等

回復請求はPCT規則26の2.3(e)(※)に規定される期間内に願書又は回復請求書で行います。回復請求書(ワード:71KB)には優先期間内に国際出願をしなかったことが故意によるものではないことを表明するとともに、その理由を具体的かつ簡明に記載してください。願書で回復請求を行った場合は、同期間内に回復理由書(ワード:69KB)に理由を具体的かつ簡明に記載して提出してください。

(※)優先期間満了の日から2月(早期の国際公開を請求する場合は、国際公開の技術的な準備が完了する前)

2)「故意ではない」基準に基づく回復の可否判断

回復請求とその理由を受理した受理官庁である日本国特許庁は、ROガイドライン(外部サイトへリンク)166I(仮訳(:165KB))に基づき、その理由が「故意ではない」基準を満たしているかの判断を行います。

3)決定通知書の送付等

「故意ではない」基準を満たしていると判断された場合はその旨の通知が送付されます。

「故意ではない」基準を満たしていないと判断された場合はその理由が通知されるとともに、出願人は指定された期間内(1月以内)に意見書を提出する機会が与えられます。

3 日本国特許庁が受理官庁である場合の要件

1)方式的な要件

受理官庁である日本国特許庁は、以下の要件を満たしている請求について、日本国特許庁が適用する「故意ではない」基準を満たしているか否かの判断を行います。

(1)国際出願の国際出願日が優先期間満了の日の後であるが、当該満了の日から2月以内であること(PCT規則26の2.3(a))。

(2)先の出願に関する優先権主張が国際出願においてされている、又はPCT規則26の2.3(e)に規定される期間内に追加されていること。

(3)優先権の回復請求及び優先期間内に国際出願をすることができなかった理由のいずれもが、PCT規則26の2.3(e)に規定される期間内に提出されていること。

2)実体的な要件

(1)「故意ではない」基準の要件
 出願人が意図的に国際出願を優先期間内に行わなかったものではなく、優先期間内に出願する意思を基本として継続的に有していた場合、当該出願人は「故意ではない」基準を満たしていると判断します(ROガイドライン166I)。

(2)記載すべき事項
回復請求書又は回復理由書の「回復の理由」には、以下を必ず記載してください。

  1. 故意ではない表明
    「優先期間内に国際出願をしなかったことは故意ではありません」のように、明確に故意ではない旨を記載してください。
  2. 優先期間内に国際出願を提出できなかった理由
    優先期間を徒過してしまった一連の経緯及びその原因を具体的かつ簡明に記載してください。
    ただし、「国際出願を不要と判断した」や「国際出願を不要と考え代理人に依頼しなかった」等の国際出願を行うことを断念したと判断できる記載がある場合、(1)における「優先期間内に出願する意思を基本として継続的に有していた」と判断されないことになりますのでご注意ください。
    理由の記載についてご不明点等がある場合、受理官庁までお問い合わせください。

4 電子出願ソフトを利用して出願時に回復請求を行う場合の注意点

1)オンライン願書における回復請求のチェックボックス

受理官庁である日本国特許庁に対して優先権の回復を請求する場合は、「優先権の回復を受理官庁に対して請求する」チェックボックスにチェックをつけます。以下の条件を満たした場合、チェックボックスの設定が可能になります。

  • 優先権の回復を請求する日(願書を提出する日)が、優先権主張の基礎となる出願の日から12月を経過していること
  • 「国名」および「出願日」の両方が入力されていること
(画像)オンライン願書における回復請求

2)回復理由書の提出方法

オンライン願書で回復請求のチェックをした場合は、願書提出後、回復請求期間内に回復理由書を書面または電子特殊申請にて提出してください。

5 受理官庁による優先権の回復の効果

「故意ではない」基準を採用している受理官庁としての日本国特許庁が回復を認めた優先権は、PCT規則49の3.1の規定を留保しておらず、かつ、国内法令が「故意ではない」基準又は出願人にとってそれより有利な基準に基づく優先権の回復を規定している指定国において、原則その効力を有します(PCT規則49の3.1(b)(g))。一方、「相当な注意」基準を採用している指定官庁に対しては効力を有しませんのでご注意ください。

※国内移行を予定している国の指定官庁が「相当な注意」基準を採用している場合は、「故意ではない」基準のみならず、「相当な注意」基準も採用している受理官庁としての国際事務局に国際出願を行った上で回復請求することもご検討ください。

※各官庁の採用基準については、下記WIPOウェブサイトをご参照ください。

※国内法令との不適合のため、経過規定(PCT規則26の2.3(j), 49の3.1(g), 49の3.2(h))を適用し、優先権の回復制度を留保している官庁もありますのでご注意ください。経過規定を適用している官庁についての最新情報は、下記WIPOウェブサイトをご参照ください。

6 回復請求が認められない事例

優先期間を徒過した理由が「故意に手続をしなかった」と判断され、回復請求が認められない可能性がある事例を以下に示します。

【事例1】金銭的事情による期間徒過

日本の国内出願を行った後、当該国内出願を基礎に日本国特許庁を受理官庁とする国際出願をするはずだった。しかし、その後に歴史的円安の到来により経営状況が急激に悪化し、国際出願を見送ることを社内決定し、そのまま期間徒過した。その後、社内において再検討した結果、国際出願を行うこととしたため、回復理由書と共に国際出願を提出した。

【事例2】権利取得ルートの再検討による期間徒過

日本の国内出願を行った後、当該国内出願を基礎に日本国特許庁を受理官庁とする国際出願をするはずだった。しかし、その後、権利取得希望国について再検討する必要が生じ、パリルートまたはPCTルートのどちらで権利取得するか検討する必要があり、いったん国際出願を見送ることを決断し、そのまま期間徒過した。その後、国際出願を行うこととしたため、回復理由書と共に国際出願を提出した。

[更新日 2024年10月17日]

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