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商標権付与後の登録異議申立制度は、商標権の設定登録後の一定期間に限り、広く第三者に商標登録の取り消しを求める機会を与える制度であり、第三者は、商標権の設定登録後の一定期間に限り、特許庁長官に対して登録異議の申立てを行うことができます。
商標権付与後の登録異議の申立てがあったときは、特許庁が自ら登録処分の適否を審理し、瑕疵ある場合にはその是正を図るものであり、その結果、登録に対する信頼性を高めるという公益的な目的が達成されることとなります。
ところで、瑕疵ある商標登録の存在は速やかに是正されるべきものでありますが、登録異議申立書における申立ての理由、証拠等の記載が不明確である場合には、審判官、商標権者等は登録異議申立人の意図を的確に把握できず、審理が煩雑なものとなるばかりでなく決定までに長期間を要する原因ともなります。
そこで、このたび、審判部では、登録異議申立書の記載についてガイドラインを作成いたしました。登録異議の申立てをするに際し、十分にご活用いただきたく存じます。
特許庁審判部
登録異議申立制度は、何人も、商標掲載公報(登録後に発行される商標公報)発行の日から2月以内に限り、商標登録が商標法第43条の2各号の一に該当することを理由として、その取消しを求めることができるとするもので、指定商品又は指定役務ごとに申立てをすることができる。
(商第43条の2~第43条の15)
(1)何人も、商標掲載公報の発行の日から2月以内に限り、登録異議の申立てをすることができる。
登録異議の申立ては、商標登録が商標法第43条の2各号の一に該当することを理由としてその取消を求めるもので、指定商品又は指定役務ごとにすることができる。(商第43条の2)
(2)商標登録について登録異議の申立てをする者は、登録異議申立書を特許庁長官に提出しなければならない。(商第43条の4)
このとき、登録異議申立書及び添付書類については、相手方の数(通常は権利者の数)に応じた副本及び審理用副本1通を提出しなければならない。
(1)登録異議申立書には、次の事項を記載しなければならない。
(2)登録異議申立書は、商標法施行規則第12条で定める様式13(6ページの「様式見本」参照)により作成しなければならない。
登録異議申立書の作成 → 第3章の記載を参照されたい。
(1)登録異議申立期間経過後30日※を経過するまでにする補正
(2)商標登録異議申立て期間経過後30日※を経過した後にする補正
要旨を変更するものであってはならない。
(3)要旨の変更と認められる例
※ 遠隔又は交通不便の地にある者(異議申立人又はその代理人)については、上記の期間(30日)に次の期間が付加(延長)される。
東京都 |
伊豆諸島・小笠原諸島 |
---|---|
石川県 |
輪島市海士町(舳倉島) |
鹿児島県 |
南西諸島 |
沖縄県 |
沖縄本島を除く周辺諸島 |
北海道 |
北海道周辺諸島 |
(4)補正の手続
登録異議申立書の補正は、手続補正書によりしなければならない。
手続補正書については、9ページ「9.手続補正書」の項を参照されたい。
(1)補正命令と申立書却下
登録異議申立書の方式違反(記載事項の欠落、不明確等)、手数料不足・未納の場合は、審判長により補正命令を行う。(商第43条の15→特第133条第1、2項)
補正命令に対し、指定期間内に補正がされないときは、審判長は決定により手続(登録異議申立書)を却下する。(商第43条の15→特第133条第3項)
(2)補正をすることができない登録異議申立てと申立却下
不適法な登録異議の申立てであって、その補正をすることができないもの(期間経過、申立ての理由・証拠の実質的記載なし等の登録異議申立書)は、補正を命ずることなく決定により却下する。(商第43条の15→特第135条)
(3)上記(1)の登録異議申立書の却下の決定に対する訴えは、東京高等裁判所にすることができるが、上記(2)の却下の決定に対する訴えはすることができない。
(商第63条、商第43条の15第2項,商第77条第7項)
登録異議の申立ては、商標登録の取消しの理由の通知(商第43条の12)があった後は、取り下げることができない。(商第43条の11)
二以上の指定商品・役務について登録異議の申立てをしたときは、指定商品・役務ごとに取り下げることができる。
(異議申立書の様式見本)
(1)「商標登録番号」の欄
登録異議申立ての対象とする「商標登録番号」を記載する。
(2)「指定商品又は指定役務並びに商品及び役務の区分」の欄
登録異議の申立対象とする登録商標の指定商品(指定役務)中、異議申立の対象とする指定商品(指定役務)及びその区分(類)を記載する。
1.記載すべき指定商品又は指定役務が1つの区分に属するものであるときは、次のように記載する。
2. 記載すべき指定商品又は指定役務が2以上の区分に属するときは、次のように欄を繰り返し設けて記載する。
「申立ての理由」欄の記載要領は第4章に、具体例は第5章に記した。
相手方に副本を書面で送達等することに代えて、電磁的方法で提供することを承諾する場合には、「承諾する」旨記載する。承諾しない場合には、「承諾しない」旨記載し、その理由を記載する。(特例法第10条第2項)
(平成 年 月 日)には、なるべく登録異議申立書を提出する日を記載する。
(手続補正書の様式見本)
(1)手続補正書の様式
商標法施行規則第16条、様式16
(2)手続補正書作成上の注意
1.「事件の表示」の欄
登録異議の番号を記載する。
(例)「平成○年異議第○○○号」
2.「事件との関係」の欄
補正をする者と事件の関係を記載する。
(例)「商標登録異議申立人」
3.「補正対象書類名」の欄
補正をする書類名を記載する。
(例)「商標登録異議申立書」
4.「補正対象項目名」の欄
補正をする箇所を記載する。
5.「補正の内容」の欄
補正事項を明確に記載する。
6.その他「申立ての理由」は、登録異議申立書に記載しなければならない事項の一つである。(商標法第43条の4第1項)
この欄には、商標登録が商標法第43条の2各号の一に該当する理由についての登録異議申立人の主張・立証を具体的かつ明確に記載する。
(1)登録異議申立書の「申立ての理由」をどのように記載するかは、基本的に登録異議申立人の自由に任されているが、「申立ての理由」の記載内容が整理され、明確であることが登録異議申立人、商標権者、特許庁のいずれにおいても重要であることは言うまでもない。
(2)申立ての理由の要約
登録異議申立ての審理を行うにあたり、登録異議の申立てがどの指定商品(指定役務)に対し、いかなる根拠条文、証拠及び論理付けで行われているかを迅速かつ的確に把握することが肝要である。
申立ての理由の要約は、登録異議申立てに係る登録商標及びその指定商品(指定役務)、証拠及び申立ての理由の要点等を整理して「申立ての理由」の冒頭に掲げるもので、登録異議申立人の申立ての理由の全体を明確にするために有効である。
(3)項分け
申立書の「申立ての理由」の記載においては、「申立ての理由」の把握を容易かつ正確なものとし、記載内容の整理、明確化が図れること等から、その内容を項目に分けて(項分け)記載をすることが望ましい。
(4)したがって、登録異議申立書における「申立ての理由」の記載内容の整理、明確化を図るため、「申立ての理由」の冒頭に「申立ての理由の要約」を掲げ、また記載内容を項目に分けて(項分け)記載することとする。
(1)「申立ての理由」中に記載すべき項目の例
(2)各項目の記載要領
1. 申立ての理由の要約
この項には、申立ての理由を整理し、簡潔に記載する。例えば、登録異議申立てに係る商標登録(以下、「本件商標登録」という。)と証拠の商標、各々の指定商品等を対比できるように、表形式で作成する。
また、表の上部に、申立ての理由の根拠条文を記載する。
2. 手続の経緯
出願から商標権の設定の登録に至るまでの経緯(出願日、登録日等)を記載する。この項は、「申立ての理由の要約」に記載してもよい。
3. 申立ての根拠
本件商標登録を取り消すべき法律上の根拠(商標法第43条の2各号のいずれに該当するか)を証拠の表示とともに記載する。
4. 具体的理由(商標登録を取り消すべき理由)
本件商標登録を取り消すべき理由を、法律上の根拠、証拠の提示とともに具体的(申立て理由の要約に記載した理由を詳細に)に記述する。ただし、記述にあたっては、冗長とならないように留意する。
例えば、商標法第4条第1項第11号に該当することを理由とする場合、次のような項目について記述する。
1)本件商標登録について
本件商標登録に係る商標(以下、「本件登録商標」という。)及びその指定商品(指定役務)並びに商品(役務)の区分等について記述する。
2)証拠(引用商標)について
登録異議申立てにおいて引用する登録商標(以下、「引用商標」という。)及びその指定商品(指定役務)並びに商品(役務)の区分等について記述する。
3)本件商標登録と証拠(引用商標)との対比
上記1)、2)に基づき、本件登録商標と証拠(引用商標)とを対比して、商標の類否、指定商品の類否等を明確にし、本件登録商標が商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、商標登録を受けることができないものである理由を明らかにする。
5. 結び
登録異議の申立てを理由づける結論として、本件商標登録には取消しの理由が存在し、これを取り消すべきものである旨を記載する。
4.申立ての理由
(1)申立ての理由の要約
本件商標登録 |
証拠 |
|
---|---|---|
商標 |
○○ |
甲第2号証(洋酒××) 45項、47項、50項、51項・・ ××について○○を使用 甲第3号証(酒の××××) 102項、104項、150項・・ ・・・「○○」の語が・・・ 甲第4号証(商品カタログ) |
指定商品・区分 |
第33類 |
|
手続の経緯 |
出願日 平成×年×月×日 登録日 平成×年×月×日 公報発行日 平成×年×月×日 (商第○○○○○○○号公報) |
|
理由の要点 |
本件商標は、「○○」の漢字を普通に用いられる方法で表示したに過ぎないから、指定商品中「○○の洋酒」に使用しても商品の品質を表示するに過ぎず、自他商品認識別標識として機能を果たし得ない。また、当該商品以外の商品に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある。 |
(2)申立ての根拠
本件登録第○○○○○○○号商標(以下、「本件登録商標」という。)は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、本件商標登録は商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきである。
(3)具体的理由
1. 本件登録商標について
本件登録商標は、「○○」の漢字を普通に用いられる方法で横書してなり、第33類「洋酒」を指定商品として、・・・・・ものである。
2. 登録商標について
・・・洋酒を取り扱う業界において、「○○」の語は、「××・・××の酒」を表示するものとして普通に使用されている事実がある。(甲第1号証ないし同3号証)
3. 第3条第1項第3号、第4条第1項第16号について
本件登録商標をその指定商品中「○○の洋酒」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、単に商品の品質を表示した語と認識するに止まるから、当該文字は自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものというべきであり、かつ、上記以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生ずるおそれがある。
(4)むすび
したがって、本件商標登録に係る商標は、商標法第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号に該当し商標登録を受けることができないものであるから、本件商標登録は商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである。
5.証拠方法
(1)甲第1号証 ○○・・・
6.添付書類の目録
(1)登録異議申立書 副本 2通
(2)委任状 1通
令和6年1月から開始されるインターネット出願ソフト(特殊申請機能)を利用して提出する場合は、副本の提出を省略できるので、「(1)委任状 1通」のように記載する。
4.申立ての理由
(1)申立ての理由の要約
商標法第4条第1項第11号(商標法第43条の2第1号)
|
本件商標登録(甲第1号証) |
証拠(甲第2号証) |
---|---|---|
商標 |
◯◯◯ |
×× |
指定商品・区分 |
第◯◯類 |
第◯◯類 |
手続の経緯 |
出願日 平成□×年×月×日 |
出願日 平成×年×月×日 |
理由の要点 |
本件登録商標は片仮名文字よりなるものであるから「〇〇〇」の称呼を生ずる。これに対し、甲第2号証の商標は「××」文字部分より「〇〇〇」の称呼を生ずるものであるから、両商標は「〇〇〇」の称呼を共通にする類似のものである。 |
商標法第4条第1項第11号(商標法第43条の2第1号)
|
証拠(甲第3号証) |
---|---|
商標 |
△△△△ |
指定商品・区分 |
第◯◯類 |
手続きの経緯 |
出願日 平成×年×月×日 |
理由の要点 |
本件登録商標はその構成から「〇〇〇」の称呼を生ずる。他方、甲第3号証の商標は、その構成からして「〇〇〇」の称呼をも生ずるものであるから、両者は称呼を共通にする類似のものであり、その指定商品も同一又は類似のものである。 |
(2)申立ての根拠
(3)具体的理由
1. 本件登録商標について
本件登録商標は、「○○○」の片仮名文字を横書きしてなり、第◯◯類「◯◯,◯◯」を指定商品として平成×年×月×日登録出願、平成×年×月×日設定登録されたものである。(甲第1号証)
2. 証拠について
1)甲第2号証について
登録異議申立人が証拠(甲第2号証)として引用する登録第◯◯◯◯◯◯◯号商標は、「××」の漢字を横書きし、その下に・・・の図形を表してなり、第◯◯類「◯◯,◯◯」を指定商品として平成×年×月×日登録出願、平成×年×月×日設定登録され、現に有効に存続しているものである。
2)甲第3号証について
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
3. 商標法第4条第1項第11号について
1)本件登録商標と甲第2号証との対比
本件登録商標は、「○○○」の片仮名文字を書してなるものであるから、これより「◯◯◯」の称呼を生ずること明らかである。
他方、登録異議申立人が引用する登録第○○○○○○○号商標は、「××」の漢字と・・・・の図形からなるものであるが、・・・・・から、「××」の漢字に相応する「◯◯◯」の称呼をも生ずるものである。
してみれば、本件登録商標と登録第○○○○○○○号商標は、共に「○○○」の称呼を生ずること明らかであるから、その称呼において類似の商標である。
そして、本件登録商標と登録第○○○○○○○号商標の指定商品は、前記したとおりであるから、同一又は類似のものである。
したがって、本件登録商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものである。
2)本件登録商標と甲第3号証との対比
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
(4)むすび
前記したとおり、本件登録商標は、甲第2号証及び甲第3号証の登録商標と類似のものであり、また、その指定商品も同一又は類似のものである。
したがって、本件商標登録は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである。
5.証拠方法
(1)甲第1号証 ○○○・・・
6.添付書類の目録
(1)登録異議申立書 副本 2通
(2)委任状 1通
令和6年1月から開始されるインターネット出願ソフト(特殊申請機能)を利用して提出する場合は、副本の提出を省略できるので、「(1)委任状 1通」のように記載する。
4.申立ての理由
(1)申立ての理由の要約
|
本件商標登録(甲第1号証) |
証拠(甲第2号証) |
---|---|---|
商標 |
(図) |
(図) |
指定 |
第○○類 |
第◯◯類 |
手続きの経緯 |
出願日 平成×年×月×日 |
出願日 平成×年×月×日 |
理由の要点 |
1)商標法第4条第1項第11号について 本件商標は、その図形部分により、「〇〇」の称呼、観念を、引用商標は、〇〇の図形よりなるものであるから、「〇〇」の称呼、観念を生ずるものである。したがって、本件商標と引用商標とは、共に「〇〇」の称呼、観念を共通にする類似のものである。また、指定商品も互いに抵触するものである。 2)商標法第4条第1項第15号について 引用商標は、申立人の商標として、広く一般に知られている(甲第3号ないし甲第5証)から、これと類似する本件商標がその指定商品に指定された場合、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。 |
(2)申立ての根拠
(3)具体的理由
(第4条第1項第11号について)
本件商標は、取引上、商標権者の名称の一部と目されるところの「ABC」の文字を下部に左横書きし、上部にはその中央に写実的な○○の図形を顕著に表示し、これに装飾的な模様をほどこしてなるものであって、上記○○の図形もまた十分に商品の識別標識として認識され得るものであるから、当該図形部分より「○○」の称呼、観念を生ずるものである。
これに対し引用商標は、○○の図形よりなること明らかであるから、これより「○○」の称呼、観念を生ずるものとするのが取引の実情に即して妥当である。
したがって、本件商標と引用商標とは、共に「○○」の称呼、観念を共通にするものである。
そして、本件商標と引用商標の指定商品は、同一又は類似のものである。
(第4条第1項第15号ついて)
申立人は、19××年創業以来、商品「×××」及び「△△△」について、「○○」と明らかに認識しうる図形若しくは「○○」と容易に称呼しうる文字からなる商標又はこれらの結合からなる商標を広く使用し今日に至っており、商品「○○○」の我が国における市場占有率も極めて大きい。したがって、本件指定商品の分野の需要者は、「○○」の図形からなる本件商標が、本件指定商品について使用された場合には、申立人の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
(4)むすび
(第4条第1項第11号について)
本件商標と引用商標とは、「○○」の称呼、観念を共通にする類似の商標であり、また、その指定商品も同一又は類似のものである。したがって、本件商標登録は商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものであるから、取り消されるべきである。
(第4条第1項第15号について)
本件商標が本件指定商品に使用された場合、その商品の需要者が申立人の業務に係る商品と出所について混同するおそれがある。したがって、本件商標登録は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反してなされたものであるから、取り消されるべきである。
5.証拠方法
6.添付書類の目録
令和6年1月から開始されるインターネット出願ソフト(特殊申請機能)を利用して提出する場合は、副本の提出を省略できるので、「(1)委任状 1通」のように記載する。
(参考)
1.登録異議申立書の提出先及び提出方法
2.登録異議申立ての料金
登録異議申立て1件の料金は、3,000円に1区分につき8,000円を加えた額
(例)
登録異議申立てに係る指定商品及び役務の区分の数が1の場合
(区分の数)
3,000円+8,000円×1 =11,000円
[更新日 2024年4月1日]
お問い合わせ |
特許庁審判課審判企画室 TEL:03-3581-1101 内線5853 |