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新型コロナウイルスによって、景気の冷え込んだ日本経済の再生に向け、自社が保有する知財を開放する企業が増えています。今回は、その「COVID-19と戦う知財宣言」の仕掛け人であるジェノコンシェルジュ京都の山崎氏にお話を伺いました。
Company Profile
京都大学ゲノム医学センターの研究成果の事業化を行い、
研究成果の社会還元を行うスタートアップベンチャー。
[名称] ジェノコンシェルジュ京都株式会社
[住所] 京都府京都市左京区吉田下阿達町46-29
[資本金] 100万円 [ 従業員数 ] 7人
[事業内容] ヒト検体をもちいた全ゲノム配列のインフォマティクス解析。
「知的財産に関する新型コロナウイルス感染症対策支援宣言(COVID-19と戦う知財宣言)」の目的は、新型コロナウイルス感染症のまん延防止の実現に向け、感染症対策に必要な商品の開発・製造・販売などを進める上で障害となる可能性のある知的財産権の行使を行わない環境を整えることです。
具体的には、商品の開発にあたってだれかの知的財産権を侵害しないか調査したり、侵害する可能性のある知的財産権が見つかった場合に、ライセンス取得の交渉などに必要な「時間」「労力」「費用」をかけることなく、迅速に商品の開発・製造・販売ができる環境を提供しようというものです。
原則として宣言者には、「保有する特許権、実用新案権、意匠権、ソフトウエア著作権の権利行使を、新型コロナウイルス感染症のまん延終結を唯一の目的とした行為については、行わないこと。また、それに対し、一切の対価や補償を求めないこと。」を宣言していただく活動です。
権利の不行使は、宣言をした日から世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス感染症まん延の終結宣言を行う日までの期間となります。
この取組を始めるきっかけは、今年の3月ごろから新型コロナウイルス感染症のまん延にともない、需要が逼迫した感染防止商品や医療機器の製造・販売の新規参入に異業種企業が名乗りをあげたものの、開発や知財の権利処理に予想以上の時間を要することが大きな障害になるのではないかと考えたことです。そこで、知財の分野でも新型コロナウイルス感染症の対策に貢献できるのではないかと考えた結果、本宣言の活動を開始することにしました。
キヤノン株式会社の常務執行役員長澤健一氏、執行役員真竹秀樹氏、京都大学医学研究科附属ゲノム医学センター長の松田文彦教授と私の4人が、各社のキーパーソンに宣言の発起人となっていただくよう働きかけを始めたのが4月の初旬です。そこから、4月末に本宣言を公表するまでに20の企業等にご賛同いただき、発起人に加わっていただきました。
はじめにお声がけさせていただいたキヤノン株式会社は、キヤノンメディカルシステムズ株式会社という医療機器メーカーを傘下に加えていることから、医療に関する特許も多くお持ちです。医療に関わる大企業が発起人として特許を開放していることがとても大きな意味を持っているのです。とはいえ、「開放特許」という取組自体は、オープンイノベーションの促進施策としてすでに行われていたことでもあります。今回は、それをさらに広める役割も果たせたのではないでしょうか。