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Vol.50
広報誌「とっきょ」2021年11月22日発行

特集2 株式会社エイトワン

地域資源を救う「ブランドの力」

「あるもの磨き」で地元・愛媛を元気に

思いを守るための商標登録 海外展開で感じたその難しさ

弊社のタオル事業のルーツは、創業当時に行っていた道後温泉でのホテル事業にあります。この頃ちょうど今治タオルがブランドとして全国的に認識され始めたタイミングで、宿泊客から「松山で今治タオルを買える店はないの?」と聞かれることが多かったんです。その声に応えるために、道後温泉にお土産としてタオルを買えるタオル専門店「伊織」をつくりました。
経営していたホテルのフロントでも、宿泊者向けに8種類の伊織のバスタオルのレンタルを始めたのですが、それも好評で、今治タオルの質に手応えを感じていましたね。当時は社内外から「誰がお土産でタオルを買うんだ」と反対されたものです(笑)。今では国内外で20店舗、伊織を展開しています。

一号店を出す際に意識したことが二つあります。一つは、今治タオルらしい肌触りの良さと吸水力の高さという品質面です。そしてもう一つがデザイン面を工夫し目を引くということ。今治タオルには先に糸を染めてから織って柄を表現する先染めジャカードという手法で作られた、華やかでギフト向きのタオルがあります。これを畳むのではなく竿に掛けることで柄が目立つようにディスプレーしたんです。当時はそういうお店が少なかったので、街行く人の目を引くことができたのだと思います。

ちなみに伊織のロゴは、伊予の織物であることを世界に発信したいという思いを込めて、漢字とタオルのパイル地の模様で構成しています。こうした思いを権利として守るために、弊社関連のロゴはすべて商標登録しています。ただ海外展開を始めた当初はトラブルもありました。中国・香港・台湾で展開しようとロゴ・ブランド名の商標出願を行ったところ、中国と香港では半年前に先に取られていたんです。そこで知財の重要性と早く手続きをする必要性が身に染みて分かりました。

現在、弊社では特に知財専門の部門はなく、弁理士に手続きをしてもらって私がその窓口をしています。でも今後も海外展開することを考えると、知財に関する機能の強化も必要だと感じています。

ふわりとした軽い触り心地が特徴の「yume」
驚くようなボリューム感と、ふわりとした軽い触り心地が特徴の「yume」は、伊織の人気商品。
伊織の肌触りのよさを生かしたベビー用品
伊織の肌触りの良さを生かしたベビー用品も多数展開。オーガニックコットンをベースにした商品も。

今あるものを生かすことが 地域のためにつながる

伊織以外にも、弊社のグループ会社には愛媛みかんを扱う「TEN」や、宇和島鯛めしの「丸水」といったブランドもあります。この内、丸水は郷土料理の宇和島鯛めしの老舗が閉店した後、復活を望む声に大籔が応えてブランドを譲り受けました。でも元の宇和島ではなく、松山の観光地に移転して復活させたんです。すると、元々おいしかったのも大きいと思いますが人気が出て。今では丸水のある通りは50mごとに鯛めし店がある鯛めし通りになりました。これをライバルが増えたという見方もできますが、宇和島鯛めしに注目が集まったから良かったとポジティブに考えています。

このように私たちは地域にあるいいものを、見せ方を工夫したり、改めてストーリーや背景を伝えたりすることでリブランディングしてきました。ないものねだりではなく、「あるもの磨き」をしているというか。ただ全ての事業が成功してきたわけではなく、失敗も、地域の方にご迷惑をお掛けすることもあります。だから地域に貢献しているなんて言うのはとてもおこがましい(笑)。地域の方と助け合いながら「エイトワンがあって良かった」と思ってもらえるよう頑張っているところです。

今後はより一層、私たちが地域にできることがないかを探していきます。例えば四国は空き家がとても多く、5軒に1軒は空き家という状況です。その空き家と都会の人とのマッチングサービスだとか、そうしたチャレンジもしていきたいと考えています。

工場で製造の様子01
工場で製造の様子02

10カ所以上の協力工場で製造。各工場に得意分野があり、それぞれの強みを生かした商品づくりを心掛ける。後継者問題で悩んでいた100年以上の歴史ある工場をなくすのが惜しいという思いから、大籔氏がM&Aによりグループ会社としたものもある。

かんきつ産業を活性化したいという思いから始まった「TEN」
かんきつ産業を活性化したいという思いから始まった「TEN」。素材そのものの色合いを生かしたモダンなパッケージングが秀逸。
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