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Vol.55
広報誌「とっきょ」2022年12月19日発行

特集2 株式会社Splink

脳の深淵しんえんを探る次世代技術
AI解析が変える脳医療

特集2:脳の深淵を探る次世代技術 AI解析が変える脳医療 イメージ画像

AIを用いたソリューションで“ブレインヘルスケア”という概念を広げていきたい——
そう語る代表取締役・青山氏が重視するのは、知財戦略と経営戦略をリンクさせた企業運営の在り方だった

PROFILE

株式会社Splink 株式会社Splink 脳科学の領域で医療AIソリューションを提供するテック・カンパニー。生活者・医師向けの両面からブレインヘルスケアの浸透を目指している。
[所在地] 東京都千代田区霞が関3-3-2 新霞が関ビルディング18F
[URL] https://www.splinkns.com(外部サイトへリンク)
[設立年] 2017年
[業種] ブレインヘルスケア事業、医療データ基盤事業
[従業員数] 52人

お話を聞いたのは
株式会社Splink 代表取締役 青山裕紀氏のプロフィール写真

株式会社Splink 代表取締役

青山あおやま 裕紀ゆうき

2005年慶應義塾大学法学部を卒業後、株式会社キーエンスに入社。同社北米ビジネスにおける事業開発などに従事。その後、シリコンバレーVCにてEiR(客員起業家)を経て、2017年に株式会社Splinkを設立、代表取締役に就任。ダートマス大学経営大学院(MBA)修了。聖路加国際大学大学院公衆衛生研究科(MPH)修了。

中枢神経領域においてAI技術の活用は必要不可欠

Splinkでは、認知症をはじめとする中枢神経領域の疾患に対して、予防・診断・治療・ケアにおける横断的なソリューション開発を行っています。認知症とは、脳の認知機能が著しく低下している状態を指します。この変化は突然起こるわけではありません。認知症といわれる状態に到達するまで少しずつ認知機能の低下は進み、あるポイントまで来て初めて認知症と診断されるのです。そこで、当社のソリューションでは、認知症と診断される前に認知機能の低下を検知し、進行を抑制することを目指すと同時に、認知症になってしまった際には症状とうまく付き合っていく仕組みづくりをミッションとしています。現代では第5の生活習慣病と呼ばれる認知症ですが、当社のサービスでこの病気と共生可能な社会を創造していくことができればと思っています。

現在展開しているソリューションの一つが「Brain Life Imaging®」です。これは脳ドックのMRI検査のデータから記憶の中枢をつかさどる海馬の体積を算出し、脳の健康状態を発症前から「見える化」するソリューションです。これによって患者さんに脳の状態と認知機能に向き合っていただき、個々人による認知機能のセルフケアに役立ててもらうことを目的としています。

私たちが関わっている中枢神経領域においてAI技術の活用は必要不可欠で、今後さらに重要度が増してくるのは確実です。高齢化が進み、さらに患者数が増えるであろうこの分野では、医師不足は深刻な問題です。そのためAIによる診断支援を推し進めることは避けて通れません。

さらに、AIによる診断支援には技術的な限界があります。この要因となっているのが、複数の病理が絡み合って症状を発現させている「混合病理」という状態です。中枢神経領域においてこの混合病理の発生はとても多く、診断そのものを難しくしており、AIによる診断支援にも多くの課題があります。この問題を解決するために、当社ではデータの収集と専門医の臨床的な知見をAIに学習させるための技術開発を行っています。中枢神経領域におけるAI開発は、単にデータ数が多いことが重要ではなく、専門的な知見と共にAIの精度向上を行っていくことが重要であり、そのために国内で多数のアカデミアと共同研究を実施しながら技術を蓄積しています。

グラフ・イラストを用いたレポート
AIによる測定結果を基に、記憶力の維持や予防習慣に関するアドバイスをグラフ・イラストを用いたレポートとして提示。医療の専門知識が無くても理解しやすい内容となっている。
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