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特集2 マクタアメニティ株式会社
震災でゼロからの事業再構築を迫られたマクタアメニティの幕田氏。しかし、農業の未来を変え得るような独自技術に光明を見出す。事業を支える知財戦略や、「福島から世界へ」という想いを伺った。
PROFILE
マクタアメニティ株式会社
明治中期に蚕種製造で創業。その後、木材や薪炭、米穀他を扱う。農産物生産流通システム運営や技術指導、品質の見える化など、最新技術による農業分野のDXに注力。
[所在地] 福島県伊達市梁川町山舟生字高倉22(本社)
[TEL] 024-557-1001(代表)
[URL] http://makuta-amenity.com(外部サイトへリンク)
[株式会社化] 1988年(創業/明治中期)
[業種] 学術研究、専門・技術サービス業他
[従業員数] 5人(国内)
マクタアメニティ株式会社 代表取締役
幕田 武広氏
1957年福島県伊達市生まれ。帰郷後の1988年にマクタアメニティ株式会社を設立し、農業系ベンチャー企業として、青果物の鮮度保持システム・微生物技術による有機循環システム・生鮮農産物のSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)の構築などを行う。
弊社は2004年頃から「アグリSCM」というシステムの構築・運用を行ってきました。これは工業分野のサプライチェーンマネジメント(SCM)の仕組みを農産物に応用したもので、地元・福島の生産現場と都心の店頭を販売データでリンクさせて出荷計画や資材調達などを最適化、高品質な農産物を市場に安定供給します。「前例のない画期的システム」と高い評価も受けていましたが、2011年の東日本大震災で事情が一変しました。「福島県の農産物」が敬遠され、納入先が震災前から95%激減したのです。供給連鎖のプロセスに風評被害でボトルネックが生じたことで、アグリSCM全体が機能しなくなってしまいました。事業閉鎖の危機に直面した状況下で経営資源の棚卸しをしていたところ、特許出願中だった「おいしさの見える化」技術の事業化プランが浮上しました。
「おいしさの見える化」では、野菜や果物を撮影した画像を赤・緑・青の光の三原色に分解し、ヒストグラム化します。このデータと、味覚分析で求めた甘味・塩味・酸味・苦味・うま味や成分などの情報をAI(人工知能)に学習させて、画像から味の特性を推定します。従来、人間が舌で感じる味の定量化には、非常に高額な分析機器が必要でした。しかし「おいしさの見える化」では、スマホなどで撮影した画像があれば、それに匹敵する精度のデータが即座に得られるので、分析コストが劇的に下がります。現在はサブスクリプション形式のサービスとして提供しており、18種類の野菜や果物に対応しています。