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特集2 マクタアメニティ株式会社
「おいしさの見える化」技術は、経済産業省の「新連携支援事業」や特許庁の「福島知財活用プロジェクト」などの枠組を活用して実用化や事業化を進めてきました。研究開発は山形大学と共同で行いましたが、「地元経済の活性化に貢献できれば」と、知財の帰属は弊社に一本化するよう配慮してくれました。現在、周辺特許や商標を含めて8件の権利化が完了しています。解析アルゴリズムはブラックボックスにしつつ、「スマホで写真を撮る」といった外から見て分かることは特許で押さえるというように、メリハリをつけています。クラスターも構成できて参入障壁になり得ていて、特許庁知財評価事業でも高評価をいただいています。
オープンイノベーションにも力を入れており、最近の事例には、伊藤園さんと共同開発した茶葉の品質解析システムがあります。伊藤園さんが蓄積してきた茶葉の評価データをAI学習に活用し、高精度での評価が可能となりました。また、被災地復興のための産業人材育成では、「DXによる農業再生」というテーマで、相馬農業高校で「おいしさの見える化」が活用されています。海外では、JICA(国際協力機構)の中小企業・SDGsビジネス支援事業に参画し、インドでの農業支援に取り組んでいます。従来の農業支援は技術と資材の提供にとどまりがちでしたが、品質に見合う対価が得られる売り方や、フェアトレードの概念まで定着させなければ、貧困からの脱却は実現できません。そこで、かつて福島で構築したアグリSCMのノウハウを生かした、新しい生産流通システムを定着させられるよう努力している最中です。DXやAIは、時間も距離も国境も問いません。福島で培った「おいしさの見える化」技術は、日本のみならず世界の農業の在り方や、食文化を変える可能性を秘めているはず……そんなことを考えています。
福島県知財戦略推進計画 [2022年度~2026年度]
特許庁の福島知財活用プロジェクト(2018年度~2020年度)に続いて、福島県は2021年8月に「ふくしま知財戦略協議会」を設立。福島県の産業発展を支える知財の創造や保護、活用を推進する「福島県知財戦略推進計画」を2022年2月に策定し、新設のふくしま知財戦略支援センターを中核に「知財立県ふくしま」を目指すことを宣言した。現状ではまだ福島県は「知財王国」と呼べる状況ではなく、特許の出願件数は毎年横ばいで推移しており、全国の出願件数における割合も0.1%程度。成長性の高いドローン分野などの利点を生かすためにも、オープンイノベーション他による競争力の強化が期待される。
特許庁デザイン経営プロジェクトチームでは、2023年度から、デザイン思考を用い、福島を中心とした地域が真に必要とする課題に向き合っていく新たなプロジェクト(5カ年計画)を開始予定。