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特集2 株式会社佐藤喜代松商店
伝統文化や技術が息づく京都では、伝統工芸の事業者と公設試験研究機関とのコラボレーションが花を咲かせる。「アナログ的なアプローチで継承されてきた漆の技術を、知的財産として進化させる」ことを旗印にする佐藤喜代松商店に、長年のパートナーである京都市産業技術研究所と共同開発した新時代の漆について話を聞いた。
株式会社佐藤喜代松商店 代表取締役
佐藤 貴彦さん
大学では農学部で応用昆虫学を専攻。京都市産業技術研究所・大藪泰氏の薫陶を受けて漆の奥深さに魅せられる。2011年に4代目社長に就任、漆業界全体に科学的アプローチを浸透させることを目指し、データの共有や、業種の枠を超えた提携を積極的に推進。
PROFILE
株式会社佐藤喜代松商店
[所在地] 京都府京都市北区平野宮西町105番地
[URL] https://urusi.co.jp/(外部サイトへリンク)
[設立] 1949年(創業1921年)
[事業内容] 漆精製卸販売、漆塗装、漆製品開発販売、漆芸教室運営
[従業員数] 4人
当社の創業は1921年。京都の漆屋としては後発組で、常に新しい分野の開拓に挑戦してきました。父(現会長)が3代目社長を務めていた1990年代には「漆を科学する会」を立ち上げ、京都市産業技術研究所(以下、産技研)で漆産業を担当していた大藪泰さんの参加を仰ぐことができました。産技研さんと密接に連携し、基礎研究から商品開発までデータや成果を共有する体制を築けたのは、当社の大きな強みです。
その成果の一つが、産技研さんの特許を技術移転して開発した「MR漆®」。大きな桶で攪拌する従来の精製法ではなく、三本ロールミルを使用して精製することで酵素の活性低下を防ぎ、乾燥時間を短縮しました。耐候性にも優れ、季節や作業環境の制約が減って活用シーンが広がります。2003年にMR漆®で自動車を全面塗装するPRを行ったところ大きな反響があり、アパレルや家電など従来の枠を超える業界からの引き合いが相次ぎました。(佐藤さん)