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三極特許庁会合とは、USPTO、EPO及びJPOの各特許庁が、三庁に共通する課題を協力して解決することを目的とし、1983年から毎年開催しているものです。このたび第23回目の会合が開催されました。
結果概要については、三極特許庁によって採択された「第23回三極特許庁会合の結果概要」(下記)を御参照下さい。
左より、USPTOデュダス長官、EPOポンピドー長官、JPO中嶋長官
欧州特許庁(EPO)、日本国特許庁(JPO)および米国特許商標庁(USPTO)は、2005年11月18日にドイツ、ミュンヘンで行なわれた第23回三極特許庁会合に集った。
三極特許庁は、
以下の通り了解する:
三極特許庁は、サーチ及び審査結果の相互利用はワークロード及び庁間の作業の重複を低減する重要な要素であることを確認し、また、戦略的な協力の新しい領域を特定する必要性を指摘した。
三極特許庁は、戦略作業部会からの勧告、すなわち、ユーザーとのコミュニケーションを改善していくことを受け入れた。特に、ユーザー三極の提案を考慮し、特許出願の形式面での標準化のための作業部会を創設した。
(a)サーチ履歴交換のパイロット・プロジェクト
サーチ履歴情報の共有のためのパイロット・プロジェクトが進展し、来年第1段階が終了する。三極特許庁は、審査官協議や分類調和などの専門的なプロジェクトを通じ、サーチ・審査結果の利用性向上とより深い相互理解へ向けて更なる努力を払い、他庁のサーチ履歴を含むサーチ結果の利用に向けた手法を模索することとなった。
(b)特許審査ハイウェイ
特許審査ハイウェイは、以下の事項を目的としたJPOの提案である。
審査の質を高めること、また庁間でのサーチ・審査結果の相互利用を促進することを目的として、サーチ・審査結果のタイムリーな参照を保証するために各庁の早期審査を活用すること
三極特許庁は、「特許審査ハイウェイの概要」に積極的であるとの見解を示し、特許審査ハイウェイは、もし適切に運用されれば、参加している庁が第1庁の提供するサーチ・審査結果を十分に活用することを可能にする提案であると認識した。
USPTOとJPOは、特許審査ハイウェイに関して、残っている課題が解決され詳細が固まれば、試験的に実施する予定であることを確認した。EPOは、本提案を積極的にユーザーとEPC加盟国に紹介し、パイロット・プロジェクトに参加する可能性を模索していくと表明した。
(c)トライウェイ提案
USPTOは、出願のタイミングと対応に関する顕著な課題点を示した特許審査ハイウェイ提案に基づいた、「特許審査トライウェイ」に関する提案を紹介した。三極特許庁は、トライウェイ提案は特許審査ハイウェイと並行して検討されるものであること、EPOとJPOからコメントをUSPTOに提出することを確認した。
(d)インポート・ガイドライン
付属のインポート・ガイドラインが採択されることを確認した。三極特許庁はインポートの範囲の拡張に関する可能性について議論を続けることとなった。JPOは、IDS提出義務を緩和することを目的としたアプローチが考慮されるべきと指摘した。EPOとUSPTOはこの指摘に留意する。
三極特許庁は、三極審査官会合を継続することとなり、2006年の最初の会合における4つの技術分野が特定された。去年の経験に基づき、三極特許庁は候補分野を特定する方法について合意をする予定である。この方法は分類調和プロジェクトを考慮に入れるものである。
三極特許庁は、これらの特許庁にある特許出願包袋の内容に電子的にアクセス及び閲覧し、又、優先権書類を電子的に交換することを可能とするシステム(三極書類アクセス(TDA))を開発している。三極特許庁は、このシステムの技術的仕様書を三極以外の特許庁に提供するためのガイドラインを作成する予定であり、仕様書の作成・改訂は三極特許庁のコントロールの基に置かれることを確認した。
EPOとUSPTOは、2006年4月から発効する予定の優先権書類の交換についての合意にサインした。この合意により、EPOとUSPTOの電子包袋に含まれる優先権書類の証明されたコピーが、TDAを用いて電子的に移送される。これは、特許出願人にとって、大きなコスト削減となる。この交換は、PCTにおいて主張された優先権書類は対象としない。JPOとUSPTOは、2006年秋に優先権書類の交換に関するメモランダムにサインする予定である。EPOとJPOは、他の電子的媒体を用いて1999年よりすでに優先権書類の交換を行っている。
バイオテクノロジー出願に関する出願トレンドのレポートが提出され、出願数は定常状態にあることが示された。三次元立体構造タンパクの出願数も低いレベルのままである。三極特許庁は、この分野におけるトレンドを継続して監視していくことを確認した。
バイオテクノロジーに関して、三極特許庁で使用されているリソース(データベースなど)と手法を収録した三極サーチガイドブックのとりまとめ作業が進んでいる。第1版は2006年5月までに完成する予定であることが確認された。
XMLフォーマットによる配列データの提出に関する新しい標準について、現在策定作業を行っている。
三極特許庁は、配列データベースの完全化と重複排除について今後とも検討を続けていくことに合意した。
三極特許庁は、先行技術調査及びサーチ結果の相互利用における非特許文献の活用について改善を図るため、協力を継続しているところである。
三極特許庁で共通利用されている出版物について、三庁間で非特許文献を交換することが許されるよう、出版者との現在の契約について拡張する道を模索することとなった。
三極特許庁は、非特許文献にアクセスするために、Digital Object Identifier (DOI)の利用について検討することとなった。
言語ツール、特に機械翻訳の開発は、特許文献への広範なアクセスを促進するための重要な鍵である。
三極特許庁は、JPOが開発した翻訳システムを含む高度産業財産ネットワーク(AIPN: Advanced Industrial Property Network)の効率性を認識した。JPOとEPOは審査官によるこのシステムの利用が増加していることを報告した。三極特許庁は、このシステムの更なる発展に向け協力を行っているところである。
また、EPOは、欧州機械翻訳プログラム(EMTP: European Machine Translation Programme)が急速に進捗していることを報告した。2005年末までに、この翻訳システムの最初のバージョン(独語-英語、スペイン語-英語)が利用可能となる予定である。さらに、他の言語間の作業が2006年に開始される予定である。
三極特許庁は、三庁の分類システムの調和が、審査とサーチ結果の利用の質及び効率を高める上で役立つことを確認した。
三極特許庁は、ステップ・バイ・ステップで各庁の分類の調和を行っており、国際特許分類(IPC)のアドバンスト・レベルに調和した分類を反映することを推奨する予定である。
三極特許庁は、審査官の交換が分類調和のブロセスにおいて多大な貢献をしていることを確認した。
IPC第8版が2006年に施行されるのに伴い、三極特許庁は協力して、IPC第8版の利益を公衆に伝えるためのイベントを開催する予定である。
三極特許庁は、それぞれの地域で行われるフェアまたはイベントに共同で参加することとした。その焦点は、三極協力の成果を発表することである。
EPOは、日本語ユーザーの利便性を向上するために、esp@cenetの日本語版インターフェースをリリースした。
三極知的財産情報サービス企業連合(Trilateral Alliance of Intellectual Property Information Service Companies)からの書簡に応じ、三極特許庁は、特許情報の最大限の普及という目的を共有し支持する民間機関の努力を評価するとともに、対話を継続し、世界の知的財産システムの改善を支援するための意見を交換していくこととした。
PCTミニマム・ドキュメンテーションは、PCTにおける国際サーチ機関(ISA)が先行技術調査を行う際に必ず参照するドキュメントである。三極特許庁は、ドキュメンテーションを精査し、そして、2005年12月の本件に関する次回WIPO会合に対して、各庁の提案についての意識合わせをしていくこととなった。
世界の異なった時間帯において先行技術を構成する文献が発行されていることによって生じる問題の解決を目指し、三極特許庁は、この件について調和したアプローチを取るために、さまざまな構想について検討を行うことを確認した。
(a)新ルート提案
三極特許庁は、世界中の出願人の利益のために現行の出願ルートを補完するものであるJPOからの新ルート提案(説明文(PDF:23KB)、図(PDF:75KB))について、先に議論を進めていくことを確認した。三極特許庁は、各庁のユーザーに対して意見を聴取し、その意見に照らし合わせつつ本提案をさらに検討していくこととした。
(b)特許出願の様式面における標準化/特許法条約(PLT)
三極の産業界によって推し進められ、また、ユーザーニーズに対応して、三極特許庁は特許出願様式を共通化するプロジェクトを推進し、この目的のためのワーキンググループを立ち上げることを確認した。これに関連して、三極特許庁は、特許法条約(PLT)の重要性を認識した。
三極特許庁は、技術協力に関する情報交換の継続が重要であることを強調した。
協力の調整は、それぞれの庁の協力が実施するための政策がさまざまであることを考慮してケース・バイ・ケースで行われるものである。
USPTOとEPOはひとつの協力可能分野として、SIPOの特許行政及び審査にかかる協力をあげた。
三極特許庁は、新三極ウェブサイトを設立した。アドレスは以下のとおり。
http://www.trilateral.net(外部サイトへリンク)
ドシエ・アクセス・システムを利用して
他庁の包袋書類・情報を参照、印刷、インポートする場合のガイドライン
(公開後書類に適用)
本ガイドラインは、三極各庁(Trilateral Offices)がドシエ・アクセス・システムを利用して、サーチ・審査を含む業務の遂行の目的のために、他庁の包袋書類又は情報※1を参照(view)、印刷(print)又はインポートする際のルールを定めるものである。
このガイドラインは、公衆に公開された出願から書類をインポートする際のルールを定めるものである。公衆に公開されていない出願についてのルールは、将来の文書において定めるものとする。出願公開又は他の理由によりドシエが公衆に公開されても、ドシエに含まれるいくつかの書類を公衆に非開示としてもよい。各庁は書類を庁内限り※2とする権利を留保する。庁は非開示の書類を共有しないことを選ぶことも、下記に示す利用について、条件付きで共有することを選ぶこともできる。
このガイドラインは、一般的な事項について定めるものであり、二庁間で別に合意がある場合には、それが優先する。このポリシーはインポートが可能な最大限のものであり、受領庁は職員に対して、入手可能な書類から何をインポートしてもよいか、またどのような条件とするかに関して追加の制約を課すことができることを理解すべきである。
三極各庁の職員は、このガイドラインに同意し、ドシエ・アクセス・システムを用いてアクセス可能なドナー庁の書類及び情報を全て参照することができる。また、参照可能な書類・情報は受領庁において印刷することができる。しかし、参照可能な書類・情報の中には、公衆に公開されておらず内部利用に限定されているものがあるかもしれないことに十分留意しなければならない。参照された書類は、物理的には受領庁の包袋書類へインポートが可能となるので、内部利用に限定された書類・情報が誤って公衆に公開されることのないように、受領庁は、本ポリシーを厳重に守らなければならない。
(A).公衆に公開された出願についてのインポートしてもよい書類・情報とインポートしてはならない書類・情報
インポートしてもよい書類・情報について、インポートするか否かは受領庁に委ねられる。
インポートした書類・情報は、受領庁の出願が公衆に公開された後は、内部利用に限定された書類・情報を除き、公衆閲覧の対象となる※3。
1.公開された出願のインポートしてもよい書類
(1)インポートしてもよい書類・情報
受領庁は、ドナー庁が異なる宣言をしていない限り※4下記の書類・情報について原語のまま(翻訳せずに)受領庁の包袋書類にインポートすることができる。
(2)インポートしてもよい翻訳結果
上記(1)で示されたインポートしてもよい書類の翻訳は、下記の条件を満たすことによりインポートしてもよい。
2.インポートしてはならない書類・情報
上記1.(1)、(2)に該当する書類・情報以外は、インポートしてはならない※6。
(B).その他のインポートに関する取り決め
書類又は情報がインポートされると、インポートした書類又は他の情報の起源は受領庁のファイルに記録されなければならない※7。
特許性に関する情報の開示義務を出願人に課している国の受領庁に対して、出願人はドナー特許庁のドシエから、上記1(1)及び(2)に列挙した種類の特定の書類をインポートすることを要請できる。その場合、当該特許庁は、書類をインポートすることができる。これらの書類は、出願人から提供されたものとして扱われる。各特許庁は上記1(1)及び(2)に列挙した以外の種類の書類をインポートを引き受けてはならない。
受領庁の出願の審査経過中に、上記1(1)及び(2)以外の書類を、出願人が要求される場合には、出願人はこれらの書類を直接受領庁に提出することができる。
※1情報の具体例としては、出願に係る書誌情報が挙げられる。
※2例えば、出願に財務的な情報や未決定のドラフトが含まれている場合
※3これらの書類は、既にドナー庁において公衆に公開されている。
※4例えば、非特許文献及びその他の著作物は、ドナー庁のポリシーによって配布することについて制限されることがある。
※5サーチレポートは、文献が引用され、特定のクレームに適用されたPCTサーチレポートに類似の書類と定義する。USPTOのオフィスアクションや、EPOの拒絶理由中に現れるような議論は、この定義には含まれない。USPTOの書類については、引用文献リスト(例えば、フォーム892又はSB-8)が、そのような議論を含むオフィスアクションを含まず、条件を満たすであろう。
※6三極各庁は、オフィス・アクション(日本の拒絶理由通知を含む)のインポートの可能性と、経過禁反言の問題に関する議論を引き続き行う。
※7インポートされた書類は、受領庁において、経過に関する書類であるとみなされ、受領庁の出願書類の一部となる。それらの書類は、受領庁のポリシーに沿って、公開され、また他庁と共有されるものである。現在は、インポートは、セクションIV(A)1.(1)で示されているように、引用文献、引用文献のリスト、サーチレポート、及び出願書類のみに限定されている。将来、他の種類の書類がインポートしても良い書類のリストに加えられる場合は、受領庁から更なる受領庁への書類のインポート(再インポート)に関するルールは再度見直されなければならない。
[更新日 2005年12月1日]
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