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三極特許庁専門家会合(2007年5月15日-17日、アレキサンドリア)結果概要

結果概要

I.開催日・場所

  • 開催日:5月15日(火曜日)~17日(木曜日)
  • 場所:米国特許商標庁(アレキサンドリア)

II.参加者

  • 日本国特許庁(JPO):守屋特許技監、他9名
  • 欧州特許庁(EPO):キリアキデス副長官、デサンテス副長官、ジルー国際部長、他6名
  • 米国特許商標庁(USPTO):ピーターリン副長官、ボラン国際部長、他7名

III.結果概要

1.相互利用等による審査協力

ワークシェアリングの強化発展

従来の相互利用に関するプロジェクトを強化発展し、他庁のサーチ・審査結果の相互利用を、実際的に最大限可能な範囲まで、より一層強化発展させるための活動について議論するプロジェクトです。
今回の会合では、ワークシェアリング強化発展作業部会のマンデートの内容につき合意しました。USPTOのSHARE提案に対しては、硬直的な制度化は控えるべきである旨主張し、審査請求制度の意義及び特許審査ハイウェイ等の相互利用推進が早期審査請求のインセンティブになることを説明した上で、今後も検討を継続することとなりました。

*第1庁出願を優先的に処理し、第2庁は第1庁のサーチ・審査結果が利用可能になるまで待つという相互利用の枠組み。2007年3月の三極戦略作業部会においてUSPTOより提案。

特許審査ハイウェイ

特許審査ハイウェイとは、第1庁で特許可能の判断が下されている出願に対して、出願人の請求により、第2庁で早期審査を受けるための手続きを緩和し、迅速な権利付与を図る枠組です。米国特許庁とは2006年7月からの試行を継続中であり、韓国特許庁とは2007年4月に開始し、英国特許庁とは7月から試行を開始する予定です。
今回の会合では、日米両国は、対象案件をPCT出願へ拡大することについて報告しました(5月18日に実施済)。

特許審査ハイウェイについてはこちらをご覧下さい。

新ルート

新ルートとは、1第1庁での新ルート出願で第2庁にも出願したと見なすとともに、2出願人は第1庁でのサーチ・審査結果を基に第2庁での審査手続に入るべきか否かを検討する時間的猶予(優先日から30ヶ月まで)が与えられ、3第2庁は第1庁のサーチ・審査結果を利用する、というタイムフレームを制度化する構想です。
日米間では、新ルートの模擬的な試行について、2007年11月に試行を開始することに基本合意しました。

特許審査トライウェイ

特許審査トライウェイとは、所定期間内に、三極特許庁のサーチ結果を共有し、質の向上を図ることを目的とした構想で、2005年の三極特許庁会合でUSPTOより提案されたものです。
今次会合では、USPTOによる試行についての新たな提案について検討し、今後も議論を継続することとなりました。

分類作業部会からの報告

各庁の庁内特許分類(ECLA、USPC、FI)の調和、及び、今後の国際特許分類(IPC)の運営について検討しています。
今回の会合では、2007年4月に開催された三極分類作業部会からの報告を受けました。今後は、三極分類調和プロジェクトが停滞した場合の調停機関の設置の合意に向け検討することとなりました。

三極審査官協議

各技術分野における審査実務の観点から他庁のサーチ・審査結果の有用性を審査官レベルで協議して評価するプロジェクトです。
4月にJPOで行われた三極審査官会合の報告をしました。また、e-learningプロジェクトの状況についても報告し、今年度も三極で協力して開発することとなりました。

審査官によるドシエ・アクセス・システムの活用

ドシエ・アクセス・システムとは他庁での審査経過書類(出願人提出書類や拒絶理由通知等)を照会するシステムです。
三極特許庁は、審査官によるドシエ・アクセス・システムの利用状況と評価につき報告しました。審査官による利用状況等の情報が他庁のサーチ・審査結果の利用の現状・課題分析にも重要な指標となることを確認し、そのような観点も含めて、今後も継続的に情報を共有していくこととなりました。

サーチテンプレート

検索対象とするデータベースやサーチノウハウ等の情報を分野ごとに掲載した、共通のサーチテンプレート又は検索ガイドブックの作成について検討するプロジェクトです。
JPOからサーチテンプレートの一例を提案し、今後も検討を継続することに合意致しました。

サーチの調和

三極間でのサーチの調和について検討するUSPTO提案の新規プロジェクトです。
USPTOの提案を聴取すると共に、今後の取り組み方を確認しました。また、サーチ環境調和のために各庁が改善すべき事項は何かについて意見交換を行うことに合意しました。

バイオテクノロジー作業部会からの報告

バイオテクノロジー及びその周辺分野において、適切な審査及びデータ処理が可能となるように、トレンド調査、データ・フォーマットの統一化、データ交換、サーチツール・サーチ結果の相互利用等の検討を行っています。
JPOは、2007年4月にJPOで開催されたバイオテクノロジー作業部会の概要及び三極バイオガイドブックを作成・公表したことを報告しました。

2.出願人の手続負担軽減のための取組

出願様式の統一

三極いずれの特許庁にも共通して出願することができる統一した明細書の様式(標準様式)について検討しています。
試行中のプロジェクトの進行状況を確認し、早期に最終合意が得られるよう、今後も引き続き検討していくことを確認しました。

優先権書類ライブラリ

優先権書類の電子的交換を世界中で行うための新たな制度、枠組み、システムを構築するプロジェクトです。
三極特許庁及びWIPOで優先権ライブラリを実現する最適な分散型ネットワーク・システムの構成について、三極の優先権書類交換システムをベースに構築するという共通認識が得られました。

優先権書類交換

優先権書類を三極特許庁間で電子的に相互交換することを目的としたプロジェクトです。
7月稼働予定のJPOとUSPTOとの間の優先権書類交換について、ユーザーに周知すべき内容及びシステムの開発状況を確認しました。さらに、USPTOへの出願人の手続き(未公開優先権書類の送受信の要請)の軽減について、早急に検討することとなりました。

PCTの発展

PCTの電子化をはじめ、PCTの事務処理効率化を推進していくべく、他のPCT関連事項も包括的に含めて検討するプロジェクトです。
PCTの電子出願に関し、JPOより事務処理システム自動化及びサーチシステムへの適応性に優れたXML形式の利点を説明しました。今後は、引き続き三極で具体的な電子出願の検討を進め、さらに中間書類も含めたPCT手続き全体の電子化についても検討をすることとなりました。

3.制度・運用の調和に向けた取組

審査実務調和のアクションプラン

全技術分野における審査実務・手続の調和のために、比較研究の利用の仕方や更なるステップのあり方、今後のスケジュールなどについて、計画を立てるプロジェクトです。
USPTOが提案したアクションステップについて検討し、JPOは可能な限り協力することを表明しました。

審査実務に関する比較研究

審査実務に沿った質の高い出願書類の作成を支援するため、記載要件、進歩性/非自明性要件について、実例・仮想事例を用いて三極特許庁の審査実務を比較研究し、その結果を出願人・代理人に周知するプロジェクトです。
既に開始している記載要件の検討についてのスケジュールを確認しました。

新技術の比較研究

ナノテクノロジー分野における審査の運用、サーチストラテジーなどの情報を交換する枠組みについて議論すると共に、ナノテク以外の新技術又は重要技術について検討するプロジェクトです。
ナノテク分野における審査の運用に関する情報交換や事例研究について協力して検討することとなりました。ナノテクの定義・分類については分類調和プロジェクトにおいて決定したものを採用することに合意しました。また、新技術又は重要技術については、まずはどのような技術が該当するのかといった基準について今後検討することとなりました。

4.その他の取り組み

途上国協力

三極特許庁の途上国協力に関する情報交換と共催セミナーの実施について検討するプロジェクトです。
JPOより今年度開催予定のコンピュータソフトウェア特許に関する三極共催中国セミナーの検討状況を説明し、今後の予定を確認しました。

中国文献

今後重要性を増す中国文献(特許・非特許)の、機械翻訳を含むアクセスの改善について検討するプロジェクトです。
SIPOによる特許情報発信に関する情報を得た上で、三極としての活動を検討することとなりました。また、特許製品の製造直前になって特許の有効性について疑義を持たせる中国文献が出てきたような事例等について、産業界から聴取することとなりました。

*SIPO:中国国家知識産権局(State Intellectual Property Office of the People’s Republic of China)

特許情報普及

ITを活用した三極共同の情報普及ポリシーについて検討するプロジェクトです。
今回の会合では、1オンラインデータ交換の短中期の進め方、2受領データの第三者への再配付について現行の三極データ交換ポリシーを維持しつつ、引き続き検討すること、3今年11月の三極特許庁会合において、ユーザーニーズや5年程度先までの情報技術(IT)の進歩を見据えた三極特許庁の情報普及ポリシーを作成すること、4無料インターネットサービスに対する三極の共同ステートメントを行うことに合意しました。

三極ネットワーク

三極特許庁間の他庁審査経過書類等を交換するためのネットワークの構築及び運営に関するプロジェクトです。
三極特許庁以外の庁の三極ネットワークへの接続が増加していくなかで、三極ネットの現状と、セキュリティ技術等の進展を踏まえた今後の方向性について議論し、今後のネットワークについての提言をまとめることとなりました。

三極書類アクセスシステム

三極間で審査経過書類(出願人提出書類や拒絶理由通知等)や優先権書類等を三極ネットワーク上でやりとりするシステムを開発するプロジェクトです。
JPOはKIPOとJPOとの間に三極書類アクセスシステムを構築したことを報告しました。また、三極書類アクセスシステムの運用細則の修正について合意しました。さらに、三極書類アクセスシステムの次期仕様の内容や、仕様を変更する際の手順や変更時期についても議論を進めました。

*KIPO:韓国特許庁(Korean Intellectual Property Office)

電子システム

各庁の出願・庁内処理等、事務処理を行う電子システムに関する三極協力について議論を行うプロジェクトです。
各庁の既存システムに影響を与えることなく、各庁が互換性を確保できるようなシステム構築のあり方及び既存システムとの互換性を保つことのできる新技術標準について議論を行いました。

言語ツール

機械翻訳システムの構築・改良を行うプロジェクトです。
JPOは機械翻訳の精度向上の方策について報告を行い、AIPNの機械翻訳結果について広範なフィードバックを受け付けるための新たなスキームの検討を提案し協力を求めました。EPOは、EMTPの経験をJPOに対してフィードバックすることとなりました。

*EMTP:欧州域内言語間の機械翻訳システム(European Machine Translation Program)

特許と関連した経済分析

三極における特許の経済的側面(ワークロードの変動要因としての諸費用の役割)について共同して研究を行うというプロジェクトです。
EPOから請求項数や市場規模等の観点から見た三極特許庁における特許関連手数料の調査分析について説明がなされ、さらに検討していくこととなりました。

[更新日 2007年6月26日]

お問い合わせ

特許庁総務部国際課多国間政策班

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