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GXTIに基づく特許情報分析の結果概要

令和5年5月
特許庁総務部企画調査課

特許庁は、グリーン・トランスフォーメーション(GX)技術に関する各国・地域の特許出願動向を概括するため、特許庁が作成したグリーン・トランスフォーメーション技術区分表(GXTI)を用いた網羅的な調査を初めて実施しました。

この調査の結果、(1)GX技術全体で見ると、国際的に展開された発明の件数において日本が最大であることが示されるとともに、(2)太陽光発電、建築物の省エネルギー化(ZEB・ZEH等)及び二次電池等の分野においては、価値の高い発明の創出において日本が強みを有することが示唆されました。

本ページのスライド資料については以下のリンクをご参照ください。

目次

GXTI(GX技術区分表)について

GXTI (Green Transformation Technologies Inventory)」は、グリーン・トランスフォーメーション(GX)に関する技術を俯瞰するために、2022年6月に特許庁が作成した技術区分表であり、各技術区分に含まれる特許文献を検索するための特許検索式も併せて公開するものです。
国際特許分類(IPC)を用いた検索式により、グローバルな特許情報分析を、誰でも、同じ条件で実施することが可能です。また、同じ条件で分析がされることで、第三者も比較・評価可能になります。更に、GXTIは階層構造を有しており、目的に応じた調査も可能な他、検索式に出願人名を含めることで、出願人毎のデータ取得も可能です。

GXTIから得られた特許情報の分析結果は、例えば、以下のように活用できます。

  • 企業等は、自社の有するGX関連技術の強みや弱みを把握でき、エビデンス・ベーストで自社の経営戦略や研究開発戦略の立案に活用できます。
  • 企業等は、投資家等に対し、GX関連技術に関する自社の研究開発力の優位性を特許情報に基づいてエビデンス・ベーストで説明できます。
  • 政府機関やNPO等は、特許情報を活用することで、途上国を含めた世界各国・地域のGX関連技術の動向を可視化でき、エビデンス・ベーストで世界各国・地域のGXへの取組を後押しできます。

特許庁は、GXTIがGX関連技術の特許情報分析をする際の共通資産として利用されることで、企業の経済的価値及び社会的価値の向上に寄与し、環境問題を解決するイノベーションが促進されることに期待しています。

図1 GXTIの構造

GXTIの構造

調査・解析方法

本調査は、Derwent™ Innovationを用いて行いました(検索日:2022年10月24日~2022年12月16日)。
出願年(優先権主張年)2010~2021年の特許出願、PCT出願を調査対象としました。
対象技術区分は、GXTI全体・GXTI上の大区分・GXTI上の中区分・GXTI外の注目技術(検索式は2022年9月2日公開のGXTI第1.03版に記載の式を使用)とし、調査対象国は・地域は、日本・米国・欧州・ドイツ・フランス・英国・中国・台湾・韓国・カナダ・インド・ASEAN・オーストラリアとしました(PCT出願を含む)。
なお、欧州への出願とは、アイルランド・イタリア・オーストリア・オランダ・スイス・スウェーデン・スペイン・スロバキア・チェコ・デンマーク・ドイツ・トルコ・ノルウェー・ハンガリー・フィンランド・フランス・ベルギー・ポーランド・ポルトガル・ルーマニア・ルクセンブルク・英国への出願及びEPC(欧州特許条約)出願としました。

用語の説明

  • 「発明件数」とは、いずれかの国・地域に出願された発明の数を指します。ある発明を一つの国・地域のみへ出願した場合も、二つ以上の国・地域へ出願した場合も1件と数えます。二つ以上の国・地域へ出願した場合の出願のまとまりは、「Patent Family」とも称されることがあります。ある技術分野における発明件数を国籍・地域別又は出願人別に分析することで、各国・地域又は出願人毎の技術開発の状況を把握できます。
  • 「国際展開発明件数」とは、「発明件数」のうち、二つ以上の国・地域へ出願された発明、EPOへ出願された発明、又はPCT出願された発明の数を指します。「International Patent Family (IPF)」とも称されることがあります。二つ以上の国・地域へ出願される発明は、1か国のみに出願される発明に比べ、出願人自身にとって価値の高い発明と考えられ、発明の価値や国際的な影響力を考慮した分析が行えます。
  • 「高被引用国際展開発明件数」とは、審査官により引用された回数が発明全体の上位1%以内(被引用回数が28回以上)である、希少な国際展開発明の件数であり、そのような発明は後続の特許出願への影響が大きく、価値が高いと考えられています。国際展開発明件数を見ることで、各言語の話者の多寡が被引用機会に与える影響を軽減することができます。

GX技術全体の動向調査

出願人国籍・地域別の発明件数の年次推移

2010年時点では、日本国籍の発明件数が最も多いですが、2013年以降は横ばいになっています。殆どの国籍・地域の発明件数も同様にほぼ横ばいになっています。一方で、中国籍の発明件数は急増し、2013年に日本国籍の件数を超え最多となりました。また、インド国籍の発明件数も2015年頃から増加傾向にあります。

図2 GXTIに含まれるGX技術全体における発明件数の年次推移

GXTIに含まれるGX技術全体における発明件数の年次推移

出願人国籍・地域別の国際展開発明件数の年次推移

日本国籍の国際展開発明件数は、調査期間を通じて最も多く、GX技術分野における日本の存在感の大きさが示唆されます。中国籍の国際展開発明件数は漸増していますが、2019年時点で日本国籍の半分程度と、発明件数に比べて伸びが緩やかであることが分かります。発明件数の年次推移と併せて考えると、中国籍による出願は、1ヶ国(自国)のみへの出願が大部分を占めると見られます。

図3 GXTIに含まれるGX技術全体における国際展開発明件数の年次推移

GXTIに含まれるGX技術全体における国際展開発明件数の年次推移

GXTI上の大区分の動向調査

国際展開発明件数の年次推移及び出願人国籍・地域別件数

省エネ区分(gxB) 及び電池・蓄エネ区分(gxC) は増加傾向にありますが、エネルギー供給区分(gxA) は減少傾向にあります。
日本国籍は省エネ区分(gxB)、電池・蓄エネ区分(gxC)で首位となっています。また、欧州籍はエネルギー供給区分(gxA)、米国籍は非エネ・CO2削減区分(gxD)、ガス回収・貯蔵区分(gxE)で首位になっています。

図4 GXTI大区分別の国際展開発明件数の年次推移

GXTI大区分別の国際展開発明件数の年次推移

図5 GXTI大区分別、出願人国籍・地域別の国際展開発明件数

GXTI大区分別、出願人国籍・地域別の国際展開発明件数

GXTI上の中区分の動向調査

gxA01:太陽光発電

国際展開発明件数の合計件数は減少傾向にあり、有識者からは新たな技術の開発段階から既存技術の普及段階に移っている可能性が示唆されました。日本国籍は、国際展開発明件数の年次推移を見ると、2018年までの全ての期間において国際展開発明件数で首位を維持しています。また、日米欧韓籍はいずれも減少傾向を示している中、中国籍の国際展開発明件数は近年、日米欧籍と同水準まで増加しています。
国際展開発明件数上位20者に注目すると、10者を日本国籍が占めています。また、高被引用国際展開発明件数では、首位の米国籍が359件、2位の日本国籍が182件、欧州籍が102件、韓国籍が97件、中国籍が59件の順になっています。
太陽光発電分野は、国際展開発明件数及び高被引用国際展開発明件数から日本が強みを有する分野と考えられる一方、米欧も存在感を有します。また、近年の中国籍の台頭にも注目が必要と言えます。

図6 「gxA01:太陽光発電」における国籍・地域別国際展開発明件数の年次推移

「gxA01:太陽光発電」における国籍・地域別国際展開発明件数の年次推移

図7 「gxA01:太陽光発電」における国際展開発明件数上位20者(左)及び高被引用国際展開発明件数(右)

「gxA01:太陽光発電」における国際展開発明件数上位20者(左)及び高被引用国際展開発明件数(右)

gxB01:建築物の省エネルギー化(ZEB・ZEH等)

国際展開発明件数の合計件数は、7,000件前後で推移しています。また、国際展開発明件数の年次推移を見ると、2010~2018年にかけて、首位の日本国籍は各年2,500件程度で推移しており、2位の欧州籍を大きく上回っています。
国際展開発明件数の上位20者に注目すると、12者を日本国籍が占めています。また、高被引用国際展開発明件数では、首位の日本国籍が約1,000件、2位の米国籍が約800件、3位の韓国籍が約600件であり、欧州籍及び中国籍がそれぞれ約300件と続きます。建築物の省エネルギー化(ZEB・ZEH等)は、日本国籍が国際展開発明件数、高被引用国際展開発明件数、国際展開発明件数上位に入る出願人数で首位であり、日本が強みを有する分野であることが示唆されました。

図8 「gxB01:建築物の省エネルギー化(ZEB・ZEH等)」における国籍・地域別国際展開発明件数の年次推移

「gxB01:建築物の省エネルギー化(ZEB・ZEH等)」における国籍・地域別国際展開発明件数の年次推移

図9 「gxB01:建築物の省エネルギー化(ZEB・ZEH等)」における国際展開発明件数上位20者(左)及び高被引用国際展開発明件数(右)

「gxB01:建築物の省エネルギー化(ZEB・ZEH等)」における国際展開発明件数上位20者(左)及び高被引用国際展開発明件数(右)

gxC01:二次電池

国際展開発明件数の合計件数は、2010年の5,000件弱から2019年及び2020年の8,000件強(暫定値)へと大幅に増えており、研究開発が活発に行われてきていることが示唆されています。また、国際展開発明件数の年次推移を見ると、首位の日本国籍が全期間を通して2,000件以上で推移しており、2位以下(1,000件程度)を凌駕しています。
国際展開発明件数の上位20者に注目すると、12者を日本国籍が占めています。また、高被引用国際展開発明件数では、首位の日本国籍が959件、2位の米国籍が703件となっており、3位の韓国籍の384件を凌駕しています。以上のことから、二次電池は日本が強みを有する分野であることが示唆されました。

図10 「gxC01:二次電池」における国籍・地域別国際展開発明件数の年次推移

「gxC01:二次電池」における国籍・地域別国際展開発明件数の年次推移

図11 「gxC01:二次電池」における国際展開発明件数上位20者(左)及び高被引用国際展開発明件数(右)

「gxC01:二次電池」における国際展開発明件数上位20者(左)及び高被引用国際展開発明件数(右)

gxD01:バイオマスからの化学品製造

本技術区分には、バイオマスプラスチック、セルロースナノファイバー等が含まれます。
国際展開発明件数の年次推移を見ると、合計件数は、1,000件前後で横ばいになっています。また、2010~2012年には首位の米国籍が500件弱であったが2016年以降は300件程度となり、2位の欧州籍と近い件数となっている。中国籍は増加傾向で2020年頃には米欧籍と並ぶ見込みです。日本国籍は100件程度で横ばいであり、2017年に中国に抜かれ4位となりました。
国際展開発明件数の上位20者の推移を見ると、米国籍が2010~2013年には6者入っていましたが、2018~2021年には2者に減少しました。一方で、2010~2013年には1者もランクインしていなかった中国籍は2018~2021年には3者入りました。3者とも大学・研究機関である点も特徴的です。IFP新エネルギー(仏)、カリフォルニア大学(米)等、中国以外でも大学・研究機関のランクインが多数見られます(特に、2018~2021年には21者中7者を大学・研究機関が占める。)。

図12 「gxD01:バイオマスからの化学品製造」における国籍・地域別国際展開発明件数の年次推移

「gxD01:バイオマスからの化学品製造」における国籍・地域別国際展開発明件数の年次推移

図13 「gxD01:バイオマスからの化学品製造」における国際展開発明件数上位者(左)及び高被引用国際展開発明件数(右)

「gxD01:バイオマスからの化学品製造」における国際展開発明件数上位者(左)及び高被引用国際展開発明件数(右)

gxE01:CCS・CCUS・ネガティブエミッション

国際展開発明件数の年次推移を見ると、合計件数は600件前後で概ね横ばいです。また、2010~2018年にかけて、首位の米国籍は300件弱から200件前後に減少傾向であり、2位の欧州籍も200件超から200件弱に減少傾向となっています。一方、3位の日本国籍は、100~150件の間で概ね横ばいであり、欧米と日本の差が縮まっています。
国際展開発明件数の上位20者の推移を見ると、日本国籍は2010~2013年には4者でしたが、2018年~2021年には7者に増加しました。また、韓国エネルギー技術研究院(韓)、IFP新エネルギー(仏)、アリゾナ州立大学(米)等、大学・研究機関も多数ランクインしています。

図14 「gxE01:CCS・CCUS・ネガティブエミッション」における国籍・地域別国際展開発明件数の年次推移

「gxE01:CCS・CCUS・ネガティブエミッション」における国籍・地域別国際展開発明件数の年次推移

図15 「gxE01:CCS・CCUS・ネガティブエミッション」における国際展開発明件数上位者(左)及び高被引用国際展開発明件数(右)

「gxE01:CCS・CCUS・ネガティブエミッション」における国際展開発明件数上位者(左)及び高被引用国際展開発明件数(右)

GXTI区分外の注目技術の動向調査

国際展開発明件数の年次推移

「ペロブスカイト太陽電池」は、2010年から2015年にかけて急増し、それ以降も一定の件数を維持しています。また、「配達経路の最適化」も、2010年から2020年にかけて急増しています。「物品のシェア」(カーシェアリング等)、「食品の常温保存」(缶詰、乾燥食品、等)が増加傾向にある一方で、「光電融合技術」は減少傾向にあります。

図16 GXTI区分外の注目技術における国際展開発明件数の年次推移

GXTI区分外の注目技術における国際展開発明件数の年次推移

出願人国籍・地域別の国際展開発明件数(主要国のみ)

日本国籍は、調査した全ての技術に関して国際展開発明件数(IPF件数)が上位3位以内で、そのうち、ペロブスカイト太陽電池と光電融合技術が首位でした。米国籍は、八つの技術のうち七つの技術において国際展開発明件数が上位3位以内で、そのうち五つの技術で首位でした。欧州籍は、三つの技術において国際展開発明件数上位が3位以内で、食品の常温保存で首位でした。中国籍及び韓国籍も、三つの技術において国際展開発明件数が上位3位でした。

図17 GXTI区分外の注目技術別、出願人国籍・地域別の国際展開発明件数

GXTI区分外の注目技術別、出願人国籍・地域別の国際展開発明件数

まとめ

GX技術全体について

確定値が得られる調査期間における国際展開発明件数の年次推移では、日本国籍が各年で最も多く、各国・地域で日本で創出された発明の活用が見込まれていることが示唆されました。

GXTI上の大区分について

全調査期間の国際展開発明件数の合計件数では、省エネ区分(gxB) が最も多く、次いでエネルギー供給区分(gxA)、電池・蓄エネ区分(gxC)、非エネ・CO2削減区分(gxD)、ガス回収・貯蔵区分(gxE)の順に多い結果となりました。
また、確定値が得られる調査期間の国際展開発明件数の年次推移では、 省エネ区分(gxB) 及び電池・蓄エネ区分(gxC)は増加傾向にありました。
全調査期間の国際展開発明件数に関して、出願人国籍・地域別合計件数では、欧州籍はエネルギー供給区分(gxA) において首位、日本国籍は省エネ区分(gxB) と電池・蓄エネ区分(gxC) において首位、米国籍は非エネ・CO2削減区分(gxD) とガス回収・貯蔵区分(gxE) において首位でした。

GXTI上の中区分について

確定値が得られる調査期間の国際展開発明件数の年次推移をみると、

  • 【gxA01】「太陽光発電」では、日本国籍が各年で首位を維持していますが、中国籍出願人を除き全体として減少傾向にあります。
  • 【gxB01】「建築物の省エネルギー化(ZEB・ZEH等)」では、首位の日本国籍(各年2,500件程度)は、2位の欧州籍(各年1,500件程度)を大きく上回りました。
  • 【gxC01】「二次電池」では、首位の日本国籍の国際展開発明件数が全期間を通して2,000件以上で推移しており、米欧韓籍(1,000件程度)を凌駕しています。
  • 【gxD01】「バイオマスからの化学品製造」では、首位の米国籍が2010~2012年には500件弱でしたが、2016年以降は減少して300件程度となり、2位の欧州籍と近い件数となっています。日本国籍は100件程度の横ばいで、2017年に中国に抜かれ4位となりました。
  • 【gxE01】「CCS・CCUS・ネガティブエミッション」では、 首位の米国籍及び2位の欧州籍は2010~2018年にかけて200件程度に減少している一方、3位の日本国籍は、同期間100~150件で概ね横ばいであり、差が縮まっています。

大学・研究機関に注目すると、gxD01のバイオマスからの化学品製造、gxE01のCCS・CCUS・ネガティブエミッションにおいて、米国・欧州・中国・韓国の大学等が国際展開発明件数の上位20者にランクインしています。

GXTI区分外の注目技術に関する、全調査期間における国際展開発明の合計件数について

全調査期間における国際展開発明の合計件数では、日本国籍は調査した全ての技術で上位3位以内で、ペロブスカイト太陽電池と光電融合技術では、日本国籍が首位でした。パワー半導体、施設全体の省エネ、配達経路の最適化、物品のシェア、CO2排出権取引では、米国籍が首位で、食品の常温保存では、欧州籍が首位でした。

[更新日 2023年6月27日]

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