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「GXTI (Green Transformation Technologies Inventory)」は、グリーン・トランスフォーメーション(GX)に関する技術を俯瞰するために、2022年6月に特許庁が作成した技術区分表であり、各技術区分に含まれる特許文献を検索するための特許検索式も併せて公開するものです。
昨今、産業革命以来の化石燃料中心の経済・社会、産業構造を、クリーンエネルギー中心に移行させ、経済社会システム全体の変革、すなわちGXを実行することが求められています。
また、企業等においては、企業価値や社会的価値の向上を目的として、自社が提供する価値(製品、サービス)がGXにどのように貢献できるのかについて、客観的に示す取組も進められています。加えて、企業等は、改訂コーポレートガバナンス・コード(2021年6月)又は気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に基づく気候変動問題への対応に係る開示が求められています。
GXに関する技術動向の俯瞰や、各企業等におけるGXに関する取組及び事業への気候変動の影響等を客観的に示す手法として、特許情報の分析が有効な手法の一つとして考えられます。
GXTIが、GX関連技術の特許情報分析をする際の共通資産として利用されることで、企業の経済的価値及び社会的価値の向上に寄与し、環境問題を解決するイノベーションが促進されることを期待しています。
上記技術区分表では、INPITが無料で提供する特許検索データベースであるJ-PlatPat(外部サイトへリンク)に用意された「論理式入力」タブで検索する場合の特許検索式も掲載しています。検索方法等の詳細については、以下のリンクを参照ください。
特許検索式は、J-PlatPatに限らず、他の特許検索データベースでも用いることができます(他の特許検索データベースにおける、上記技術区分表に沿った検索式の例を本ページ下部の「GXTI関連サイト」にて紹介します。)。
なお、GXTIの更新履歴については、上記エクセルファイルの「更新履歴」のシートをご参照ください。
GXTIは、GX技術に深い知見を有する外部有識者6名からなる検討会における2回(2022年1月6日、2022年4月6日)の議論を経て、温室効果ガスの削減効果が大きいとされる技術を選定し、作成しました。
また、各技術区分に示された特許検索式は、各分野における特許庁審査部の特許審査官が作成しました。
秋元 圭吾 | 公益財団法人 地球環境産業技術研究機構 システム研究グループリーダー・主席研究員 |
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尾山 宏次 | 国立研究開発法人 科学技術振興機構 研究開発戦略センター フェロー |
古山 通久 | 信州大学 先鋭材料研究所 教授 |
田中 謙司 | 東京大学大学院 工学系研究科 技術経営戦略学専攻 准教授 |
土肥 英幸 | ENEOS総研株式会社 執行役員 エネルギー技術調査部長 |
中垣 隆雄 | 早稲田大学 理工学術院 教授 |
GXTIには、以下の3つの特徴があります。
1つ目の特徴は、GX技術をどのようにカテゴライズするかを示したことにあります。
GXTIは、大区分(6コ)、中区分(32コ)及び小区分(86コ)の3つの階層からなり、それぞれに「gx」から始まる区分記号が設けられています。
<大区分>
大区分は、エネルギー供給の視点(gxA)、エネルギー需要の視点(gxB)、エネルギー貯蔵の視点(gxC)、非エネルギー分野のCO2削減の視点(gxD)、温室効果ガスの回収・貯留・利用・除去の視点(gxE)の5つの視点から構成されています。
また、大区分には、上記視点に共通する横断的な視点(gxY)も別途用意されています。具体的には、「制御・調整」、「計測・測定」、「ビジネス関連」及び「ICT関連」の4つの視点を用意し、gxA~gxEの5つのGX技術とクロス集計できるようにされています(gxYは、gxA~gxEの5つのGX技術の内数となります)。これにより、GX技術のうち、横断的な各視点が含まれる技術の動向を把握できます(例えば、「エネルギー供給×制御・調整」等)。
<中区分・小区分>
中区分及び小区分には、それぞれの大区分において重要な個別の技術が挙げられています。
GXTIにおいて、小区分は、中区分に含まれる技術が何であるかを具体的に示すものであり、特許出願動向の分析は中区分単位で行うことを想定しています。もちろん、小区分単位で分析することも可能です。
なお、1つの技術(特許文献)が、複数の中区分・小区分に該当する場合もあります。
また、小区分は、特許検索式と対応させることを主眼に作成されていますので、技術的な粒度は小区分により異なります。同じ中区分内の小区分の技術が互いに概念的に重複している場合もあります。
2つ目の特徴は、各小区分に対応するものとして公表した特許検索式を用いることで、誰でも、同じ条件で検索することができ、客観的な結果を得ることができることです。
GXTIは、上述のとおり大区分、中区分、小区分を備えた階層構造となっており、小区分ごとに特許検索式が公表されています。各小区分に対応する特許を検索し、特許件数を知ること等ができます。
中区分、大区分またはGXTI全体を分析対象とする場合には、区分の下位に含まれるすべての小区分の特許検索式を足し合わせる(文献の和集合をとる)ことで、目的に応じた調査をすることができます。
3つ目の特徴は、特定の国や地域で利用されている検索インデックスを利用せず、国際的な検索インデックスである国際特許分類(IPC)またはIPCとテキストとの掛け合わせを用いて、特許検索式を構成していることです。そのため、アジアの国々をはじめとして、IPCを採用している国や地域であれば、GXTIを用いることで特許出願の動向を確認することができます。
※現時点で、IPCは、ストラスブール協定の加盟国をはじめ、100以上の国・地域で用いられています。
GXTIは、GX技術に該当する特許文献をどのように検索するかという点について一例を示すものであり、GXに関する技術動向や、企業の事業活動と気候変動問題との関係を客観的なデータに基づいて示す際に活用いただくことを想定して作成しています。例えば、GXTIの特許検索式に、自社の出願人名称を掛け合わせて検索し、GXTIの技術区分単位で自社がどれだけの特許出願を行っているかを数字で示すことで、GX技術に関する注力技術を客観的に説明することが考えられます。また、他社の出願人名称を掛け合わせて検索することで、GXTIの技術区分単位で自社と他社との比較を行うことを通じて、事業戦略や特許戦略の立案に役立てることも考えられます。
特許庁では、2022年度、GXTIを用いて、GXTIの技術区分単位で各国の特許出願動向を概括する調査を実施し、報告書を2023年5月に公表しました。本調査の結果が、GX技術の出願動向の把握と、GXTIを用いた特許情報分析を行う際の一助となれば幸いです。
(参考)
今後、GXTIについて、米欧中韓の特許庁や世界知的所有権機関(WIPO)との間でも、GXTIの効果的な活用や改善等について提案や議論を行っていくとともに、必要によりGXTIを改訂していくことを考えています。
GXTIを用いて特許情報の分析を行った事例や、気候変動関連情報の開示を行った事例を募集しています。
お知らせいただいた事例は、確認させていただいた後、順次掲載いたします。インターネット上で公表されている事例については、リンクを掲載させていただきます。
ご協力いただける場合には、下記お問い合わせ先までご連絡いただけますと幸いです。
GXTIは、GX技術の技術動向等に合わせて更新していくことも視野に入れています。
今後GXTIを更新する際に、ユーザーの皆様のご意見も参考に検討したいと考えており、下記お問い合わせ先までご意見をいただけますと幸いです。
<XLSCOUT : XLSCOUT GXTI Analytics Dashboard>
Introducing XLSCOUT GXTI Analytics Dashboard(外部サイトへリンク)
<一般財団法人 日本特許情報機構:Japio-GPG/FX向けGXTI検索式の公開>
脱炭素技術の見える化 - 知財AI研究センター(外部サイトへリンク)※リンク先の下部に掲載がございます。
<Japio YEAR BOOK 2022;pp.144-147>
なぜ、グリーン・トランスフォーメーション技術区分表を公表したか?─特許情報分析をGX 技術に関する自社の強みの客観的な把握の一助とするために─(PDF、外部サイトへリンク)
<知財情報&戦略システム誌 No.27(通刊28号);pp.20-21>
グリーン・トランスフォーメーションに関する技術区分表GXTI特許庁が作成・公表/気候変動対策を特許情報で見える化(PDF、外部サイトへリンク)
<広報誌「とっきょ」2022年10月11日発行号;pp.12-13>
マンガでわかる知財!/イラストレーターパパンがゆく!「GXへの取組開示に役立つ『GXTI』って?」
<特許庁 お知らせ;2022/09/21>
IP Weekにおいて濱野長官が「知財で未来を描く」をテーマに基調講演を行いました
<METI Journal ONLINE/60秒早わかり解説;2022/07/14>
企業の気候変動情報開示に活用できる/GXTI:グリーン・トランスフォーメーション技術区分表とは(外部サイトへリンク、経済産業省のページへ)
[更新日 2023年6月8日]
お問い合わせ |
特許庁総務部企画調査課知財動向班 電話:03-3581-1101 内線2152 |