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ドイツ 商標法 2

 第2部 商標及び取引上の表示の保護の要件,範囲及び制限;移転及びライセンス

 第1章 商標及び取引上の表示;優先権及び優先順位

 第3条 商標として保護することができる標識

  • [1] 如何なる標識も,特に個人名を含む語,図案,文字,数字,音響標識,商品若しくはその包装その他梱包の形状を含む立体形状,色彩及び色彩の組み合わせを含むものであって,ある事業に係る商品又はサービスを他の事業に係る商品又はサービスから識別することができるものは,商標として保護することができる。
  • [2] 次の形状のみからなる標識は,商標として保護することができない。
    • (1) 商品自体の性質に由来する形状
    • (2) 技術的結果を得るために必要とされる形状,又は
    • (3) 商品に実質的価値を与える形状

 第4条 商標の保護を生ずるもの

商標の保護は,次のことから生ずるものとする。

  • (1) 特許庁に備える登録簿に商標として標識を登録すること
  • (2) 取引において標識を使用すること。ただし,その標識が関係取引業界において商標としての二次的意義を獲得している場合に限る。又は
  • (3) 産業財産の保護に関するパリ条約(パリ条約)第6条の2にいう商標として広く認識されていること

 第5条 取引上の表示

  • [1] 会社の象徴及び著作物の標題は,取引上の表示として保護されるものとする。
  • [2] 会社の象徴とは,名称,会社名,又は営業施設又は事業の特別な名称として取引上使用される標識をいう。ある営業を他のものから識別することを意図された営業の象徴及びその他の標識であって,関係取引業界において営業施設の識別標識とみなされているものは,営業施設の特別な名称に該当するものとする。
  • [3]著作物の標題とは,印刷物,映画作品,音楽作品,演劇又はその他これらに相当する作品の名称又は特別な表示をいう。

 第6条 優先権及び優先順位

  • [1] 第4条,第5条及び第13条に定める権利が衝突する場合に,それらの何れが優先するかを決定するについて本法における諸権利の優先順位が関係するときは,その優先順位は次の[2]及び[3]の規定に従って決定されるものとする。
  • [2] 優先順位は,出願若しくは登録された商標については出願日(第33条[1])によって,又は,第34条若しくは第35条の規定に従い優先権が主張されている場合は優先日によって,決定されるものとする。
  • [3] 第4条(2),(3),第5条及び第13条にいう権利については,優先順位は,それらの権利が獲得された日によって決定されるものとする。
  • [4] 同日のために[2]及び[3]の規定に従い同一の優先順位を有する権利は,同等の地位を有し,かつ,互いに他に対して如何なる権利も確立しないものとする。

 第2章 登録による商標保護の要件

 第7条 所有者資格

次の者は,登録商標及び出願に係る商標の所有者となることができる。

  • (1) 自然人
  • (2) 法人,又は
  • (3) 権利を取得し義務を負う能力を有するパートナーシップ

 第8条 絶対的拒絶理由

  • [1] 第3条に規定する商標として保護を受けることのできる標識であっても,視覚により認識できるように表現することができないものは,登録されないものとする。
  • [2] 次の商標は登録されないものとする。
    • (1) 商品又はサービスについての識別性を有していない商標
    • (2) 商品若しくはサービスの種類,品質,数量,用途,価格,原産地,生産若しくは提供の時期又はその他の特徴を示すために取引上使用されることがある標識又は表示のみをもって構成された商標
    • (3) 指定する商品又はサービスについて,通用語において又は誠実なかつ確立した商慣習において常用されるようになっている標識又は表示のみをもって構成された商標
    • (4) 特に,商品若しくはサービスの種類,品質又は原産地について,公衆を欺くようなものである商標
    • (5) 公の秩序又は一般に容認された道徳原理に反する商標
    • (6) 国の紋章,旗章,若しくはその他の記章,又は国内の地方,地域団体若しくはその他の共同体的団体の紋章を含む商標
    • (7) 連邦法律官報(Bundesgesetzblatt)における連邦法務省の告示により商標として有効に登録することができない監督用及び証明用の公の標識及び印章を含む商標
    • (8) 連邦法律官報における連邦法務省の告示により商標として有効に登録することができない国際政府間機関の紋章,旗章若しくはその他の標識,印章又は表示を含む商標
    • (9) 公益に関するその他の規定によりその使用を禁止し得ることが明白である商標
  • [3] 登録に関する決定がなされる前に使用されていたことの結果として,商標の出願に係る商品又はサービスについてその商標自体が識別標識として関係取引業界において確立している場合は,[2](1),(2)及び(3)の規定は適用しない。
  • [4] 商標が[2](6),(7)及び(8)に定める標識の模倣を含んでいる場合にも,[2](6),(7)及び(8)の規定は適用される。出願人が[2](6),(7)及び(8)に定める標識の1つを商標中に含ませる権利を有する場合は,それが前記標識のうちの他の標識との混同を生ずることがあるときであっても,[2](6),(7)及び(8)の規定は適用しない。更に,商標の登録出願に係る商品又はサービスが監督用又は証明用の標識又は印章の採用されている商品又はサービスと同一でなく類似もしない場合は,[2](7)の規定は,適用しない。また,出願に係る商標が,それと国際政府間機関と間に関係があるものと公衆に偽って示唆するようなものでない場合は,[2](8)の規定は適用しない。

 第9条 相対的拒絶理由としての出願商標又は登録商標

  • [1] 次の場合は,商標の登録は取り消すことができる。
    • (1) 当該登録商標が先に出願又は登録された商標と同一であって,当該商標の登録に係る商品又はサービスが先の商標の出願又は登録に係る商品又はサービスと同一である場合
    • (2) 当該登録商標が先に出願又は登録された商標と同一性又は類似性を有し,かつ,両商標によって指定される商品又はサービスが同一性又は類似性を有する故に,他の商標との関連性を想起させる虞を含め,公衆の側に混同を生じさせる虞がある場合
    • (3) 当該登録商標が,先に出願又は登録された商標と同一又は類似であって,そのような先の商標の出願又は登録に係る商品又はサービスと類似しない商品又はサービスについて登録されている場合において,先の商標がドイツ連邦共和国において名声を得ており,かつ,正当な理由なく当該登録商標を使用することが名声を得ている商標の識別性又は名声を不正に利用し又は害するものであるとき
  • [2] 商標出願は,それらが登録された場合にのみ,[1]に基づく取消理由を構成する。

 第10条 周知商標

  • [1] 商標が,パリ条約第6条の2に規定する意味でドイツ連邦共和国において周知の先の商標と同一又は類似のものである場合,及び第9条[1](1),(2)又は(3)の規定に基づく追加の要件が満たされている場合は,その商標は登録されないものとする。
  • [2] 出願人が周知の商標の所有者から出願の許可を得ている場合は,[1]の規定は適用されないものとする。

 第11条 代理人の名義で登録された商標

商標がその所有者の許可を得ないで所有者の代理人又は代表者の名義で登録された場合は,その商標の登録は取り消すことができる。

 第12条 使用により取得された商標及び取引上の表示の優先順位効果

登録商標の優先順位に関係する日より前に,第4条(2)にいう商標の権利又は第5条にいう取引上の表示の権利を他の者が取得しており,その者がかかる権利に基づきドイツ連邦共和国の全領域において当該登録商標の使用を差し止める権限を有するときは,当該商標の登録は取り消すことができる。

 第13条 その他の先の権利

  • [1] 登録商標の優先順位に関係する日より前に,第9条から第12条までに定める権利以外の権利を他の者が取得した場合であって,その者がドイツ連邦共和国の全領域において当該登録商標の使用を差し止める権限を有するときは,当該商標の登録は取り消すことができる。
  • [2] [1]にいう他の権利には,特に,次の権利が含まれる。
    • (1) 名称に対する権利
    • (2) 個人の肖像権
    • (3) 著作権
    • (4) 植物の品種名
    • (5) 原産地表示
    • (6) 他の産業財産

 第3章 保護の範囲;権利の侵害

 第14条 商標の所有者の排他的権利;差止命令による救済;損害賠償

  • [1] 第4条の規定に基づいて商標の保護を取得することにより,その商標の所有者には,その商標について排他的権利が与えられるものとする。
  • [2] 第三者は,商標の所有者の同意を得ないで次の標識を取引上使用することを禁止されるものとする。
    • (1) 商標が保護されている商品又はサービスと同一の商品又はサービスについて,当該商標と同一の標識
    • (2) 標識と商標との同一性又は類似性並びにその商標及び標識が対象とする商品又はサービスの同一性又は類似性のために,その標識と商標が関連があるものと思わせる虞を含め,公衆の側に混同を生じさせる虞がある場合における当該標識
    • (3) 保護商標の対象である商品又はサービスと類似しない商品又はサービスについて使用される当該商標と同一若しくは類似する標識の場合で,当該商標がドイツ連邦共和国において名声を得ており,かつ,正当な理由なくこのような標識を使用することが当該商標の識別性又は名声を不正に利用し又は害するものであるときにおける当該標識
  • [3] [2]に定める条件が満たされた場合は,特に,次のことが禁止されるものとする。
    • (1) 商品又はその梱包若しくは包装に当該標識を付すこと
    • (2) 当該標識の下に商品の提供を申出し,販売し又はこれらの目的のために商品を保管すること
    • (3) 当該標識の下にサービスを申出又は提供すること
    • (4) 当該標識の下に商品を輸入又は輸出すること
    • (5) 営業書類又は広告に当該標識を使用すること
  • [4] 第三者が,商標所有者の同意を得ないで,取引の過程において,
    • (1) 当該商標と同一若しくは類似する標識を梱包若しくは包装,又はラベル,値札,縫込ラベル若しくはこれに類する標識媒体に付すこと,
    • (2) 当該商標と同一若しくは類似の標識を付した梱包,包装又は標識媒体の提供を申出し,それらを販売し,又はこれらの目的のためにそれらを保管すること,又は
    • (3) 当該商標と同一若しくは類似の標識を付した梱包,包装又は標識媒体を輸入又は輸出することは,
      そのような梱包若しくは包装が,[2]及び[3]の規定により第三者が当該標識を使用することが禁じられている商品若しくはサービスの梱包若しくは包装のために使用され,又は標識媒体がかかる商品若しくはサービスの識別のために使用される虞が存在する場合には,禁止される。
  • [5] 商標の所有者は,[2]から[4]までの規定に違反して標識を使用する者に対してその使用の差止命令を求める訴えを起こすことができる。
  • [6] 故意又は過失により侵害行為をした者は,その侵害行為により被った損害について商標の所有者に賠償する責を負うものとする。
  • [7] 従業者又は権限のある代表者が営業施設内で侵害行為をした場合は,商標の所有者はその営業施設の所有者に対してその使用の差止命令を求める訴えを起こすことができ,また,従業者又は権限のある代表者が故意又は過失によりその行為をした場合は,営業施設の所有者に対して損害賠償請求をすることもできる。

 第15条 取引上の表示の所有者の排他的権利;差止命令による救済;損害賠償

  • [1] 取引上の表示の保護を取得することにより,その所有者には,排他的権利が与えられるものとする。
  • [2] 第三者は,保護されている取引上の表示と混同を生じさせる虞のある方法で,その表示又は類似の標識を許可なく取引上使用することを禁止されるものとする。
  • [3] 取引上の表示がドイツ連邦共和国において名声を得ているものである場合,[2]の規定にいう混同の虞がないときは,正当な理由なく当該標識を使用することがその取引上の表示の識別性又は名声を不正に利用し又は害するものである場合に限り,第三者は,当該取引上の表示又は類似の標識を取引上使用することを禁止されるものとする。
  • [4] 取引上の表示の所有者は,[2]又は[3]の規定に違反して取引上の表示又は類似の標識を使用する者に対してその使用の差止命令を求める訴えを起こすことができる。
  • [5] 故意又は過失により侵害行為をした者は,それによって被った損害について取引上の表示の所有者に賠償する責を負うものとする。
  • [6] 第14条[7]の規定を準用する。

 第16条 出版物における登録商標の複製

  • [1] 辞書,百科事典又はこれらと類似の出版物における登録商標の複製が,当該商標がその登録に係る商品又はサービスについての普通名称であるとの印象を与える場合は,当該商標の所有者は,その商標の複製と共にそれが登録商標である旨の表示を加えることをそれら出版物の発行者に要求することができる。
  • [2] 当該出版物が既に発行されている場合は,かかる要求は,[1]に規定する表示を当該出版物の次版から付すよう求めることに制限されるものとする。
  • [3] 出版物が電子データベースの形で販売される場合又は出版物を含む電子データベースにアクセスが認められる場合は,[1]及び[2]の規定を準用する。

 第17条 代理人又は代表者に対する請求

  • [1] 第11条の規定に違反し,商標がその所有者の許可を得ないでその所有者の代理人又は代表者の名義で出願又は登録された場合は,商標の所有者は,その代理人又は代表者に対して,商標の出願又は登録により与えられる権利を譲渡するよう要求することができる。
  • [2] 第11条の規定に違反して,商標がその所有者の代理人又は代表者の名義で登録された場合は,商標の所有者は,自己が許可を与えている場合を除いて,その代理人又は代表者が第14条により商標を使用することを差し止めることができる。代理人又は代表者が故意又は過失によりかかる侵害行為をした場合は,それにより被った損害について商標の所有者に賠償する責を負うものとする。第14条[7]の規定を準用する。

 第18条 破棄要求

  • [1] 第14条,第15条及び第17条の規定に該当する場合,商標又は取引上の表示の所有者は,侵害者が所持又は所有している不正に標章を付した製品を破棄するよう要求することができる。ただし,製品の侵害の性質が別の方法で除去され得るものであり,かつ,破棄が個々の場合に侵害者又は所有者にとって不釣合であるときは,この限りでない。
  • [2] [1]の規定は,侵害者が所有する装置であって,かつ,製品に標章を不正に付すためのみに又は主にその目的のためのみに使用され又は使用を意図されているものに準用する。
  • [3] 破棄に関するその他の請求については,本条の規定によって影響されることはない。

 第19条 情報の要求

  • [1] 第14条,第15条及び第17条の規定に該当する場合,商標又は取引上の表示の所有者は,不正に標章を付した製品の出所及び流通経路に関する情報を遅滞なく提供するよう侵害者に要求することができる。ただし,このことが個々の場合に不釣合であるときは,この限りでない。
  • [2] [1]の規定に基づく情報を提供するよう要求された者は,製品の製造者,供給者及びその他の前所有者の名称及び住所,取引上の顧客又は本人の細目のほか,製造,配達,受領若しくは注文された製品の数量についても情報を提供しなければならない。
  • [3] 侵害が明白である場合は,民事訴訟法(Zivilprozessordnung)に基づく差止命令により情報の提供義務を課すことができる。
  • [4] かかる情報は,情報が提供される前に犯された行為に関しては,情報を提供するよう要求された者又は刑事訴訟法(Strafprozessordnung)第52条(1)の規定に該当する者に対する刑事手続又は行政反則法(Gesetz über Ordnungswidrigkeiten)に基づく手続において使用されるときには,情報を提供するよう要求された者の同意を得なければならない。
  • [5] 情報提供に関するその他の請求については,本条の規定によって影響されることはない。

 第4章 保護の制限

 第20条 出訴期限

  • [1] 第14条から第19条までに規定する権利の侵害に対する請求権は,その請求をする者が侵害の事実及び侵害者を知った時から3年後に,また,これらのことを知ったか否かに係わりなく,侵害から30年後に出訴期限法の適用を受けるものとする。
  • [2] 民法(Bürgerliches Gesetzbuch)第852条(2)の規定を準用する。
  • [3] 侵害者が,前記請求を行う者の負担で侵害によって利益を得ている場合は,その侵害者は,出訴期限が終了した後であっても,不当利得の返還に関する規定に従いその利益を返還する責を負うものとする。

 第21条 権利の喪失

  • [1] 商標又は取引上の表示の所有者は,後に登録された商標が使用されていることを知りながら,その使用を継続して5年間黙認していた場合は,その商標が登録されている商品又はサービスについてその登録商標の使用を差し止めることができない。ただし,後の商標が悪意で出願されたものである場合は,この限りでない。
  • [2] 商標又は取引上の表示の所有者は,第4条(2)又は(3)に該当する商標の使用,取引上の表示の使用,又は第13条の規定に該当するその他の後の権利の使用を知りながら,かかる使用を継続して5年間黙認していた場合はその権利の行使を差し止めることができない。ただし,これら後の権利の所有者が悪意で取得したものである場合は,この限りでない。
  • [3] [1]及び[2]に規定する場合,後の権利の所有者は,先の権利の行使を差し止める権利は有さない。
  • [4] [1]から[3]までの規定は,権利の喪失に関する一般原則の適用には影響を及ぼさない。

 第22条 後の商標登録の法的有効性を理由とする請求の排除

  • [1] 後に登録された商標の登録の抹消請求が次の理由により棄却され又は棄却されなければならない場合は,商標又は取引上の表示の所有者は,かかる後の商標が登録されている商品又はサービスについて後の登録商標の使用を差し止めることができない。
    • (1) 後の商標登録の優先順位の関係日に,先の商標又は先の取引上の表示が,第9条[1](3),第14条[2](3)又は第15条[3]に規定される名声を未だ得ていなかったこと(第51条[3])
    • (2) 先の商標の登録が,後の商標登録の公告日に,取消理由又は絶対的拒絶理由のために取り消されるべきものであったこと(第51条[4])
      [2] [1]の規定に該当する場合,後の登録商標の所有者は,先の商標又は先の取引上の表示の使用を差し止める権利を有さない。

 第23条 名称及び記述的表示の使用;部品の取引

商標又は取引上の表示の所有者は,第三者が次の各号に掲げるものを取引上使用することを差し止めることができない。ただし,その使用が容認された道徳原理に反さない場合に限る。

  • (1) 自己の名称又は住所
  • (2) 当該商標又は取引上の表示と同一又は類似の標識であるが,商品又はサービスの特徴又は特性,特に,その種類,品質,用途,価格,原産地,商品の生産時期又はサービスの提供時期を表示しているもの
  • (3) 特に,付属品若しくは部品としての製品又はサービスの意図された用途を示すことが必要な場合,当該の商標又は取引上の表示

 第24条 消尽

  • [1] 商標又は取引上の表示の所有者は,ドイツ連邦共和国において,欧州共同体の構成国である他の国において,又は欧州経済地域に関する条約の締約国である他の国において,当該商標又は取引上の表示の下にその所有者自ら又はその同意により市場に出された商品については,当該商標又は取引上の表示を使用することを差し止めることができない。
  • [2] 商標又は取引上の表示の所有者が,上記のような商品を更なる商取引の対象とすることに異議を唱える正当な理由がある場合,特に,それら商品が一旦市場に出された後に商品の状態に変更若しくは劣化が生じている場合は,[1]の規定は適用しない。

 第25条 不使用を理由とする請求の排除

  • [1] 登録商標の所有者は,請求の根拠となる商品又はサービスについて請求前5年以内に第26条の規定に基づいて当該商標が使用されていない場合は,第14条,第18条及び第19条に定める第三者に対する如何なる請求も行うことができない。ただし,この規定の適用は,当該日に当該商標が少なくとも5年間登録されている場合に限る。
  • [2] 第14条,第18条及び第19条に定める登録商標の侵害を理由とする請求を原告が訴訟により主張した場合は,原告は,被告による反論に応じて,自己の請求の根拠となる商品又はサービスについて訴訟の提起前の5年以内に第26条の規定に基づく当該商標の使用がなされたことを立証しなければならない。ただし,当該日に,商標が少なくとも5年間登録されている場合に限る。訴訟の提起後に5年の不使用期間が終了した場合は,原告は,被告による反論に応じて,口頭審理の終結前の5年以内に第26条の規定に基づいて商標が使用されていることを立証しなければならない。決定に当たっては,使用が立証された商品又はサービスのみが考慮されるものとする。

 第26条 商標の使用

  • [1] 登録商標に基づく請求や登録の維持が商標の使用に依存する限りにおいて,商標所有者は,当該商標を,登録商標の対象である商品又はサービスに関してドイツ連邦共和国において真に使用していなければならない。ただし,不使用について正当な理由がある場合は,この限りでない。
    [2] 所有者の同意を得た商標の使用は,所有者による使用とみなされるものとする。
  • [3] 商標が登録された形態と異なる形態での商標の使用も,その相違する構成部分が当該商標の識別性を害さない限り,当該登録商標の使用とみなされるものとする。第1文は,商標が既に使用されている形態で登録された場合にも適用されるものとする。
  • [4] 商品の輸出目的のためにのみドイツ連邦共和国において商品,その梱包又は包装に商標を付すことも,ドイツ連邦共和国内における商標の使用とみなされるものとする。
  • [5] 登録の日から5年以内の使用が要求される場合において,登録に対する異議が提起されているときには,登録の日は,異議申立手続の終結の日と読み替えられるものとする。

 第5章 所有権の対象としての商標

 第27条 移転

  • [1] 商標の登録,使用又は著名性により与えられる権利は,その商標が保護されている商品又はサービスの一部若しくは全部に関して他の者に移転又は譲渡することができる。
  • [2] 商標が営業施設又は営業施設の一部に関係するとき,商標が関係している営業施設又は営業施設の一部の移転又は譲渡は,不確かな場合には,当該商標の登録,使用又は著名性に基づく権利の移転も含むものとする。
  • [3] 商標の登録により与えられる権利の譲渡は,その譲渡が特許庁に対し立証された場合は,関係当事者の1人の請求により,登録簿に登録されるものとする。
  • [4] 権利の移転が商標の登録に係る商品又はサービスの一部のみに関係するものである場合は,移転の登録請求とともに,料金表に規定する手数料を納付しなければならない。手数料が納付されない場合は,その請求は提出されなかったものとみなされる。その他の点においては,登録の分割に関する規定が,第46条[2]及び[3]の第1文から第3文までを除いて準用される。

 第28条 権利の所有者であることの推定;所有者への送達

  • [1] 所有者として登録簿に登録された者は,商標の登録により与えられる権利を有するものと推定される。
  • [2] 商標の登録により与えられる権利が第三者に譲渡又は移転された場合は,権利の承継人は,特許庁での手続,特許裁判所での抗告手続又は連邦司法裁判所での法律抗告手続において,移転の登録請求が特許庁に受理された日からのみ,その商標の保護のための請求をすることができ,かつ,登録により与えられる権利を主張することができる。第1文の規定は,所有者が当事者となるその他の特許庁における手続,特許裁判所における抗告手続及び連邦司法裁判所における法律抗告手続に準用する。
  • [3] 商標の所有者に送達すべき特許庁の命令及び決定は,所有者として登録された者に送達されるものとする。移転の登録請求が特許庁に受理された場合は,第1文にいう命令及び決定は,その権原ある承継人にも送達されるものとする。

 第29条 対物的権利;強制執行による差押;破産手続

  • [1] 商標の登録,使用又は著名性により与えられる権利は,
    • (1) 担保に供し若しくは他の対物的権利の対象とすることができ,又は
    • (2) 強制執行により差し押さえることができる。
  • [2] [1](1)に規定する権利又は[1](2)に規定する処置は,それらが商標の登録により与えられる権利に関係する場合であって,特許庁に対し立証されたときには,当事者の1人による請求に基づき登録簿に登録されるものとする。
  • [3] 商標の登録により与えられる権利が破産手続に含まれている場合は,破産管財人又は破産裁判所の請求により,その旨登録簿に登録される。自己財産管理(破産法(Insolvenzordnung)第270条)に関しては,管理者は破産管財人の代わりに行為する。

 第30条 ライセンス許諾

  • [1] 商標の登録,使用又は著名性により与えられる権利は,商標が保護されている商品又はサービスの一部又は全部について,及び,ドイツ連邦共和国の全域又は一部地域について排他的若しくは非排他的ライセンスの対象とすることができる。
  • [2] 商標の所有者は,次の事項に関して,そのライセンス許諾契約の規定に違反する使用権者に対し,当該商標に基づく権利を主張することができる。
    • (1) ライセンスの期間
    • (2) 商標を使用することができる登録による形態
    • (3) ライセンスが与えられる商品又はサービスの種類
    • (4) 商標を使用することができる地域,又は
    • (5) 使用権者が製造する商品又は提供するサービスの品質
  • [3] 使用権者は,商標の所有者が同意した場合に限り,商標の侵害に対する訴訟を提起することができる。
  • [4] 何れの使用権者も,自己が被った損害について賠償を受けるために,商標の所有者によって提起された侵害訴訟に参加することができる。
  • [5] 第27条の規定に基づく権利の移転又は[1]の規定に基づくライセンスの付与は,それ以前に第三者に与えられているライセンスに影響を及ぼさないものとする。

 第31条 商標出願

第27条から第30条までの規定は,商標出願によって与えられる権利に準用する。

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