ドイツ 商標法 3
第3部 商標に関する事項の手続
第1章 登録手続
第32条 出願要件
- [1] 登録簿への商標の登録出願は,特許庁に対して行わなければならない。
- [2] 出願には,次のものが提出されなければならない。
- (1) 出願人を特定する情報
- (2) 商標の複製,及び
- (3) 登録が求められている商品又はサービスの一覧
- [3] 出願は,第65条[1](2)の規定に基づく法令に定める他の出願要件を満たさなければならない。
- [4] 出願とともに,料金表に規定する手数料を納付しなければならない。商品又はサービスの分類の3以上の類に分類される商品又はサービスについて登録が求められている場合は,料金表に規定する手数料を追加の各類毎に納付しなければならない。
第33条 出願日;登録に対する権利;出願の公告
- [1] 商標の出願日は,第32条[2]の規定に規定する情報を含む書類が特許庁に受理された日とする。
- [2] 出願日が付与された商標出願は,登録を受ける権利が生ずるものとする。登録出願は,出願要件が満たされていないか又は絶対的拒絶理由により登録が拒否されない限り,許可されるものとする。
- [3] 出願日を付与された商標出願は,出願人を特定する情報と共に公告される。
第34条 外国出願による優先権
- [1] 先の外国出願に基づく優先権の主張は,パリ条約に基づく優先権がサービスについても主張できることを条件として,国際協定の規定によって決定されるものとする。
- [2] 優先権の承認に関する国際協定によって拘束されない国に先の外国出願がされた場合は,連邦法務省による連邦法律官報での告示後に,当該外国が,必要条件及び内容においてパリ条約に基づく優先権に相当する優先権を,特許庁にした先の出願に対して与えている場合に限って,出願人はパリ条約に基づくものに相当する優先権を主張することができる。
- [3] [1]又は[2]の規定に基づき優先権を主張する者は,出願日から2月以内に先の出願の日付及び国を示さなければならない。出願人がこれらの細目を提供した場合は,特許庁は,出願人に通知を出し,その通知から2月以内に,先の出願の番号を表示し,かつ,その出願書類の写を提出するよう求める。提供された細目は,これらの期間内に修正することができる。細目が相応の期間内に提供されない場合は,その出願についての優先権主張は失権する。
第35条 博覧会による優先権
- [1] 商標の出願人は,出願に係る商標の下に商品又はサービスを次に掲げる博覧会に展示した場合は,出願に係る商標の下に商品又はサービスを最初に展示した日から6月以内に出願することを条件として,第34条に規定する優先権をその日から主張することができる。
- (1) 1928年11月22日にパリで署名された国際博覧会に関する条約に定める条件内の公の又は公に認められた国際博覧会
- (2) ドイツ連邦共和国又は外国におけるその他の博覧会
- [2] [1](1)に規定する博覧会は,連邦法務省によって連邦法律官報に告示される。
- [3] [1](2)にいう博覧会は,連邦法律官報中の博覧会の保護に関する告示において連邦法務省によってそれぞれの場合に指定される。
- [4] [1]の規定に基づき優先権を主張する者は,出願日から2月以内に,商標の最初の展示の日及びその博覧会を示さなければならない。出願人がこれらの細目を提供した場合は,特許庁は出願人に通知を出し,その通知から2月以内に,出願に係る商標の下に商品又はサービスが展示されたことを立証する証拠を提出するよう求める。証拠が相応の期間内に提供されない場合は,その出願についての優先権主張は失権するものとする。
- [5] [1]の規定に基づく博覧会による優先権は,第34条に規定する優先権の期間を延長するものではない。
第36条 出願要件の審査
- [1] 特許庁は,次の事項について審査する。
- (1) 商標出願が,第33条[1]の規定に従い出願日の付与についての要件を満たしているか否か
- (2) 出願がその他の出願要件を満たしているか否か
- (3) 第32条[4]の規定に基づく手数料が納付されているか否か,及び
- (4) 出願人が第7条の規定に基づき商標の所有者となり得る者であるか否か
- [2] [1](1)の規定に基づき確認された欠陥が,特許庁が定める期間内に是正されない場合は,出願はされなかったものとみなされる。出願人が特許庁の要求に応じた場合は,特許庁は,確認された欠陥が是正された日を出願日として認定する。
- [3] 手数料が納付されない場合は,特許庁は通知書を送達し,その送達日から1月以内に料金表に規定する手数料及び割増手数料が納付されない限り,出願が取り下げられたものとみなす旨を出願人に告知する。この期間内に,出願料及び割増手数料が納付されたが必要な分類手数料が納付されない場合,納付された手数料の額によって対象とされるべき商品又はサービスの類を出願人が表明したときは,第1文は適用しないものとする。かかる表明がない場合は,主な類が最初に考慮され,続いて類の区分に従って別の類が考慮されるものとする。
- [4] 特許庁が定める期間内に他の欠陥が是正されない場合は,特許庁は出願を拒絶する。
- [5] 出願人が第7条の規定に基づき商標の所有者となり得る者でない場合は,特許庁は出願を拒絶する。
第37条 絶対的拒絶理由に関する審査
- [1] 第3条,第8条又は第10条の規定に基づき,商標が登録適格を有していない場合は,出願は拒絶されるものとする。
- [2] 出願日(第33条[1])においては商標が第8条[2](1),(2)又は(3)の要件を満たしていないが,拒絶理由が出願日後に消滅したことが審査により明らかになった場合は,出願は拒絶されないものとする。ただし,本来の出願日及び第34条又は第35条の規定に基づき主張された優先権に関係なく,拒絶理由の消滅した日が,出願日とみなされ,かつ,第6条[2]にいう優先順位を決定するための決め手になるということに,出願人が同意した場合に限る。
- [3] 第8条[2](4)に該当する出願は,欺瞞の虞が明白な場合にのみ拒絶されるものとする。
- [4] 出願は,先の商標の著名性が特許庁に知られている場合,及び第9条[1](1)又は(2)の規定に基づくその他の前提条件が満たされている場合にのみ,第10条の規定に基づき拒絶されるものとする。
- [5] [1]から[4]までの規定は,商標がその出願に係る商品又はサービスの一部のみについて登録適格を有していない場合に,準用する。
第38条 早期審査
- [1] 第36条及び第37条の規定に基づく審査は,出願人の請求がある場合は,早期に行われるものとする。
- [2] 早期審査の請求には,料金表に従い手数料を納付しなければならない。この手数料が納付されない場合は,その請求はされなかったものとみなされる。
第39条 出願の取下,限定及び訂正
- [1] 出願人は,いつでも出願を取り下げ又は出願に含まれる商品若しくはサービスの一覧を限定することができる。
- [2] 出願の内容は,出願人の請求に基づき,用語若しくは印字上の誤り,又はその他の明白な誤謬を訂正することによって修正することができる。
第40条 出願の分割
- [1] 出願人は,分割の宣言にいう商品及びサービスについて,商標出願がそのとき以降分割出願として取り扱われるべき旨を宣言することにより出願を分割することができる。元の出願の優先順位は,分割出願の各部分について引き続き適用されるものとする。
- [2] 第32条に規定される出願の構成要素は,分割出願についても提出されなければならない。更に,分割については,料金表に規定する手数料が納付されなければならない。出願の構成要素が分割の宣言の受理から3月以内に提出されない場合又はこの期間内に手数料が納付されない場合は,分割出願は取り下げられたものとみなされる。分割の宣言は,取り消すことができない。
第41条 登録
出願が,出願要件を満たし,かつ,第37条の規定に基づき拒絶されない場合は,当該商標は登録簿に登録されるものとする。登録は公告されるものとする。
第42条 異議申立
- [1] 先の商標の所有者は,第41条の規定に基づく商標の登録の公告日から3月以内に,その商標の登録に対し異議の申立をすることができる。
- [2] 異議は,次に掲げる何れかの商標により商標登録を取り消し得るとの理由に基づいてのみ提起することができる。
- (1) 第9条[1](1)又は(2)の規定に基づき先に出願若しくは登録された商標
- (2) 第9条[1](1)又は(2)の規定に関連して, 第10条に規定される先の周知商標,又は
- (3) 第11条の規定に基づく商標の所有者の代理人又は代表者についての商標の登録
- [3] [1]に規定する期間内に料金表に規定する手数料を納付しなければならない。かかる期間内に手数料が納付されない場合は,異議は申し立てられなかったものとみなされる。
第43条 不使用の抗弁;異議についての決定
- [1] 先の登録商標の所有者が異議の申立をした場合において,相手方当事者が当該商標の使用を争ったときは,異議申立人は,自己の先の商標登録が異議申立の対象たる商標登録の公告より5年間以上前になされている場合に限り,かかる公告前5年の期間内に自己の当該登録商標を第26条の規定に基づき使用したことを一応の証拠によって実証しなければならない。不使用の5年の期間が登録の公告後に満了する場合は,異議申立人は,他方当事者が使用を争ったときは,異議申立についての決定の前5年間に自己の先の登録商標を第26条の規定に基づき使用したことを一応の証拠によって実証しなければならない。その決定においては,一応の証拠によって使用が実証された商品又はサービスのみが考慮されるものとする。
- [2] 異議の審査において,商標がその登録に係る商品又はサービスの一部又は全部について取り消されるべきことが明らかになった場合は,その登録は全部又は一部について取り消されるものとする。商標の登録を取り消すことができない場合は,異議の申立は棄却されるものとする。
- [3] 商標登録が2以上の先の商標のため取り消されるべきである場合は,商標の登録に関する1の決定が確定するまで,それ以上の異議申立に関する手続は一時停止することができる。
- [4] [2]の規定による取消の場合には,第52条[2]及び[3]を準用する。
第44条 登録の付与を求める訴訟
- [1] 商標の所有者は,登録の取消にも拘らず,異議申立人に対して,訴訟を提起することにより,第43条の規定に基づいて自己が登録を請求する権利を有することを主張することができる。
- [2] [1]の規定に基づく訴訟は,登録を取り消す決定が確定した後6月以内に提起しなければならない。
- [3] 商標の所有者に有利な決定に基づく登録は,登録の優先順位を保持する限り,記録されるものとする。
第2章 訂正;分割;保護の期間及び更新
第45条 登録簿及び公告の訂正
- [1] 登録簿の登録事項は,請求に基づき又は職権により,用語若しくは印字の誤り又はその他の明白な誤謬を訂正することにより修正できる。訂正によって影響を受ける登録が公告されている場合は,訂正された登録も公告されるものとする。
- [2] [1]の規定は,公告の訂正に準用する。
第46条 登録の分割
- [1] 登録商標の所有者は,商標登録が分割の宣言にいう商品又はサービスについてその時以降分割登録として存続されるべきことを宣言することにより,登録を分割することができる。元の登録の優先順位は,分割登録の各部分について引き続き適用されるものとする。
- [2] 分割は,異議申立期間の満了後にのみ宣言することができる。この宣言は,その宣言時に係属している商標登録に対する異議の申立又は商標登録の取消訴訟が,分割後に,もとの登録の一部についてのみ提起されている場合に,専ら許容されるものとする。
- [3] 分割登録については,必要な書類を提出しなければならない。更に,分割については,料金表に規定する手数料を納付しなければならない。分割の宣言の受領後3月以内に,書類が提出されないか又は手数料が納付されない場合は,当該分割登録の申立は放棄されたものとみなされる。分割の宣言は,取り消すことができない。
第47条 保護の期間及び更新
- [1] 登録商標の保護の期間は,出願日に始まり(第33条[1])その出願日が属する月の末日後10年間で終了する。
- [2] 保護の期間は,更に続く10年の期間について更新することができる。
- [3] 保護の期間は,更新料の納付により,また,商品及びサービスの分類の3以上の類に渡る商品及びサービスについて更新が請求されている場合は,各追加の類について料金表に規定する分類手数料を納付することにより,更新されるものとする。手数料は,保護の期間の最終日までに納付しなければならない。納付は,手数料の納付期限前の1年以内に行うことができる。納付期限までに手数料が納付されない場合は,特許庁は当該登録商標の所有者に通知を与え,当該通知の送達があった月の末日後6月以内に所定手数料と料金表に規定される割増手数料を納付しない限り,商標登録が取り消される旨を告げるものとする。
- [4] 商標が登録されている商品又はサービスの一部のみについて手数料が納付された場合は,保護の期間は,その一部の商品又はサービスについてのみ更新されるものとする。[3]の第4文にいう6月の期間内に,更新料及び割増手数料のみが納付され,必要な分類手数料が納付されないときは,保護の期間は,第1文が適用される場合を除いて,手数料の納付額が及ぶ範囲での商品又はサービスの分類の当該類についてのみ更新されるものとする。主な類がある場合は,それが最初に考慮されるものとする。その余の類については,分類の順序に従い考慮されるものとする。
- [5] 保護の期間の更新は,保護の期間が満了した日の翌日から効力を生ずる。その更新は,登録簿に登録されかつ公告されるものとする。
- [6] 保護の期間が更新されない場合は,商標の登録は,保護の期間の満了日から取り消されるものとする。
第3章 放棄,取消及び無効;抹消手続
第48条 放棄
- [1] 商標の登録は,所有者の請求に基づき,その登録に係る商品又はサービスの一部又は全部について登録簿からいつでも抹消されるものとする。
- [2] 登録は,登録簿に登録された商標に対する権利の所有者の同意を得たときにのみ抹消される。
第49条 取消
- [1] 商標の登録は,登録日後,当該商標が継続して5年間,第26条の規定に従う使用がされていない場合は,取消事由による請求に基づき抹消されるものとする。ただし,当該5年の期間が満了してから抹消請求がされるまでの間に第26条の規定に従い商標の使用が開始又は再開された場合は,何人も,商標所有者の権利が取り消されるべきことを主張することができない。もっとも,不使用の継続した5年の期間の満了後であって抹消請求前3月以内に開始又は再開された使用は,抹消請求がされるかもしれないことを商標の所有者が知った後にのみその開始又は再開の準備をしたものである場合は,無視されるものとする。第53条[1]の規定に基づき特許庁に抹消請求がされた場合は,特許庁にされたその請求は,第3文にいう3月の期間の計算についての決め手となるものとする。ただし,第53条[4]の規定に基づく通知の送達後3月以内に,第55条[1]の規定に基づく登録取消訴訟が提起されることを条件とする。
- [2] 商標の登録は,次の場合にも,取消事由による請求に基づき抹消されるものとする。
- (1) 所有者の行為又は不作為の結果,商標がその登録に係る商品又はサービスについて取引上の普通名称となっている場合
- (2) 商標の所有者により又はその同意により商標がその登録に係る商品又はサービスについて使用された結果,その商標が,特に商品又はサービスの種類,性質又は原産地について,公衆を誤認させる虞がある場合
- (3) 商標の所有者がもはや第7条に規定する要件を満たさない場合
- [3] 商標が登録されている商品又はサービスの一部のみについて取消理由がある場合は,登録は,その一部の商品又はサービスについてのみ抹消されるものとする。
第50条 絶対的拒絶理由による無効
- [1] 商標の登録は,次の場合は,無効事由による請求に基づき抹消されるものとする。
- (1) それが第3条の規定に違反して登録された場合
- (2) それが第7条の規定に違反して登録された場合
- (3) それが第8条の規定に違反して登録された場合,又は
- (4) 出願人が悪意で商標出願をしていた場合
- [2] 商標が第3条,第7条又は第8条の規定に違反して登録された場合には,登録は,取消請求についての決定がされる時になお拒絶理由が存在しているときにのみ,抹消することができる。更に,商標が第8条[2](1),(2),又は(3)の規定に違反して登録された場合には,登録は,登録日から10年以内に取消請求がされたときにのみ,抹消することができる。
- [3] 商標の登録は,それが第8条[2](4)から(9)までの規定に違反して登録されており,かつ,次の条件が満たされる場合は,職権により抹消することができる。
- (1) 抹消手続が登録日から2年以内に開始されること
- (2) 抹消についての決定がされる日になお拒絶理由が存在していること,及び
- (3) 登録が明らかに当該規定に違反していること
- [4] 商標が登録されている商品又はサービスの一部についてのみ無効理由がある場合は,登録は,それらの商品又はサービスについてのみ抹消されるものとする。
第51条 先の権利による無効
- [1] 商標の登録は,それが第9条から第13条までの規定による優先順位の権利によって損なわれる場合には,無効事由による訴訟の提起により,取り消されるものとする。
- [2] 先の登録商標の所有者が,後の商標がその登録に係る商品又はサービスについて使用されていることを知りながら,その使用を継続して5年間黙認していた場合は,先の商標の登録を理由として,登録を取り消すことはできない。ただし,後の商標の登録が悪意で出願されたものである場合は,この限りでない。 同様のことは,優先順位を有しかつ第4条(2)にいう使用により取得された商標,第4条(3)にいう広く認識されている商標,第5条にいう取引上の表示,又は第13条[2](4)にいう植物品種名に関する権利の所有者に適用されるものとする。更に,第9条から第13条までに規定する優先順位を有する権利の所有者が,取消請求の提出前に商標の登録に同意していた場合は,商標の登録は取り消すことができない。
- [3] 後の商標登録の優先順位に関係する日に,商標又は取引上の表示が第9条[1](3),第14条[2](3)又は第15条[3]の意味での名声を得ていない場合には,名声を得ている先の商標若しくは名声を得ている先の取引上の表示を理由として,登録を取り消すことはできない。
- [4] 後の商標の登録の公告日に,次の理由により先の商標の登録が取り消され得るものであった場合には,先の商標の登録を理由として登録を取り消すことはできない。
- (1) 第49条の規定に基づく取消,又は
- (2) 第50条の規定に基づく絶対的拒絶理由
- [5] 商標が登録されている商品又はサービスの一部についてのみ無効理由がある場合は,登録はそれらの商品又はサービスについてのみ取り消されるものとする。
第52条 取消又は無効を理由とする取消の効果
- [1] 商標登録が取消事由の存在により何らかの範囲で取り消された場合,登録の効果は取消訴訟の提起の時点から当該の範囲において消滅したものとみなされる。ただし,関係当事者の1人が請求する場合,取消事由の1つが生じた先の日を決定において定めることができる。
- [2] 商標登録が無効事由の存在により何らかの範囲で取り消される場合,登録は当該の範囲において最初から無効であったものとみなされる。
- [3] 商標の所有者の過失若しくは故意による行為から生じた損害の賠償に関する規定又は不当利得に関する規定の何れかに従うことを条件として,商標登録の取消は,次のものには影響を及ぼさない。
- (1) 侵害手続において最終決定として是認された決定であって,取消請求に関する決定前に実行されたもの
- (2) 取消請求に関する決定前に締結された契約であって,その決定前に履行されたもの。ただし,関係する契約に基づき支払われた金額は,状況により正当とされる範囲内において,公正に返還されることを要求することができる。
第53条 取消事由を理由とする特許庁による取消
- [1] 第55条の規定に基づく訴訟により登録取消を求める権利とは関係なく,取消事由に基づく商標登録の抹消請求(第49条)は特許庁に提出することができる。
- [2] 特許庁は,登録商標の所有者に対し当該請求を通知し,その所有者が取消請求に対して異議を述べるか否かを特許庁に知らせるよう求めるものとする。
- [3] 登録商標の所有者がこの通知の送達から2月以内に抹消に対して異議を申し立てない場合は,登録は取り消されるものとする。
- [4] 登録商標の所有者が取消に対して異議を申し立てた場合は,特許庁は,請求をした者にそのことを通知し,かつ,第55条の規定に基づき訴訟を提起することにより取消請求をしなければならないことを通知する。
第54条 絶対的拒絶理由による特許庁における取消手続
- [1] 絶対的拒絶理由を理由とする登録商標の取消請求(第50条)は,特許庁に提出しなければならない。何人も,この請求をすることができる。
- [2] 請求と共に,料金表に規定する手数料を納付しなければならない。この手数料が納付されない場合は,請求は提出されなかったものとみなされる。
- [3] 取消請求がなされた場合又は職権により取消手続が取られた場合は,特許庁は,登録商標の所有者にその旨通知する。登録商標の所有者がこの通知の送達から2月以内に取消に対する異議を申し立てない場合は,登録は取り消されるものとする。登録商標の所有者が取消に対して異議を申し立てた場合は,取消手続が進められるものとする。
第55条 通常裁判所に対する取消手続
- [1] 取消事由(第49条)又は先の権利(第51条)を理由とする取消請求訴訟は,商標の所有者として登録された者又はその権原ある承継人に対して提起しなければならない。
- [2] 次の者は,訴訟を提起することができる。
- (1) 取消請求が取消事由を理由として提出される場合は,何人も
- (2) 取消請求が優先順位を有する権利を理由として提出される場合は,第9条から第13条までに規定する権利の所有者
- (3) 取消請求が優先順位を有する原産地表示(第13条[2](5))を理由として提出される場合は,不正競争禁止法(Gesetz gegen den unlauteren Wettbewerb)第13条(2)の規定に基づき請求することができる者
- [3] 取消訴訟が先の登録商標の所有者によって提起された場合において,被告が異議を申し立てたときは,その所有者は訴訟の提起前の5年間に先の登録商標が第26条の規定に基づき使用されていることを立証しなければならない。ただし,その先の商標がその日に5年以上登録されている場合に限る。訴訟の提起後に,不使用の5年の期間が満了する場合は,原告は,被告が異議を申し立てたときは,口頭審理の終結前の5年間に先の商標が第26条の規定に基づき使用されていることを立証しなければならない。後の商標の登録の公告日に,先の商標が5年以上の期間登録されていた場合において,被告が異議を申し立てたときは,原告はまた,その日に,先の商標の登録が第49条[1]に基づいて取り消されるべきものでなかったことも立証しなければならない。決定においては,使用が立証された商品又はサービスのみが考慮されるものとする。
- [4] 訴訟の提起前又は後に,商標の登録に基づく権利が他の者に移転又は譲渡された場合は,本案に関する決定は,権原ある承継人に対しても効力を有し,かつ実行することができる。訴訟手続の当事者となる権原ある承継人の権利については,民事訴訟法第66条から第74条まで及び第76条の規定を準用する。
第4章 特許庁に対する手続に関する一般規定
第56条 権限
- [1] 商標に関する問題についての手続を実施するために,特許庁に商標課及び商標部門を設ける。
- [2] 商標課は,商標出願の審査をし,登録手続における決定をする権限を有する。商標課の職務は,特許庁の構成員(審査官)によって遂行されるものとする。その職務は,上級中間職の行政事務官又はこれに準じる職員によっても遂行されることができる。ただし,上級中間職の行政事務官又はこれに準じる職員は,宣誓に基づき証拠事実を述べるよう命ずること,宣誓を執行すること,又は特許裁判所に第95条[2]の規定に基づく請求をすることについては権限を有さない。
- [3] 商標部門は,商標課の責任の範囲外にある問題について権限を有する。1つの商標部門の職務は,少なくとも特許庁の3人の職員により遂行されるものとする。商標部門の長は,第54条の規定に基づく商標の取消に関する決定を除き,商標部門の権限に属するすべての問題を単独で処理することができ,また,商標部門の構成員にこれらの問題を委任することができる。
第57条 除斥及び忌避
- [1] 審査官及び商標部門の構成員,並びに商標課又は商標部門の権限内の問題の処理を委任される上級及び下級中間職の行政事務官又はこれに準じる職員の除斥及び忌避については,裁判所の構成員の除斥及び忌避に関する民事訴訟法第41条から第44条まで,第45条(2)の第2文及び第47条から第49条までの規定を準用する。
- [2] 忌避の請求(Ablehnungsgesuch)についての決定は,それが求められる限り,商標部門によってなされるものとする。
第58条 鑑定意見
- [1] 訴訟手続において専門家の意見が分かれる場合,特許庁は,裁判所又は州検事局の請求により,出願に係る商標又は登録商標に関する問題について鑑定意見を提出するよう求められるものとする。
- [2] その他の点においては,特許庁は,法令で定めるその業務の範囲外の事項について,連邦法務省の許可なく決定をし又は鑑定をする権限を有さない。
第59条 事実の調査;聴取される権利
- [1] 特許庁は,事件の事実を職権により調査する。この調査は,当事者の事実に基づく陳述書及び証拠の提出に拘束されないものとする。
- [2] 特許庁の決定が,商標の出願人若しくは所有者又はその他手続の当事者に通知されなかった事情に基づくものである場合は,当該当事者には,所定の期間内に自己の意見を述べる機会が与えられるものとする。
第60条 事実の調査;聴聞;調書
- [1] 特許庁は,いつでも関係当事者を召喚し審問することができ,宣誓の上又は宣誓をさせずに証人,専門家及び関係当事者を尋問することができ,並びに問題を明らかにするために必要なその他の調査をすることができる。
- [2] 手続の結論を下す決定が行われるまでは,適切な場合,請求に基づき,商標の出願人若しくは所有者又はその他の関係当事者に聴聞の機会を与えるものとする。特許庁は,かかる聴聞が適切でないと判断する場合は,その請求を拒絶する。請求を拒絶する決定は,中間控訴の対象とはならないものとする。
- [3] 聴聞及び証人尋問については調書が取られるものとし,それらは訴訟手続の不可欠な要素を再現するものとなり,かつ関係当事者の法的に重要な陳述を含むものとする。これら調書については,民事訴訟法第160a条,第162条及び第163条の規定を準用する。当事者は調書の写しを受領する。
第61条 決定;抗告権に関する情報
- [1] 特許庁の決定は,その理由を含むものとし,それが第2文に従い下された場合であっても,書面により行われ,すべての関係当事者に職権で送達されるものとする。聴聞が行われた場合は,決定は,聴聞の終わりに下すこともできる。商標の出願人又は所有者のみが当事者であって,かつ,その請求が容認される場合は,理由の記載は必要とされない。
- [2] 書面による決定を行う場合,それと共に,決定に対して許されている抗告,抗告が提起されるべき当局,抗告を提起する期限,及び抗告の手数料を納付することになっているときはその手数料の情報を関係当事者に与える供述を伴うものとする。抗告の提起期間は,これらの情報を関係当事者が書面によって与えられた時からのみ開始するものとする。関係当事者にこれらの情報が与えられなかったとき又は不正確な情報が与えられたときは,抗告が許されない旨の書面による情報が与えられている場合を除いて,かかる当事者は決定の送達の時から1年以内にのみ抗告を提起することができる。この場合,第91条の規定が準用される。第1文から第4文までの規定は,第64条の規定に基づく不服申立の法的救済に準用される。
第62条 ファイルの閲覧;登録簿の閲覧
- [1] 特許庁は,自己の正当な利害関係を一応の証拠によって実証した者に対して,その者の請求に基づき,商標出願のファイルの閲覧を許可する。
- [2] 商標の登録後は,その登録商標に関するファイルは,請求により,閲覧することができる。
- [3] 何人も,自由に登録簿を閲覧することができる。
第63条 手続費用
- [1] 複数の当事者が手続に関与している場合は,特許庁は,それが公平であるときは,特許庁の費用及び当事者が被った費用を含む手続費用の全部又は一部を,それらが主張及び権利の適切な擁護のために必要であった範囲において,当事者の1人に負担させるべき旨を決定することができる。かかる決定は,不服申立,商標出願,異議申立,又は登録取消請求が全部若しくは一部について取り下げられ,又は商標登録が放棄若しくは保護期間の非更新により全部若しくは一部について登録簿から取り消された場合にも行うことができる。費用に関する決定が行われない限り,各当事者は,自己が被った費用を個々に負担しなければならない。
- [2] 特許庁は,異議申立又は登録取消請求の手数料について,それが公平である場合,その限りにおいて,その全部又は一部を返還する命令を発することができる。
- [3] 返還すべき費用の額は,請求により,特許庁が決定する。これについては,費用額の査定及びその決定の実施手続に関する民事訴訟法の規定を準用する。費用額査定の決定に対しては,不服申立に代えて,抗告がなされるものとする。かかる抗告については,2週間以内に抗告を提起すること及び抗告の手数料を無料とすることの条件の下に,第66条の規定を適用する。執行可能な決定謄本が,特許裁判所の登録官によって発行される。
第64条 不服申立(Erinnerung)
- [1] 上級中間職の行政事務官又はこれに準じる職員によって行われた商標課及び商標部門の決定に対しては,不服申立を行うことができる。不服申立は,中止の効果を有するものとする。
- [2] 不服申立は,当該決定の送達後1月以内に特許庁に提出しなければならない。
- [3] 係争中の決定をした行政事務官又はこれに準じる職員は,不服申立に十分な理由があるものとみなす場合は,その決定を修正する。このことは,不服申立をした当事者が手続における他の当事者によって異議を申し立てられている場合には,適用されないものとする。
- [4] 不服申立に関する決定は,特許庁の構成員によって行われるものとする。
- [5] 第66条[3]の規定に基づく抗告が提起された後は,不服申立に関する決定はもはや行うことができない。この規定に拘らず,不服申立に関する決定が抗告の提起された後になされた場合は,かかる決定は不適法なものとみなされる。
第65条 法律上の命令を発する権限
- [1] 連邦法務省は,連邦議会(Bunderstrat)の承諾を得ることなく,法律上の命令により,次に掲げる事柄を行う権限を有する。
- (1) 商標問題における特許庁の組織と業務手続を規定すること
- (2) 商標出願に関する追加的要件を定めること
- (3) 商品及びサービスの分類を決定すること
- (4) 審査,異議申立及び取消の手続に関する細則を作成すること
- (5) 登録商標についての登録簿に関する規定及び,適切な場合は,団体標章の登録簿に関する別個の規定を作成すること
- (6) 登録簿に登録すべき登録商標に関する情報を規定し,その情報の範囲及び情報の公告方法を決定すること
- (7) 本法に定める特許庁におけるその他の手続,特に,出願及び登録の分割の手続,情報の提供又は証明に関する手続,権利回復に関する手続,ファイルの閲覧に関する手続,商標の国際登録の保護に関する手続,並びに共同体商標の転換に関する手続についての規定を作成すること
- (8) 電子的データ伝送による請求及び提案の送付を含めて,商標問題に関する請求及び提案を提出するための様式についての規定を作成すること
- (9) 電子的データ伝送による送付を含めて,関係当事者に送付される商標問題に関する特許庁の決定,オフィス・アクションその他の通知について必要とされる様式を決定する規定を作成すること。ただし,特別の送付様式が法令によって定められている場合は,この限りでない。
- (10) ドイツ語以外の言語による商標問題に関する提案及び書類を斟酌すべき場合及びそのための前提条件を決定する規定を作成すること
- (11) 性質上特別な法的困難性を伴わない商標部門の権限内の事項を処理することを上級中間職の行政事務官又はこれに準じる職員に委任すること。
ただし,商標登録の取消に関する決定(第48条[1],第53条及び第54条),鑑定意見の提供(第58条[1])及び専門家の鑑定意見の提供を拒否する決定を除く。
- (12) 性質上特別な法的困難性を伴わない商標課又は商標部門の権限内の事項を処理することを下級中間職の行政事務官又はこれに準じる職員に委任すること。ただし,出願,異議申立又はその他の請求に関する決定を除く。
- (13) 法令により規定されていない範囲において,特許庁に提起された請求の費用を賄うために行政手数料の徴収を規定すること。特に,
- (a) 証明,認証,ファイルの閲覧及び情報の提供について手数料及び費用を徴収すべきことを命ずること
- (b) 納付義務者,納付期日,前払義務,納付の免除,出訴期限,並びに費用決定のための規則及び手続に関する規則を定めること
- (14) 第33条[3]の公告に含められるべき細目を規定すること,及びこれら細目の公告方法を規定すること
- [2] 連邦法務省は,[1]の規定に基づき法規命令を発する権限を,連邦議会の承諾を得ることなく,法規命令によって特許庁長官に全部又は一部,委任することができる。
第5章 特許裁判所における手続
第66条 抗告
- [1] 商標課及び商標部門の決定は,不服申立(第64条[1])がなされていない限りにおいて,特許裁判所に対する抗告に服する。抗告は,特許庁における関係手続の当事者が提起することができる。抗告は,中止の効果を有する。
- [2] 抗告の申立は,当該決定の送達後1月以内に特許庁に提出しなければならない。
- [3] 第64条の規定に基づく不服申立に関する決定がその申立の日から6月以内に行われない場合,及び不服申立をした者がこの期間の満了後に決定の請求を行った場合には,商標課又は商標部門の決定に対する抗告は,不服申立に関する決定がその請求の受理から2月以内に行われないときは,[1]の第1文の規定は適用されず,直ちに認められる。不服申立をした者に対して,当該手続の他の当事者が対抗している場合には,第1文は,不服申立がなされた日から6月の期間を10月の期間と置き替えるという条件で適用されるものとする。手続における他の当事者も不服申立をしている場合には,当該他の当事者は,第2文に基づく抗告に対し同意しなければならない。書面による同意の宣言を抗告に添付しなければならない。手続における他の当事者が,[4]の第2文の規定に基づく抗告状の送達後1月以内に,抗告を提起しない場合は,その者がした不服申立は取り下げられたものとみなされる。第1文及び第2文の規定に基づく残存期間は,手続が中止されている場合又は手続における当事者の1人の請求により期間の延長が認められている場合は,進行が中断される。第1文及び第2文に規定する残存期間は,中止が終了した後又は与えられた期間が満了した後に進行を再開する。不服申立に関する決定が行われた後には,第1文及び第2文の規定に基づく抗告はもはや行うことができない。
- [4] 抗告状及び陳述書の写しについてはすべて,他の当事者用の写しを添付しなければならない。抗告状及び当該問題に関係する動議を含む書面によるすべての陳述書,又は抗告若しくは動議の取下の宣言は,他の当事者に職権により送達されるものとする。その他の書類は,職権による送達が命じられない限り,当該者に非公式に通知されるものとする。
- [5] 抗告については,料金表に規定する手数料を納付しなければならない。[1]の規定に基づく抗告の手数料が[2]に定める期間内に納付されない場合,又は[3]の規定に基づく抗告の手数料が抗告の受理後1月以内に納付されない場合は,抗告は提起されなかったものとみなされる。
- [6] 抗告の対象である決定を行った当局は,抗告を十分理由があるものと判断する場合は,その決定を修正する。このことは,手続における他の当事者が抗告人に異議を申し立てている場合は,適用されないものとする。当該当局は,抗告手数料を返還すべきことを命ずることができる。第1文の規定により抗告が修正されない場合は,本案について意見を付すことなく,1月以内に事件を特許裁判所に差し戻さなければならない。第2文に規定する場合は,抗告を遅滞なく特許裁判所に差し戻さなければならない。
第67条 抗告部;口頭審理の公開
- [1] 第66条にいう抗告については,法律的に資格を有する3人の構成員からなる特許裁判所の抗告部が決定する。
- [2] 商標課及び商標部門による決定に対する抗告に関する口頭審理は,登録が公告されている場合は,判決の言渡を含め,公開されるものとする。
- [3] 裁判所法(Gerichtsverfassungsgesetz)第172条から第175条までの規定を準用する。ただし,次のことを条件とする。
- (1) 当事者の1人の請求により,公開が請求をする当事者の保護に値する利益を損なう虞がある場合は,公衆を口頭審理から排除することもできる。
- (2) 登録が公告されるまでは,公衆は判決言渡から排除されるものとする。
第68条 抗告手続における特許庁長官の関与
- [1] 特許庁長官は,公益の保護のために適切と判断する場合は,抗告手続において特許裁判所に書面による供述をし,聴聞に出席し,またそこで陳述することができる。特許裁判所は,特許庁長官が行った書面による供述を関係当事者に通知する。
- [2] 特許裁判所は,基本的に重要な法律問題についてそれが適切と判断する場合は,抗告手続に参加する機会を特許庁長官に与えることができる。特許庁長官は,参加の通知が受理されたときは,手続における関係当事者となるものとする。
第69条 聴聞
次の場合は,聴聞が行われるものとする。
- (1) 当事者の1人が請求する場合
- (2) 特許裁判所において証人調をすべき場合(第74条[1]),又は
- (3) 特許裁判所が適切と判断する場合
第70条 抗告に関する決定
- [1] 抗告に対しては,決定が言い渡されるものとする。
- [2] 抗告を許容されないものとして却下する決定は,聴聞を行うことなく,言い渡すことができる。
- [3] 特許裁判所は,次の場合は,その本案に関する問題について判断を下すことなく,係争中の決定を破棄することができる。
- (1) 特許庁が未だその本案の問題についての決定をしていない場合
- (2) 特許庁における手続が実質的な欠陥を有している場合,又は
- (3) 本案の決定に不可欠な新たな事実若しくは証拠が知られた場合
- [4] 特許庁は,その決定の基礎を,[3]の規定に基づく破棄の根拠となる法律判断におかなければならない。
第71条 抗告手続の費用
- [1] 複数の当事者が手続の当事者となっている場合は,特許裁判所は,公平と考えられるときはその限りにおいて,適切な方法で利益及び権利を守るために必要とされたものであると合理的に判断できる範囲において,当事者が被った費用を含む手続費用の全部又は一部を当事者の1人が負担しなければならない旨決定することができる。費用に関するかかる決定が行われない場合は,各当事者は自己が被った費用を負担するものとする。
- [2] 特許庁長官が訴訟参加した後に申請を行った場合にのみ,特許庁長官に費用を負担させることができる。
- [3] 特許裁判所は,抗告手数料(第66条[5])を返還すべきことを命ずることができる。
- [4] [1]から[3]までの規定は,当事者が抗告,商標出願,不服申立若しくは取消請求の全部若しくは一部を取り下げた場合,又は放棄により若しくは保護期間を更新しないことにより商標の登録が全部又は一部,登録簿から取り消された場合にも適用されるものとする。
- [5] 他の点に関しては,費用査定の手続及び費用査定の決定の執行に関する民事訴訟法の規定を準用する。
第72条 除斥及び忌避
- [1] 特許裁判所の構成員の除斥及び忌避については,民事訴訟法第41条から第44条まで及び第47条から第49条までの規定を準用する。
- [2] 特許庁における従前の手続に加わっていた者は,裁判官の職務から除斥されるものとする。
- [3] 裁判官の忌避に関する決定は,忌避を求められている者が属する抗告部によって行われるものとする。忌避された構成員の排除の結果として,当該抗告部がもはや定足数を満たさなくなった場合は,他の抗告部が決定を行う。
- [4] 登録官の除斥に関する決定は,当該事件を管轄する部によって決定されるものとする。
第73条 事実の調査;聴聞の準備
- [1] 特許裁判所は,職権により事件の事実を調査しなければならない。特許裁判所は,当事者の事実の陳述及び証拠の申出に拘束されないものとする。
- [2] 聴聞が行われる前,又は聴聞が行われないときは特許裁判所の決定がされる前に,裁判長又は裁判長によって指名された部の構成員は,可能ならば1回の聴聞又は1回の開廷期日において事件の結論を出すために必要なすべての準備をしなければならない。その他の点では,民事訴訟法第273条(2),(3)の第1文及び(4)の第1文の規定を準用する。
第74条 証拠調
- [1] 特許裁判所は,聴聞中に証拠調を行う。特に,もとの場所での点検を行い,証人,専門家及び当事者を尋問し,かつ,書類の調査を命ずることができる。
- [2] 特許裁判所は,適切な場合は聴聞の実施前に,受任裁判官としての裁判所構成員の1人によって証人調をすることができ,また,個々の証人尋問を明示した上で他の裁判所に証人調を依頼することができる。
- [3] 当事者は,証拠調が行われるすべての聴聞について通知されるものとし,かつ,その聴聞に加わることができる。当事者は,証人及び専門家に対し関連した質問をすることができる。質問に対し異議が唱えられた場合は,特許裁判所が決定する。
第75条 召喚
- [1] 聴聞の期日が定められると直ちに,当事者は少なくとも2週間の予告をもって召喚されるものとする。緊急の場合は,裁判長はその期間を短縮することができる。
- [2] 召喚状には,当事者が出廷しない場合は,当該者抜きで事件を審問し,かつ,決定することができる旨示されるものとする。
第76条 聴聞の順序
- [1] 裁判長は,聴聞を開きそれを統括する。
- [2] 事件の読上の後,裁判長又は記録係の裁判官は,事件ファイルの主要な内容を報告する。
- [3] この後直ちに,当事者それぞれに,申立を行い,かつ実証するために発言する許可が与えられるものとする。
- [4] 裁判長は,事件に含まれる事実問題及び法律問題について当事者と討議する。
- [5] 裁判長は,請求により,抗告部の各構成員が質問することを許可する。質問に対し異議が唱えられた場合は,当該抗告部が決定する。
- [6] 事件について討議がなされた後,裁判長は聴聞の終結を宣言する。抗告部は聴聞の再開を決定することができる。
第77条 調書
- [1] 聴聞において,及び証拠調が行われるときはいつでも,裁判所の登録官が,調書作成者として職務を行うために出廷するものとする。裁判長の命令により,調書作成者を出廷させない場合は,裁判官の1人が調書を作成する。
- [2] 調書は,聴聞及びすべての証拠調手続について作成されるものとする。民事訴訟法第160条から第165条までの規定を準用する。
第78条 証拠の判断;裁判所に聴取される権利
- [1] 特許裁判所は,訴訟手続の結果に照らし全体として到達した自己の自由な心証に基づき事件について決定を行う。決定には,裁判官が心証形成をするに至った理由を述べなければならない。
- [2] 決定は,当事者がその意見を述べる機会を有していた事実及び証拠のみに基づくことができる。「
- [3] 決定に先行して聴聞が行われた場合は,最終の審問期日に出廷しなかった裁判官は,当事者が同意したときにのみ,決定の言渡に加わることができる。
第79条 決定言渡;決定の送達;理由の記載
- [1] 特許裁判所の終局決定は,聴聞が行われた場合は,その聴聞を終結する期日又は直ちに指定される別の期日において言い渡される。この期日は,重大な理由,特に,事件の範囲又は複雑性により必要とされる場合を除き,3週間以上先の日を指定されることはない。終局決定は,裁判所において言い渡す代わりに,当事者に送達することができる。特許裁判所が聴聞を行うことなく決定を下す場合は,決定の言渡は,当事者に決定書を送達することをもって代えられるものとする。終局決定は,常に職権により当事者に送達される。
- [2] 申立を拒絶する又は法的救済を与える特許裁判所の決定には,その決定が根拠とする理由が述べられなければならない。
第80条 訂正
- [1] 決定書中の印字の誤り,計算の誤り及び同様の明白な誤りは,いつでも特許裁判所が訂正を行うことができる。
- [2] 決定書に述べられた事実がその他の誤り又は不明瞭な表現を含んでいる場合は,当事者は,その決定の送達後2週間以内に訂正の請求をすることができる。
- [3] [1]の規定に基づく訂正は,特許裁判所が事前に聴聞を開くことなく決定することができる。
- [4] 特許裁判所は,証拠調をすることなく[2]の規定に基づく訂正の請求について決定する。その決定には,訂正が請求されている決定の言渡に加わった裁判官のみが加わるものとする。
- [5] 訂正に関する判定の結果は,決定自体及びその写しに記録されるものとする。
第81条 代理;委任状
- [1] 何れの当事者も,特許裁判所の手続の如何なる段階においても,権限のある代理人によって代理されることができる。特許裁判所は,代理人の選任を命ずる決定をすることができる。第96条の規定は影響を受けないものとする。
- [2] 委任状は,事件の書類とともに裁判所の記録に連綴されるものとする。委任状は後に提出することができる。特許裁判所は,委任状提出のための期限を定めることができる。
- [3] 委任状が提出されていないことに対しては,手続の如何なる段階においても異議を申し立てることができる。特許裁判所は,弁護士又は特許弁護士が代理人として出廷していない場合は,委任状が欠けていることを職権により斟酌するものとする。
第82条 他の規定の適用;決定に対する上訴;訴訟記録の閲覧
- [1] 本法において特許裁判所における手続についての規定がないときは,特許裁判所における手続の特別な性質から別段の取扱が要求される場合を除いて,裁判所法及び民事訴訟法の規定を準用する。民事訴訟法第227条(3)の第1文の規定は適用されない。特許裁判所における手続に関係する費用については,訴訟費用に関する法律(Gerichtskostengesetz)が準用される。
- [2] 特許裁判所の決定に対する上訴は,本法において認められている範囲でのみ許容される。
- [3] 第三者に事件のファイルを閲覧する許可を与えることについては,第62条[1]及び[2]の規定を準用する。この許可申請については,特許裁判所が決定する。
第6章 連邦司法裁判所(Bundesgerichtshof)に対する訴訟手続
第83条 法律抗告の許可
- [1] 第66条の規定に基づく抗告に関する特許裁判所の抗告部の決定に対する法律問題に基づく抗告は,抗告部がその決定において当該法律抗告の提起を許可している場合において,連邦司法裁判所に提起することができる。法律抗告は,中止の効果を有するものとする。
- [2] 法律抗告は,次の何れかに該当する場合に承認されるものとする。
- (1) 基本的に重要な法律問題を判断すべき場合,又は
- (2) 法律の発展又は裁判手続の均一化のために,連邦司法裁判所の判断が必要とされる場合
- [3] 次に掲げる手続上の瑕疵が糾弾される場合は,法律抗告に対する許可は必要としないものとする。
- (1) 決定を行った裁判所が正しく構成されていなかったこと
- (2) 決定に加わった裁判官が,法律により裁判官としての職務から除斥されたか,又は非公正の虞により首尾よく忌避されていたこと
- (3) 当事者の1人が聴聞を受ける権利を拒否されていたこと
- (4) 手続における当事者が,法律の規定に従って代理されていなかったこと。ただし,その者が訴訟手続指揮に明示的又は黙示的に同意していた場合は,この限りでない。
- (5) 訴訟手続の公開に関する規定に違反した聴聞に基づいて決定が下されたこと,又は
- (6) 決定に理由が付されていないこと
第84条 法律抗告の権利;法律抗告の根拠
- [1] 法律抗告をする権利は,抗告手続の当事者に帰属する。
- [2] 法律抗告は,決定が法律違反に基づくものである旨の主張を唯一の根拠としなければならない。民事訴訟法第550条及び第551条(1)から(3)まで及び(5)から(7)までの規定を準用する。
第85条 方式要件
- [1] 法律抗告は,決定の送達後1月以内に連邦司法裁判所に書面により提起しなければならない。
- [2] 係争中の価額の縮小に関する第142条の規定は,連邦司法裁判所における法律抗告手続に準用される。
- [3] 法律抗告は,その根拠とする理由を述べなければならない。理由を述べるために認められる期間は1月とする。その期間は,法律抗告が提起された日から起算され,請求により裁判長が延長することができる。
- [4] 法律抗告の理由の陳述書には,次の事項を含まなければならない。
- (1) 決定について争い,かつ,修正又は破棄が求められている範囲に関する宣言
- (2) 違反している法規定の指摘,及び
- (3) 法律抗告について,手続に関して法令違反があったという主張を根拠とする場合は,瑕疵を構成する事実の陳述
- [5] 連邦司法裁判所に対し,当事者は,許可された代理人として連邦司法裁判所に対して実務を行うことを認められている弁護士によって代理されなければならない。当事者の請求により,その者の特許弁護士に対して発言の許可が与えられるものとする。この点については,民事訴訟法第157条(1)及び(2)の規定は適用されないものとする。事件への特許弁護士の関与によって生じる費用については,弁護士報酬に関する連邦規則(Bündesgebuhrenordnung für Rechtsanwalte)第11条による最高限度額を上限とする報酬,並びに当該特許弁護士に関するその他の必要経費が補償されるものとする。
第86条 許容性の審理
連邦司法裁判所は,法律抗告がそれ自体許されるものか否か,並びに法律に定める方式により及び所定の期間内に提起され,かつ,理由が述べられているか否かを職権により審理する。これらの要件を欠いている場合は,法律抗告は,許容できないものとして却下される。
第87条 複数当事者
- [1] 複数の者が法律抗告に関する手続の当事者となる場合は,法律抗告状及びその理由の陳述書が他の当事者に送達されるものとし,かかる送達には,送達後所定の期間内に宣言すべきことがあればその宣言を書面により連邦司法裁判所に提出すべき旨の要請を添付するものとする。法律抗告が提起された日付は,法律抗告状の送達とともに通知されるものとする。法律抗告人は,抗告状又は抗告理由書と共に必要な数のそれらの認証謄本を提出しなければならない。
- [2] 特許庁長官が法律抗告に関する手続の利害関係者でない場合は,第68条[1]の規定を準用する。
第88条 他の規定の適用
- [1] 法律抗告に対する手続においては,裁判所構成員の除斥及び忌避,許可された代理人及び法律補佐人,職権による書類の送達,召喚状,期日及び期限並びに権利回復に関する民事訴訟法の規定を準用する。また,権利回復については,第91条[8]の規定を準用する。
- [2] 訴訟手続の公開に関しては,第67条[2]及び[3]の規定を準用する。
第89条 法律抗告に関する決定
- [1] 法律抗告は,決定の対象となる。その決定は,聴聞を行うことなく言渡すことができる。
- [2] 連邦司法裁判所は,その決定を言渡すとき,抗告に係る決定において認定された事実に拘束される。ただし,法律抗告のために許容され及び実証された理由がその事実に関して提出されている場合は,この限りでない。
- [3] 決定は,その根拠とする理由を述べなければならず,職権により関係当事者に送達されるものとする。
- [4] 抗告に係わる決定が破棄された場合は,当該事件は,更なる聴聞と決定を求めて特許裁判所に差し戻されるものとする。特許裁判所は,破棄の根拠となった法的意見に基づくその決定に拘束されるものとする。
第90条 費用の決定
- [1] 複数の者が訴訟手続の当事者となっている場合は,連邦司法裁判所は,公平と認められるときはその限りにおいて,適切な方法で主張及び権利を守るために必要とされた範囲について,当事者が被った費用を含む手続費用の全部又は一部を当事者の1人が負担するべき旨の決定を行うことができる。かかる決定は,法律抗告,商標出願,異議申立又は取消請求が当事者によって全部若しくは一部について取り下げられた場合,又は商標の登録が放棄により若しくは保護期間の非更新により全部若しくは一部について登録簿から取り消された場合にも,行うことができる。費用に関する決定がなされない限り,各当事者は自己が被った費用を負担するものとする。
- [2] 法律抗告が許容できないものとして拒絶又は却下された場合は,法律抗告によって生じた費用は,法律抗告人に対して裁定されるものとする。ただし,当事者の1人の重過失によって生じた費用は,その者に対して裁定されるものとする。
- [3] 特許庁長官が法律抗告を提起し又は法律抗告手続において申請を行った場合に限り,特許庁長官に費用を負担させることができるものとする。
- [4] 他の点においては,費用査定の手続及び費用査定の決定の執行に関する民事訴訟法の規定を準用する。
第7章 共通規定
第91条 権利回復
- [1] 自己の無過失により特許庁又は特許裁判所に対する期限を遵守することを妨げられた者は,何人も,請求により,法律の規定に従って自己の権利に不利益となる不遵守について,元の状態への権利回復が認められるものとする。この規定は,異議申立の期限及び異議申立の手数料の納付期限には適用しないものとする。
- [2] 権利回復の請求は,期限を遵守しないことの原因がなくなってから2月以内にしなければならない。
- [3] 当該請求においては,権利回復の根拠とする事実を述べなければならない。この事実は,請求時に又は請求に関する手続において一応の証拠によって立証しなければならない。
- [4] 懈怠した行為は,請求のための期限内に履行しなければならない。これが履行された場合は,請求をすることなく権利回復を認めることができる。
[5] 遵守されなかった期限の満了から1年を経過したときは,もはや権利回復の請求をすることはできず,かつ,懈怠した行為を履行することができない。
- [6] 権利回復請求に関する決定は,履行すべき行為に関して決定する権限のある当局が行うものとする。
- [7] 権利回復に関する決定は争うことができない。
- [8] 商標の所有者が権利回復を認められた場合であって,商標登録に関する権利を喪失してから権利回復するまでの間に,第三者が当該商標と同一又は類似の標識の下に善意で商品を市場に出し又はサービスを提供している場合は,当該商標の所有者は,当該行為に対して如何なる権利も主張することができない。
第92条 真実を述べる義務
特許庁,特許裁判所及び連邦司法裁判所での手続において,当事者は,事実問題について十分かつ誠実に陳述しなければならない。
第93条 公用語及び法廷における言語
特許庁及び特許裁判所の言語は,ドイツ語とする。他の点については,法廷の言語に関する裁判所法の規定に従う。
第94条 書類の送達
- [1] 特許庁及び特許裁判所での手続における書類の送達に当たっては,次の要件に従うことを条件として,行政手続における送達に関する法律(Verwaltungszustellungsgesetz)の規定を適用する。
- (1) ドイツにおける代理人(第96条)を選任していない外国に居住する受取人に対する送達は,民事訴訟法第175条及び第213条の規定に従って郵送により行うこともできる。ただし,送達がされるべきときに,受取人にとってドイツにおける代理人を選任する必要性を認識することが可能であった場合に限る。
- (2) 代理証所持人に対する送達(Erlaubnisscheininhaber)(特許弁護士規則(Patentanwaltsordnung)第177条)に当たっては,行政手続における送達に関する法律第5条(2)の規定を準用する。
- (3) 特許庁又は特許裁判所に郵便受を設けている受取人には,受取人の郵便受に書類を投函することにより書類を送達することもできる。投函に関する記録は,ファイルに編入される。投函の日時は,当該書類に記載される。送達は,郵便受への投函後3日で効力を生じたものとみなされる。
- [2] 不服申立(Erinnerung)(第64条[2]),抗告(第66条[2])又は法律抗告(第85条[1])を提起するために認められる期間が送達の日から始まる場合は,行政手続における送達に関する法律第9条(1)の規定は適用しない。
第95条 法的援助
- [1] 裁判所は,特許庁に対して法的援助を提供するよう求められるものとする。
- [2] 特許庁における手続に関して,特許裁判所は,特許庁の請求により,出廷を怠った証人及び専門家,又は証言すること若しくは宣誓して証言することを拒否する証人若しくは専門家に対して召喚状の送達又は強制的措置(Ordnungs- oder Zwangsmittel)を行うものとする。同様に,出廷を怠っている証人に対して,送達された召喚状の執行が命ぜられるものとする。
- [3] 3人の法律的構成員からなる特許裁判所の抗告部は,[2]に規定される請求について判断を下す。この場合の判断は,決定の形式を取るものとする。
第96条 国内代理人
- [1] ドイツにおいて住所も居所も有さず営業所も有していない,出願に係る商標又は登録商標の所有者は,自己の代理人としてドイツ国内の特許弁護士又は弁護士を任命した場合にのみ,本法に規定する特許庁又は特許裁判所における手続に参加することができる。
- [2] [1]の規定に従い任命された代理人は,特許庁及び特許裁判所における手続並びに標章に係る民事訴訟において当事者を代理する権限を有する。当該代理人は,刑事訴訟の提起を申し立てることもできる。
- [3] 代理人が自己の営業施設を有する場所は,民事訴訟法第23条にいう財産が所在する場所とみなされるものとする。如何なる営業施設もない場合は,代理人が自己の住所を有する場所が,また,そのような住所もない場合は,特許庁の所在する場所がこれにあてはまる。
- [4] [1]の規定は,本法に規定する特許庁又は特許裁判所における手続に関与している第三者について準用する。
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