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Vol.47
広報誌「とっきょ」2021年2月5日発行号

マクロ解析からミクロ解析へ 特許で読み解く自動運転における通信技術

特許情報からみる「自動運転」ビジネス

鈴木健二郎さんの写真

次世代エネルギー問題を含め、常に最新技術が投入される自動車産業において、まさに各社がしのぎを削る「自動運転技術」。エンジン開発よりも門戸が広い通信の技術は、自動車産業にどんな影響を及ぼしているのでしょう?各社の特許情報から紐解いてみましょう。

【執筆】株式会社テックコンシリエ
代表取締役社長CEO/工学博士 鈴木健二郎

自動運転を支える通信技術の特許たち

自動運転技術がもたらすコネクテッドカー社会の到来

人間が操作しなくても自動で走行する自動運転車が行き交う未来が近いと感じている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。子どもの頃に夢みた未来の世界は、まもなく「未来」ではなく、「現在」へと移行することは間違いないでしょう。自動運転によって自動車産業が迎えるクルマのIoT化は、ほとんどの自動車とネットワークがつながるコネクテッドカーの形で普及するとみられています。
国連が発表する「World Urbanization Prospects」等の資料によると、2019年を起点に今後10年間で、世界で100万人を超える都市人口は1.4倍、交通事故数は3倍、自動車利用に伴うCO2排出量は1.5倍に上るといわれる中、交通の最適化に寄与するクルマのIoT化は、これらの課題解決の有望な打ち手の一つとして期待が寄せられており、2030年時点で自動運転車比率(移動距離ベース)は、全体の33%以上を占めるとの試算がなされています。

異業種を巻き込んだV2X通信技術の急激な発展

コネクテッドカーを成立させるのは「自動車―自動車の通信」「自動車―道路設備の通信」「自動車―歩行者の通信」「自動車―ネットワークの通信」といった様々な通信(V2X通信)の技術です【図1】。
そこで自動運転技術の中でV2X技術に着目すると、2010年以降、各国・地域ともに特許の出願件数が年々増加している状況が分かります【図2】。さらに、主要な事業が自動車または自動車関連機器である企業(自動車関連企業)の出願が毎年堅調であるのに対し、主要な事業が自動車または自動車関連機器でない企業(その他の企業)からの出願件数が2014年頃から活発化しています【図3】。
現在、IoT化を支える情報通信技術及び情報解析技術といった技術革新が、異業種企業から次々と持ち込まれており、まさに自動車産業は、クルマのIoT化を通じて大きな産業構造変化を迎えつつあるといえるでしょう。

自動車を取り巻く通信技術のイメージ画像
【図1】自動車を取り巻く通信技術 ※令和元年度特許出願技術動向調査報告書 V2X通信技術より作成
各国の出願件数推移の図
【図2】各国の出願件数推移(2016年以降の出願件数は未確定値を含む)※令和元年度特許出願技術動向調査報告書 V2X通信技術より作成
自動車関連企業とその他の企業の出願件数推移の図
【図3】自動車関連企業とその他の企業の出願件数推移(2016年以降の出願件数は未確定値を含む)※令和元年度特許出願技術動向調査報告書 V2X通信技術より作成
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