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Vol.48
広報誌「とっきょ」2021年3月25日発行

先端技術との融合が生み出す 新たな農業「スマート農業」

「スマート農業」で進めるグローバル展開

これまで農業分野では、稲作を中心とした日本の農業は水田が多く、畑を中心とした欧米の農業とは農耕用機械に求められる機能が異なることもあり、日本企業と海外企業の競合はそれほど激化してはいませんでした。しかしながら、ロボットや自動運転等の分野は海外企業も積極的に研究開発を行っている分野ですから、「スマート農業」におけるロボットや自動運転等の研究開発が活発化すると、海外企業が日本に、あるいは、日本企業が海外に展開し、競合が激化することが考えられます。
その根拠として、「スマート農業」分野は、当然海外でも多くの特許出願がなされており、例えば、上述のトレンドキーワード(「経路」「自律」「障害物」)を含む米国内出願ランキングを見てみると、「クボタ(KUBOTA)」が上位にランキングされていることが分かります【図6】。

【図6】トレンドキーワードごとの出願人ランキング(米国)
【図6】トレンドキーワードごとの出願人ランキング(米国) ※PatentSQUAREを使用し、イノベーションリサーチにて集計

日本企業の技術が海外展開する可能性はますます高まりますが、海外を含めてビジネスを進めるためには、日本だけでなく海外の特許情報の分析を実施して技術開発の方向性を定めることが有効です。
これは想像になりますが、おそらく「スマート農業」に関連する製品・サービスは、一回売って終わりというスタイルよりは、継続的なサポートが重視されると思われます。
その場合、他の分野でも進みつつあるようにモノからコトへの事業転換が進むことが考えられます。その結果、製品技術の高さもさることながら、製品・サービス提供企業が、農作物の生育データをはじめ、環境データや気象データといった情報やそれらのデータを分析・解析した情報をどれだけ幅広く蓄積できているかが重要となります。いずれにせよ、データの蓄積が重要となり、そのサービスの実現が海外企業ではなく日本企業によって実現されて欲しいと考えています。
このように、不確定な要因をはらんだ分野だと思いますが、「スマート農業」の実現を通して、「農業」に携わる人たちのみならず、国民全員の明るい未来が待っていることを期待したいです。

イノベーションリサーチ株式会社

イノベーションリサーチ株式会社 武藤謙次郎氏

取締役副社長/シニア知的財産アナリスト(AIPE認定)武藤謙次郎 氏

システムメーカーに入社し、特許情報分析の手法開発や分析ツールの企画営業、操作講習、システムサポート等、特許情報分析に関するシステム全般に関わった後、特許事務所にて、クライアント企業に対する情報分析・コンサルティング業務に従事し、現職に至る。ビジネスに効く知財情報の活用法を日々探求している。

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