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Vol.49
広報誌「とっきょ」2021年9月14日発行号

特集1:新時代に挑む知財戦略

IPランドスケープのススメ「旭化成株式会社」

コロナ禍でもIPLを活用しビジネスチャンスを創出

現在、弊社ではIPLを主に3つの目的で活用しています。まず一番注力しているのが現行事業の強化。次に新規事業創出で、最近はここに重心がシフトしつつあります。最後がM&Aの候補先の調査などです。

最近の活用事例としては、コロナ禍における取組があります。コロナ禍は弊社にも大きなマイナスの影響を与えましたが、逆にそこにビジネスチャンスがないか模索しました。具体的には、元々弊社が買収した会社が水の殺菌に使う深紫外線LEDを扱っていましたが、それを表面殺菌にブラッシュアップして感染症対策に役立てられないか考えたんです。そこでまず表面殺菌についての特許マップを作ったところ、競合他社はまだそこに目を向けていないことが分かりました。次にその市場に入っていくのに一緒に組める照明会社を探すため、照明業界の企業群を特許マップで確認し、シナジー効果を見込める会社を見出したんです。

一方でビジネス状況が大きく変わっていることが予想されるアフターコロナにも備えています。弊社ではIPLを使ってどんな価値を創造できるか考えるワークショップを2019年から行っています。その「IPL de Connect」には高度専門職と企画とマーケティングのメンバーが参加していますが、今年は2030年に向けて何ができるかディスカッションを重ねました。ここで洞察の材料として世界のイノベーションを牽引するGAFAの特許解析データや自社の特許マップを提供しました。その結果、気付きの連鎖が起きて、2030年の世界に貢献するためのアイデアが140も出てきました。それらは全社に共有しており、各現場で新事業を創るために役立つはずです。

IPL de Connect 相関図
中小企業やスタートアップも推進協議会への参加を

社内でIPLを実施するうちに特許庁から声がかかり、2020年1月にグローバル知財戦略フォーラムのパネルディスカッションに登壇しました。これをきっかけに同年12月にわれわれと同じくIPLを積極的に実施している9社が発起人になってIPランドスケープ推進協議会を設立し、弊社も代表幹事の一社として参加しています。

主な活動は2カ月に一度会員が集まって、各社、そして日本でIPLを盛り上げるための議論をすること。先日は、今年6月の改訂で、知財情報の開示に関する内容が追加されたコーポレートガバナンス・コードについて議論しました。

IPランドスケープ推進協議会は現在33社が参加していますが、大企業が中心で中小企業は多くありません。ただ協議会としては中小企業やスタートアップの企業にもぜひ入会してほしいと考えています。というのも、そうした企業の「IPLを導入したいけどコストの面で難しい」という声をよく聞くんです。日本が今後、知財の力で世界と戦っていくには、特許庁と共にこうした声に応えていくことが不可欠です。中小企業やスタートアップもぜひ協議会に参加いただき、どういったバックアップが必要か教えていただけるとうれしいですね。

IPランドスケープ推進協議会WEBサイト(外部サイトへリンク)
用語解説
GAFAとは

アメリカ合衆国の世界的なIT企業である、Google、Amazon、Facebook、Appleの4社を指した言葉。「ガーファ」と読む。なお本国アメリカでは「Big Tech」という呼び方が浸透している。

テキストマイニング手法とは

大量の文字情報を自然言語処理などで分析し、有用な情報を抽出する技術のこと。知財領域ではテキストマイニングを用いて特許情報を解析し、自社・他社の保有する特許を比較したマップ作りなどに役立てられている。

コーポレートガバナンス・コードとは

上場企業が守るべき企業統治の指針・ガイドラインのこと。東京証券取引所と金融庁が制定し、2015年6月から上場企業に適用した。企業の持続的な成長と企業価値の向上を通して、経済全体の発展へとつなげることが目的。

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