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特集1:新時代に挑む知財戦略
2017年7月、経済紙によって国内企業向けに大々的にその概念が紹介されて以降、注目を集める「IPランドスケープ(以下IPL)」。いまIPLが必要な理由や、IPLを実施する際のコツなど、意外と知らなかったIPLの実態を紹介するとともに、先進的にIPLを活用してきた旭化成株式会社の取組を特集。その重要性に迫ります。
自社の経営・事業戦略を定める際に、経営・事業情報に知財情報を取り込ん だ分析を実施。その結果(現状の俯瞰、将来の展望など)を経営者・事業責任者と共有し、結果に対するフィードバックを受けたり、立案検討のための議論や協議を行ったりすること。
社会は急激な変化の只中にある。AI・IoTをはじめとしたデジタル革新や、グローバル化、投資分野でも注目されるESG(環境、社会、ガバナンス)など、企業を取り巻く環境や社会的な要請は変容を迎えている。加えて、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が契機となって出現した、新たなニーズや社会課題も枚挙にいとまがない。
企業はいま、こうした潮流の中で、将来に向けて適切に舵をきるための多面的なまなざしと、さまざまな課題を解決に導く力が試されつつある。そのために必要なのは、これまで以上に「企業自身が成長していくこと」。そこで鍵になるのが、知財であり、IPランドスケープだ。従来の守りのための知財情報の活用とは異なり、IPLは自社・他社の知財を主な情報源として、それをマップにし解析することで、新規事業の創出や企業経営に役立てていく、いわば「攻めの情報活用」。
今回は、そうした新時代を切り開くための知財情報活用・IPLについて、国内企業の中で先進的にIPLを活用し、IPL推進協議会代表幹事も務める旭化成にフォーカス。IPL活用のコツをはじめ、企業経営と密接にリンクした旭化成の知財情報活用の取組を知的財産部長の中村氏に聞いた。
IPランドスケープ推進協議会代表幹事 旭化成株式会社
研究・開発本部 理事・知的財産部長
中村 栄氏
1985年旭化成入社、89年知的財産部へ異動、98年全社調査機能技術情報グループ設立に伴い、同グループに異動。2018年4月知財戦略室長、同年10月から現職。20年10月にシニアフェローに就任。
IPLに関わる経営者、事業部、知財部の3者をサッカークラブに置き換えてみました!
自チーム(自社)の価値や力を上げるために、世界の戦術トレンド(競合企業の傾向など)をリサーチし、個性豊かな選手(特許、意匠、商標などの知財)をどう生かすか3者間で協議する流れを図式化しました。