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特集2 株式会社桜珈琲
20年ほど前、桜珈琲の前身となるセルフ式のベーカリーカフェをいくつか展開する中、長年の夢でもあった、郊外型の大型店舗をつくりたいと考えるようになりました。庭園のある非日常的な空間でゆったりとした時間をお客さまに過ごしてもらいたい。庭園ですからテーマは和風、でも純和風というよりは今風の「和モダン」に。車で気軽に立ち寄れるよう、駐車場も併設して——。今でこそ郊外型の大きなカフェはたくさんありますが、当時は車で行ける喫茶店のような存在はファミリーレストラン以外あまりなかったんですね。
桜珈琲といえば「庭園の桜」が代名詞ですが、最初は、どんな店づくりにするか決まっていませんでした。内装業者の方と相談する中で、「中庭を囲むように家屋を配置するのがいいんじゃないか」という案が出て。そこで私が好きな桜と和をテーマに、店づくりをしようと相談しまして、一号店の桜珈琲 鳳本店が生まれたんです。こうしたコンセプトやこだわりが実を結び、オープン当初から多くのお客さまに足を運んでいただくことができました。
しかし、お店が話題になるにつれ、同じようなコンセプトのお店が出てくるように。それこそテーブルも一緒、メニューの構成も一緒、あとは名前が違うだけ、といったお店もありました。会社を守っていきたいと弁護士さんに相談したのですが、当時は「100対0で勝てるとは言い切れない」とお答えを頂きました。これが本当にショックで……。そのとき、古くからお付き合いのある司法書士の先生から頂いた「会社を守るなら商標を取るのも手」というアドバイスを思い出したんです。愛情を込めてつくってきたお店を守るには知財が必要なのだと、ようやく気付けたんですね。
とはいえ、私たちも日々の店舗運営で手いっぱいですし、知財担当を置く余裕もありません。そこでご相談させていただいたのがINPITの知財総合支援窓口でした。商標の出願方法やブランド力強化の考え方についてご支援いただき、紹介のあった弁理士の先生と一緒に、「桜珈琲」をはじめとしたブランドの名称やロゴを商標登録してきました。これまで店舗の外観や内装はまねされても抗議するのは難しい状況でしたが、2020年からは建築物や内装デザインも意匠の保護対象として加えられましたよね。4月以降に展開した新規店舗の外観は、早速意匠として登録しています。一番守りたいのは、やはりお店のデザインやコンセプトなので。
このように商標・意匠を取っておけば、いざというときの武器になり抑止力にもなる。相手方から「まねしづらいな」と思ってもらえるわけです。実際、近年では類似店舗は少なくなりました。今後はさらにブランドの独自性を強め、多くの皆さまに愛される店づくりを追求していきます。あわせて店舗の外観や内装の意匠権も取得していくことで、桜珈琲のブランドや価値を守っていきたいと考えています。
20年前は、私たちがこのように知財と向かい合うことになるとは思ってもみませんでした。実際、中小企業しかも飲食業にとって、知財への取り組みはハードルが高いと思います。そんなときは私たちのようにINPITに相談してみてはいかがでしょう。皆さんも一度電話してみると、世界が変わるかもしれませんよ。
高品質の豆にこだわった珈琲の他、モーニング、サンドイッチ、スイーツメニューが充実。
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新保護領域の登録事例集を公開
令和元年意匠法改正によって新たに保護領域に加わった画像、建築物、内装について、意匠登録されたもののうち今後の出願等の参考となる事例集が公開されました。今後、同領域での意匠出願を検討されている方はぜひご一読ください。
詳細はこちらから
(改正意匠法に基づく新たな保護対象(画像・建築物・内装)の意匠登録事例について/特許庁HP)
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/design/kaisei_hogo.html