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ドイツ 商標法 8

 第8部 禁固又は罰金をもって罰すべき罪を規律する規定;輸入及び輸出に関する差押

 第1章 禁固又は罰金をもって罰すべき罪を規律する規定

 第143条 罰すべき標識の侵害

  • [1] 取引上不正に次のことをする者は,3年以下の禁固又は罰金に処せられるものとする。
    • (1) 第14条[2](1)又は(2)の規定に反して標識を使用すること
    • (2) 第14条[2](3)の規定に反して,名声を得ている標章の識別性若しくは名声を利用する又はそれらを害する意図をもって標識を使用すること
    • (3) 第三者が,次の規定に基づき標識の使用を禁止されている限りにおいて,第14条[4](1)の規定に反して標識を付すこと,又は第14条[4](2)又は(3)の規定に反して梱包,包装又は標章媒体の販売を申し出し,市場に出し,貯蔵し,輸入し若しくは輸出すること
      • (a) 第14条[2](1)又は(2),又は
      • (b) 第14条[2](3),かつ,名声を得ている標章の識別性若しくは名声を利用し又はそれらを害する意図の下に行う行為が犯されていること
    • (4) 第15条[2]の規定に反して表示又は標識を使用すること,又は
    • (5) 名声を得ている取引上の表示の識別性又は名声を利用し又は害する意図をもって第15条[3]の規定に反して表示又は標識を使用すること
  • [1a] 欧州共同体の制定法上の規定に基づき保護されている商標の所有者の権利を侵害する者は,[7]の規定に基づく法定命令が特定の違反行為に関する罰則規定に言及している限りにおいて同一の刑罰に処せられるものとする。
  • [2] 違反者は,商業的に違反行為を行った場合は,5年以下の禁固又は罰金に処せられるものとする。
  • [3] 未遂は罰すべきものとする。
  • [4] [1]及び[1a]にいう場合は,公訴当局の判断において,刑事訴追において特別の公益上の理由から職権による介入が要求されない限り,罪は請求に基づいてのみ訴追されるものとする。
  • [5] 犯罪に関係する物は,押収することができる。刑法(Strafgesetzbuch)第74a条の規定を適用する。被害者の損害賠償に関する刑事訴訟法に基づく手続(刑事訴訟法第403条から第406c条まで)において第18条にいう破棄請求が認められる場合は,押収に関する規定は適用しない。
  • [6] 有罪判決がなされた場合,被害者が請求しかつ被害者がそのことに正当な利害関係を有する場合に,その判決は公表されるものとする。公表の範囲及び方法は,判決において決定されるものとする。
  • [7] 連邦法務省は,欧州共同体の法律上の規定によって与えられた商標の保護を履行するために必要とされる場合は,法定命令により,かつ州議会の承諾を得ることなく,[1a]の規定に基づく刑事犯として罰すべき罪を決定する権限を有する。

 第144条 罰すべき地理的原産地表示の使用

  • [1] 取引上,次のように地理的原産地表示,名称,表示又は標識を不正に使用する者は,2年以下の禁固又は罰金に処せられるものとする。
    • (1) 第127条[1]若しくは[2]の規定に違反して,また[4]の規定又は第137条[1]に基づく法定命令に関連して,又は
    • (2) 第127条[3]の規定に違反して地理的原産地表示の名声若しくは識別性を利用する若しくは害する意図をもって,また[4]の規定又は第137条[1]に基づく法定命令に関連して
  • [2] 欧州共同体の法律上の規定に基づき保護された地理的表示又は原産地名称を取引上不正に使用する者は何人も,[6]に規定する命令が特定の罪に関するこの罰則規定に言及している限りにおいて同一の方法で罰せられるものとする。
  • [3] 前記罪の未遂は罰すべきものとする。
  • [4] 有罪判決がなされた場合,裁判所は,判決を下された者の所有に属する物品に不正に付された標章を除去するか,又はそれが不可能なときはその物品を破棄すべきことを命ずる。
  • [5] 判決が下された場合,公益上必要なときはその判決の公表が命ぜられるものとする。公表の範囲及び方法は,判決において決定される。
  • [6] 連邦法務省は,欧州共同体の法律上の規定に定める地理的表示及び原産地名称の保護を履行するために必要とされる限りにおいて,州議会の承諾を得ることなく,法律上の命令により[2]の規定に基づく刑事犯として罰すべき罪を決定する権限を有する。

 第145条 罰金を規律する規定

  • [1] 商品又はサービスに標章を付すために,次に掲げるものを同一若しくは模造品の形態で取引上使用する者は,行政上の犯罪を犯したものとみなされる。
    • (1) 第8条[2](6)にいう国の紋章,旗章,その他の記章又は国内の地方,地域団体若しくはその他の共同体的団体の紋章
    • (2) 第8条[2](7)にいう公の標識又は印章
    • (3) 第8条[2](8)にいうその他の標識,印章又は表示
  • [2] 故意又は過失により,次の行為を行う者は何人も,行政上の犯罪を犯したものとみなされる。
    • (1) 第134条[3]の規定に違反し,[4]の規定にも関連して,次の行為を行うこと
      • (a) 事業施設及び不動産,販売設備若しくは運送手段への立入又はそれらの点検を認めないこと
      • (b) 点検を適切に実行できるように点検の対象となる農産物又は食品を展示しないこと
      • (c) 点検の場合に必要な援助の提供を怠ること
      • (d) 商品見本を採ることを認めないこと
      • (e) 営業記録を提出しないか若しくは全部提出しない,又はその調査を認めないこと,又は
      • (f) 情報を提供しないか,又は正確若しくは十分に情報を提供しないこと,又は
    • (2) 命令が罰金を規律するこの規定に言及していることを条件として,第139条[1]の規定に基づき発せられた命令に違反すること
  • [3] 行政上の犯罪は,[1]にいう場合は5,000ドイツマルク以下の罰金及び[2]にいう場合は20,000ドイツマルク以下の罰金により罰することができる。
  • [4] [1]にいう場合は,第144条[4]の規定を準用する。

 第2章 輸入及び輸出に関する商品の差押

 第146条 標識に対する権利の侵害の場合における差押

  • [1] 本法によって保護される標章又は取引上の表示を不正に付している商品は,侵害が明白であり,かつ,不正商品及び海賊商品の自由な流通のための提供,輸出,再輸出又は保留手続の登録を禁止するための手段を規定している1994年12月22日の理事会規則(EC)No.3295/94(欧州共同体公報 No.L341,p.8)の適用対象とならない限り,権利の所有者の申立によりかつその者が担保を提供することを条件として,輸入又は輸出時において税関当局が差し押さえることができる。この規定は,税関当局の取締りの範囲においてのみ,欧州連合の他の加盟国及び欧州経済地域に関する条約の他の締約国との取引に適用される。
  • [2] 税関当局は,差押を命じる場合は,対象物品の処分権限を有する者及び申立人に遅滞なく通知しなければならない。処分権限を有する者の氏名及び住所と共に商品の出所,数量及び貯蔵場所が,申立人に通知されるものとする。書状及び郵便物の秘密厳守(基本法(Grundgesetz)第10条)は,この範囲に制限される。申立人には,点検が商業上又は取引上の秘密を侵害しない場合は,商品を点検する機会が与えられるものとする。

 第147条 没収;異議申立;差押商品の解放

  • [1] 第146条[2]の第1文の規定に基づく通知の送達の遅くとも2週間以内に差押に対して異議が申し立てられない場合は,税関当局は,差押に係る商品の没収を命ずる。
  • [2] 処分権限を有する者が差押に対して異議を提起した場合は,税関当局は,これを遅滞なく申立人に通知しなければならない。申立人は,差押に係る商品について第146条[1]の規定に基づく申立を維持するか否かを税関当局に対し遅滞なく宣言する必要がある。
  • [3] 申立人がその申立を取り下げた場合は,税関当局は遅滞なく差押を解くものとする。申請者がその申立を維持し,かつ,差押に係る商品の没収又は処分権の制限を命じた執行可能な裁判所の決定を提出する場合は,税関当局は,必要な手段を講じなければならない。
  • [4] [3]にいう場合の何れもが適用されないときは,税関当局は,[2]の規定に基づく申立人に対する通知の送達後2週間を経過したときに差押を解くものとする。[3]の第2文に規定する裁判所の決定を請求したが未だ受け取らないことを申立人が立証できる場合は,差押は更に最長2週間まで維持されるものとする。

 第148条 権限;救済

  • [1] 第146条[1]の規定に基づく申立は,地域財務局(Oberfinanzdirektion)に提出しなければならず,より短い有効期間が求められない限り,2年間効力を有する。申立は繰り返すことができる。
  • [2] 申立に関連する職務上の行為の費用は,財政法(Abgabenordnung)第178条の規定に基づき申立人に課されるものとする。
  • [3] 差押及び没収は,軽罪に関する法律(Gesetz über Ordnungswidrigkeiten)に基づく差押及び没収についての科料手続によって認められる法的救済手段によって争うことができる。申立人は,かかる再審理手続において審問を受ける。地方裁判所(Amtsgericht)の決定に対しては,即時抗告が認められる。即時抗告は,高等地方裁判所によって審理される。

 第149条 不当な差押の場合における損害

差押が最初から不当なものであることが立証された場合において,申立人が差押に係る商品について第146条[1]の規定に基づく申立を維持したか又は遅滞なく宣言(第147条[2]の第2文)を行わなかったときは,申立人は,差押の結果処分権者に生じた損害を賠償する必要があるものとする。

 第150条 規則(EC)No.3295/94に基づく差押

第146条[1]にいう規則に基づく手続においては,規則により他に規定されない限り,第146条から第149条までの規定を準用するものとする。

 第151条 地理的原産地表示を不法に付した場合における差押

  • [1] 本法又は欧州共同体の規定によって保護されている地理的原産地表示を不法に付した商品は,それが輸入若しくは輸出される際又は輸送の際に,不法に付された表示を除去する目的での差押の対象となる。ただし,侵害が明白な場合に限る。この規定は,取締りが税関当局によって行われる限りにおいて,欧州連合の他の加盟国との取引及び欧州経済地域に関する条約の他の締約国との取引に適用されるものとする。
  • [2] 差押は,税関当局が行う。税関当局は,不法に付された表示を除去するために必要な手段も命ずるものとする。
  • [3] 税関当局の命令に従わない場合又は除去が実行不可能な場合は,税関当局は,商品の没収を命ずるものとする。
  • [4] 差押及び没収は,軽罪に関する法律に基づく差押及び没収についての科料手続によって認められる法的救済手段によって争うことができる。地方裁判所の決定に対しては,即時抗告が認められる。即時抗告は,高等地方裁判所によって審理されるものとする。

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