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Vol.41
広報誌「とっきょ」2019年2・3月号

大ヒット商品の歴史を辿る
あのとき、あの知財

G-SHOCK
(カシオ計算機株式会社)

長く愛されているロングセラー商品や、一大ブームを巻き起こしたヒット商品には、そうなるべき理由がありました。開発者の熱い想い、徹底したこだわり、伝統とブランド――発想と技術に裏打ちされ、長く守られてきた商品の歴史と今日に至るまでの魅力をひもときます。

初代モデル「DW-5000C」の写真
初代モデル「DW-5000C」

発売:1983年4月~
耐衝撃構造、20気圧防水、衝撃力・遠心力・振動の3つの重力加速度にも耐える耐衝撃ウオッチ。

落としても壊れない腕時計に世界が震撼

まりつきから発想した画期的な中空構造

耐衝撃ウオッチ「G-SHOCK」が発売されたのは1983年4月。2017年8月末には販売個数が累計1億個に達し、世界138カ国で愛される大人気商品だ。

現在は開発本部のアドバイザリー・エンジニアである伊部菊雄氏は、当時、高校入学時に親からもらった大切な腕時計が落ちて壊れたのを見て、「落としても壊れない時計」を思いつく。その頃は小型で薄い時計が主流であったが、「世の中にない物を作りだす」というカシオ計算機の気質から開発許可が出された。

開発前は、単に時計をウレタンなどで保護すればよいと考えていたが、10mの落下に耐えるには大きなボールほどの衝撃吸収材が必要だと判明。そこで今度は時計の心臓部であるモジュールを覆うケースの改良を試みたものの、何度試作してもどこかの部品が壊れ、開発は難航した。

「いよいよ辞表を出すしかない」と追い詰められたとき、目に留まったのは公園でまりをつく子どもだった。「モジュールを宙に浮かせれば、外部からの衝撃が伝わらないのではないか」。このときにひらめいた、モジュールを点で支える中空構造により、10mの高さから落としても壊れない耐衝撃性を実現。この構造は発売直前に実用新案(第1779173号)を出願した。現在の約500モデルあるラインナップのすべてが、この技術思想を元に製造されている。

人気ブランドを守るための知財対策

発売当初、日本では注目されなかったG-SHOCK。しかし、アイスホッケー選手がパックの代わりにG-SHOCKを打つCMがアメリカで放送されると話題が沸騰。同国の人気テレビ番組で同様の実験をしてもG-SHOCKは動き続け、耐衝撃性が広く認められるとともに、知名度と人気も急上昇した。そして、90年代のストリートファッション流行やアメリカでの人気も後押しし、G-SHOCKは日本でも絶大な人気を得た。

アメリカで話題になったテレビCMを再現したプロモーション動画の写真
アメリカで話題になったテレビCMを再現したプロモーション動画。G-SHOCKをアイスホッケーのパック代わりにしても壊れないことをアピールした

アメリカでは1985年に「G-SHOCK」を商標出願し、翌年登録。日本でも「CASIO G-SHOCK」(第2108671号、1989年登録)、「G-SHOCK」(第2424099号、1992年登録)を商標登録した。また、女性向けの「BABY-G」や、屋外使用に特化した「RANGEMAN」も商標登録。現在、G-SHOCKにまつわる商標の登録数はハウスマークの「CASIO」に次ぐ多さだ。

最新モデル「GMW-B5000」の写真
最新モデル「GMW-B5000」は、初代モデルの意匠を踏襲しながらフルメタル仕様を採用。生産が追い付かないほどの人気を博す

さらに、腕時計の本体だけでなく、特徴的な部分のデザインも保護するため、積極的に部分意匠などを出願。G-SHOCKの独創的なアイデアとデザイン、そしてブランドは、今なお大切に守られている。

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