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Vol.50
広報誌「とっきょ」2021年11月22日発行号

特集1

IP活用は地方創生の切り札

EXPERT INTERVIEW
ウィズコロナの地方創生 いま必要なIPって何?

わたしがこたえます!

キャリアシフト株式会社代表取締役
総務省委嘱 地域情報化アドバイザー

森本もりもと登志男としお

1986年京都大学工学部卒業後、ジャストシステム、Microsoft Corporation(米国)などの勤務を経て、2017年キャリアシフト株式会社を設立。佐賀県最高情報統括監(CIO) や、岡山県特命参与(情報発信担当)なども歴任。全国の地方活性化に幅広く関わる。

森本 登志男氏
オンラインの時代だからこそ 知財の権利化が大事

各自治体・企業が取り組んできた地方創生は、コロナ禍によってほぼ白紙に戻ったと言っても過言ではありません。近年のインバウンド特需も鳴りを潜め、一から考え直さなければいけない事態に陥っています。そうした現代の状況を俯瞰して見ると、自治体・企業は明らかに二極化してきているといえるでしょう。一方は、行政の予算を当てにコロナ禍が過ぎ去るのを待つ受け身の組織。もう一方は、今できることを頑張ろうとオンラインを活用しさまざまな取組を進める組織。アフターコロナを見据えたときに、生き残るのはまず後者で間違いないと思います。例えば、観光客が遠隔で参加するリモートツアーを積極的に企画している事業者は、「場所に縛られない」という利点から幅広い層のユーザーを獲得しつつあり、そうしたユーザーがコロナ禍以降においては固定客として付いてくれる可能性は大いにあります。

オンライン時代の地域・企業の活性化には、大規模な設備投資は必須ではありません。しかし、その反面アイデアが他者に盗まれやすいという危険性もはらんでいます。そこで大事なのが商標などの知財であるといえるでしょう。

SNS隆盛の現代は、「拡散の時代」とも言い換えることができます。独創的なイベントやブランドを立ち上げ、それらの名称などをキーワードにSNSで発信し拡散につながり、ユーザーが増えるという流れが素早く進行する時代です。そうしたプロセスが全てデジタルで展開していく。だからこそ、他企業によってSEO対策などに投資がなされると、瞬く間にユーザーが奪われてしまいます。そうしたアイデアの盗用に対してきちんと法的な対抗手段が取れるよう、イベント・ブランドの名称やロゴを商標として権利化することが重要だと考えられます。

一方で、鯖江市に多くあるような技術力を売りにする中小企業にとっては、特許が意味を持ちます。自社の技術を守ることはもちろん、後継者不足を背景に、M&Aによる事業の継承が増えていますが、この際、特許が自社に有利な交渉を進めていくための大切な材料となります。また、今の時代、さまざまな資金調達の手段がありますが、自社の価値を明確に示せる特許は、出資者からの評価に大きく影響を与えるはずです。

新型コロナウイルス感染症拡大や、テクノロジーの進化・多様化などさまざまな要因によって見通しが立ちづらい時代だからこそ、自社を守るため、価値を上げるための知財が重要であるといえます。

眼鏡をはじめとしたものづくりの町
福井県・鯖江市

福井県のほぼ中央に位置し、人口約7万人を有する鯖江市。恵まれた自然と眼鏡、繊維、漆器の三大地場産業を持つ。

これまで、有数の眼鏡産地であることを軸に、自治体と次世代を担う若手経営者とが一丸となって地域ブランド力を高めてきた。眼鏡の観光産業化を進め、国の公募による「めがねのまち鯖江」元気再生事業では2009年「東京ガールズコレクション」にて眼鏡を発信。市民の市政参加を促す「鯖江市民主役条例」の制定など、眼鏡だけにとどまらない地方創生に積極的に取り組んでいる。近年では、ものづくりの工房・企業を集めて一斉開放する体験型の見学イベント「RENEW(リニュー)」を開催し、さらなる注目を集めている。

メガネストリート
メガネストリート

鯖江駅から「めがねミュージアム」までの道を「メガネストリート」として整備。「鯖江=眼鏡」を演出する眼鏡モチーフが町のあちこちに点在し、訪れる人々を楽しませている。

めがねミュージアム
めがねミュージアム

鯖江市のランドマーク、「めがねミュージアム」。「めがねShop」や「体験工房」、歴史が分かる「めがね博物館」があり、眼鏡を見て、触れて、体験することができる。

めがねミュージアム
所在地/福井県鯖江市新横江2-3-4めがね会館
TEL/0778-42-8311

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