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Vol.50
広報誌「とっきょ」2021年11月22日発行号

特集1

IP活用は地方創生の切り札

TOP RUNNER INTERVIEW

職人が誇りを持てる会社、そして町を目指して

福井県・鯖江市
株式会社 西村プレシジョン

代表取締役社長 西村昭宏

1978年生まれ、鯖江市出身。大学卒業後勤めたIT関連企業を退職し、25歳頃、家業の株式会社西村金属に入社。2012年6月西村金属の関連企業である西村プレシジョンの代表取締役社長に就任。鯖江商工会議所青年部・監事、日本商工会議所青年部・筆頭副会長も務める。

西村昭宏
西村昭宏

元気のない故郷に帰って 家業で異業種へアプローチ

鯖江の人って鯖江のことが好きなんですよ。日本一社長が多い町といわれていますし、人口7万人ですが、「平成の大合併」の時も他市町と合併しなかった。自分たちで生き抜く自負がある。眼鏡産業への思い入れも強いですね。私も例に漏れず、大学で県外に出ても「いずれは家業である西村金属の眼鏡製造を手伝う」という思いがありました。

そして2003年、父に「家業が大変だ。こういう時こそ家族で頑張ろう」と言われ、東京で勤めていた会社を辞めて西村金属で働き始めました。その頃は町に元気がないのを肌で感じましたね。というのも2000年から眼鏡の生産が中国に一気にシフトし始め、2003年までに売り上げが半減するような状態だったんです。

西村金属は20年前まで売り上げの全てが眼鏡の部品でした。でもそれだけではやっていけない状況になったので、思い切って違うことをしようと考えました。それからはこれまで培ってきた職人のスキルと設備を生かしてチタン加工に特化した会社となり、今は金属部品や半導体など眼鏡以外の業界の部品製造が80%を占めています。

異業種への転換で大きなポイントとなったのが、当時普及し始めたインターネットです。「自社ではこういうチタンの加工ができます」という情報を発信したんです。これは父から大きな反対を受けました。「積み上げてきたノウハウが盗まれたらどうするんだ」と。ですが私は、WEBに少し情報を出したくらいでは盗めないという確信がありました。また、いくら優れた技術を持っていても、「何ができるか」が分からないとお客さんは仕事を依頼できません。なんとか父を説得しWEBでの発信を続けた結果、事業は波に乗り、2003年からの5年間で売り上げが2.5倍にV字回復しました。

今では他の鯖江の企業にも、医療部品の製造などさまざまな業界の仕事が舞い込むようになりました。背景には、私も関わり2009年に設立した「チタンクリエーター福井」の存在も少なからずあると思います。これは西村金属と同じような仕事をしている鯖江の会社が集まった集団ですが、眼鏡関連以外の仕事はノウハウを共有しながら共同で仕事を受注しています。これによって自社のキャパシティーを超えた仕事も協力してできるようになり、地域に「眼鏡以外の分野でもやっていこう」という思いも芽生えていきました。

出来上がったペーパーグラスの最後の仕上げの行程「調子取り」
出来上がったペーパーグラスの最後の仕上げの工程「調子取り」。バランスを取りながらすっきりと平たんに仕上げるのは難しく、手作業での高い技術が要求される。
鼻パッドなしでもすっきりと鼻先に収まる、レンズをつなぐブリッジのデザインも特徴。老眼鏡をはじめ、常用眼鏡のOPシリーズ、サングラスをそろえる。
鼻パットなしでもすっきりと鼻先に収まる、レンズをつなぐブリッジのデザインも特徴 鼻パットなしでもすっきりと鼻先に収まる、レンズをつなぐブリッジのデザインも特徴
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