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Vol.50
広報誌「とっきょ」2021年11月22日発行号

特集1

IP活用は地方創生の切り札

自慢の商品の特許取得が 第二創業の決め手に

異業種の分野では他社と協働する一方で、眼鏡に関する仕事については独自性を追求したいという思いもあります。

今、私は西村金属を離れてペーパーグラスを製造・販売する西村プレシジョンの代表を務めています。ペーパーグラスは畳むとフラットになる、携帯性と機能性、デザイン性を兼ね備えた眼鏡です。実は2003年に同様のコンセプトの眼鏡が父の発案で商品化されていました。残念ながら1度生産しただけで終わったのですが、私は「いい商品だな」と可能性を感じていました。

その後、2008年のリーマンショックで下請けの限界を知り、経営のために直販をする必要性を痛感しました。また、以前から西村金属は兄が継ぐ予定で、私は私で事業を起こしたいという思いもありました。そうした中で、第二創業の決め手となったのがペーパーグラスの特許取得でした。

特許は、商品価値を維持するために重要なもの。これがないと、いくらいい物を作っても他社にまねされて価値が維持できない。中小企業は特に、商売が成り立たなくなります。ですのでペーパーグラスの商品力だけでなく、価値を守る特許の両方が備わったことで事業としてやっていけると思い2012年に第二創業しました。

特許の必要性は父も感じており、以前から出願していましたが、なかなか取得できなかった。そこで出願内容を見せてもらったところ、「畳むと薄くなる」という点だけに着目していたんです。しかしペーパーグラスの特許としての価値はそこだけではありません。リムとテンプルをつなぐ智と呼ばれる部分が、通常の水平ではなく斜めに下がっているおかげで畳むと薄くなり、また顔にフィットする。この点に着目することで特許を取得できたので、申請内容の大事さを実感しましたね。

㎜単位の小さなネジやブリッジの成形から調子取りの工程
㎜単位の小さなネジやブリッジの成形から調子取りの工程

mm単位の小さなネジやブリッジの成形から調子取りの工程まで、それぞれに職人がおり、工程数は100を超える。
2018年に新設した西村金属工場を中心に製造を行っている。

眼鏡作りを理想の仕事に 安心して働ける町をつくりたい

ペーパーグラスは老眼鏡から始まりました。百貨店の催事場などでお客さんに話を聞くと、「時計や宝飾品はワクワクして買える場所があるけど、老眼鏡はそうした場所も商品もない」「いつもコソコソと買っている」と言うんです。そうした声を受けて改良を重ね商品化し、売り場をつくってきました。いずれ「ペーパーグラス」が、「老眼鏡」という言葉に成り代わるくらい普及させたいですね。

その結果、鯖江の眼鏡産業に関わる人みんなが安心して働ける社会づくりにも貢献できればと考えています。ペーパーグラスを作る工程で10社が関わっていますが、そこの職人が不安を持ちながら働き続けることがあっては駄目ですし、どうせなら理想の仕事であってほしい。スイスの町・バーゼルは、地場産業の時計製造がブランド化・観光産業化されていて、さらに職人がマイスター制度で守られています。働くことが安心して生活できる手段であり、誇りになっている。鯖江もそんな町にしたいんです。例えば他業種と連携して自慢の眼鏡をさらに観光産業化していけるような、そういう取組を少しずつ進めているところです。

PROFILE

株式会社西村プレシジョン

1993年に株式会社西村金属の貿易部門として設立。2013年からペーパーグラスの販売を開始した。眼鏡や眼鏡部品の企画製造、仕入れおよび販売、精密機械部品の仕入れおよび販売などを行う。

所在地/福井県鯖江市丸山町3-5-18
TEL/0778-51-0127
URL/https://www.paperglass.jp (外部サイトへリンク)
設立年/1993年
業種/製造業
従業員数/50名

株式会社西村プレシジョン
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