• 用語解説

ここから本文です。

Vol.53
広報誌「とっきょ」2022年8月1日発行号

特集1:ソニーグループ株式会社

「技術の向上とユーザーの意識の変化——
二つが重なった今だからこそ、新領域に挑みます」

 多種多様なイノベーションに取り組むソニーは、その長年培われてきた技術力を生かし、メタバース上でどのような空間をつくろうとしているのでしょうか。新規事業を模索する山口氏に、メタバースで実現を目指す「未来の顧客体験」について伺いました。

TOP RUNNER INTERVIEW
ソニーグループ株式会社 執行役員 長谷川 一明氏のプロフィール写真

ソニーグループ株式会社 執行役員

山口やまぐち 周吾しゅうご

ソニーにて、グループ横断で技術者とクリエイターを繋ぎ、ソニーの技術を活用した新しいエンタテインメント体験の創出活動を実施。エンタテインメントの3次元化として、撮影の3次元化であるバーチャルプロダクションやボリュメトリックキャプチャスタジオ、メタバースでの事業探索を推進する。

PROFILE

ソニーグループ株式会社	社屋外観

ソニーグループ株式会社 ゲーム&ネットワークサービスや音楽、映画などのエンタテインメント分野やカメラやスマートフォンなどのテクノロジー&サービスをはじめ、事業内容は多岐にわたる。 [所在地] 東京都港区港南1-7-1
[TEL] 03-6748-2111
[URL] https://www.sony.com/ja/(外部サイトへリンク)
[設立年] 1946年
[業種] 電気機器
[従業員数] 108,900人(連結)(2022年3月)

技術披露ではなくファンに
楽しんでもらうための空間に

ソニーは、2016年から展開しているPlayStation®VRをはじめ、いろいろな製品や技術の開発をしています。最近ではそれぞれの技術が次第に高まってきたことにより、ユーザーのニーズと合致するレベルに近づいてきました。一方で、ユーザー側もコロナ禍の影響でリアルな会場ではなくオンラインライブなどのコンテンツに参加することも身近になっています。技術の向上とユーザーの意識の変化——この二つの状況が重なった今こそが、メタバースという新しい領域に挑戦するまたとない機会だと判断しました。

私たちのチームではリアルとバーチャルを組み合わせてできることを開発しています。具体的な例の一つがバーチャルプロダクションという映像制作システムです。これはまず街などの背景をデータ化しバーチャル空間に再現します。そして撮影スタジオ内のパネルに映し出し、カメラの動きに合わせてリアルタイムに背景が動くというものです。これも仮想空間の活用例といえますね。

人物や物体を多数のカメラで撮影し、3Dで高品位に再現するボリュメトリックキャプチャ技術にも取り組んでいます。この技術を用い、ライブ中のアーティストをCG背景の中に配置し、その様子を配信しました。またマンチェスター・シティというサッカーチームのスタジアムを再現して、場内の好きな場所から試合を観戦できたら面白いなと思っています。

私たちの武器は技術力ですが、真に重要なのはファンに楽しんでもらうことですよね。だから音楽ファンやサッカーファンといったコミュニティに属する方々に「メタバースでどんなことができると楽しい?」と必ず聞いてます。その声をヒントに、「リアル空間をいかに再現するか」だけでなく、バーチャルでしかできないことを盛り込み、音楽、スポーツ、ゲームなどいろいろなジャンルで、今までにない新しい体験価値を提案したいと考えています。

ソニーが培ってきた技術が
メタバースで結実する

メタバースは幅広い技術の上に成り立っており、その意味でも、私たちがさまざまな事業で培ってきた技術が生かせる場でもあります。カメラ、センシング、音、映像表現、リアルタイムの処理……どれもメタバースでは欠かせない要素ですが、これらはソニーが得意とするフィールドでもあり、すでに多くの特許を取得しています。

これに加えて、メタバースならではの技術も開発しています。例えば「イマーシブリアリティ・コンサート」でアーティストの動きを処理して仮想空間に映す場合、膨大なデータ量になるんですね。ボリュメトリックで人物を撮影する場合には50台、100台のカメラを使うわけですから。なので、この膨大なデータを送受信するための伝送領域がこれからポイントになるのではないかと考えておりまして、集中的に技術を開発し、特許を出願しています。

また、データの伝送フォーマットなどの標準化活動にも積極的に参加しており、標準化活動とリンクして特許出願を行うことで、標準化の中での私たちの貢献を可視化しています。

ページTOPへ

BACK NUMBER
広報誌「とっきょ」バックナンバー