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特集1
医療をはじめ、バイオ・IT・ロボット・AIなど、各分野の最新技術が集積するヘルスケアの世界。
日進月歩で変化を続けるヘルスケア知財の最新動向を俯瞰し、
日本の新たな成長の可能性につながる「産学連携」と「スタートアップ」の最前線をレポートする。
超高齢化に直面する日本社会にあって、医療や介護、QOL(生活の質)などに関わるヘルスケア市場は貴重な成長分野だ。知財ランドスケープ代表・山内氏(2ページ目参照)は、「生産年齢人口の減少に悩む日本の姿は、数十年後の世界の姿です。〈課題先進国〉と呼ばれる日本が、知財の力を総動員して解決モデルを提示することができれば、それは次代の世界標準になり得る。ヘルスケア市場は、日本の産業の生き残りを懸けた重要な戦略セクターです」と、その可能性に注目する。
鍵となるのが、「エコシステム」と称される知財を事業化に導く社会の仕組みだ。大学や研究機関、スタートアップの持つ技術や特許と、ベンチャーキャピタルや大企業の資本とを結び付けるネットワーク(さらに、専門知識でサポートする弁護士やコンサルタントなどが加わる)を指し、シリコンバレーが発祥の地とされる。
「アメリカには他にも数多くの土地に、エコシステムの強固な伝統が存在しています。一方、国策として徹底的な産官学連携や優秀な人材の囲い込みを行って猛追しているのが中国。この先行する二つのモデルに対抗できる、日本の社会に最適化された仕組みを構築することが、喫緊のテーマといえます」(山内氏)
そこでこの特集では、産学連携でイノベーション創出に取り組む東京医科歯科大学と、AI技術で脳医療の新領域を切り開くスタートアップ・株式会社Splinkの事例を紹介し、ヘルスケア知財の新しい未来を探っていく。