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特集1:進化するヘルスケア
株式会社知財ランドスケープ
代表取締役CEO・弁理士・AIPE
認定シニア知的財産アナリスト
山内 明氏
大手メーカーや大手特許事務所、シンクタンク勤務を経て、IPランドスケープ実践に役立つ知財情報戦略を確立。2020年に知財ランドスケープ代表取締役CEOに就任し、ビジネスコンサルティングに注力。
ヘルスケア分野は、規模の大きさ、成長率の高さともに有望な市場で、知財活動も一層活発化しており、IPランドスケープによる戦略提言へのニーズも高まっています。私が2017年に主要な全産業を概観する大規模な分析を行った際、DX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいる印象を抱いたのがヘルスケア業界でした。先日も、私が代表を務めるIPL経営戦略研究会のメンバーがGAFAMの特許情報を分析し、コロナ禍もあってデジタル化が加速するヘルスケア市場に、IT大手が積極的に進出している状況を明らかにしています。アメリカだけでなく中国勢の台頭も顕著です。
IPランドスケープの視点からは、ヘルスケアは大きく3カテゴリーに区分できます。1つ目は医療機器関連、2つ目は健康管理や行動変容を促すDX関連、3つ目がアンメット・メディカル・ニーズ(有効な治療法が確立していない疾患に対する医療ニーズ)の高まりなどで期待される新薬関連です。
日本が伝統的に強みを発揮してきた医療機器などについては、ビジネス関連発明の特許出願が増加傾向にあり、製品を売り切る「モノづくり」から、サービスを継続提供する「コトづくり」に移行する動きが認められます。「コトづくり」は、既存の大手メーカーに限らず、スピード感で勝るスタートアップ企業がゲームチェンジャーになれる機会も少なくない分野です。オンライン診療や健康管理などのDXサービスの隆盛も、「コトづくり」のトレンドに含めることができるでしょう。
体内を立体画像で確認し、手術を行うロボットが実用化。介護ロボットの開発も進む。
生理用品・月経前症候群・不妊治療・更年期ケアなど、女性特有の悩みに応える分野。
臓器や骨モデルを作成しての外科手術支援、血管などの医学教育用シミュレーターに活躍。
NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)と介護DBの連結解析など。
睡眠時間や心拍数計測、心電図機能などバイタルデータと健診の連携サービスにも注目。
膨大な費用と時間がかかる新薬開発や、脳などの画像解析にAIの応用が進んでいる。
食事内容を入力して栄養バランス分析やカロリー計算を行ったり、基礎データを管理。
DNA情報を基に、先天的な健康リスクや体質を分析。「オーダーメード医療」実現の鍵。
モバイル端末などで、自宅で診察や服薬指導を受けられる。医療過疎地域でも威力を発揮する。