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Vol.57
広報誌「とっきょ」2023年8月8日発行号

特集1:国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)

JAXAの知財を積極利用し宇宙産業を活性化したい

大きな可能性を持ったデブリ除去の事業化

JAXAは保有する特許技術や知見を民間企業に積極的に提供し、協業の機会を作り出しています。大きなポテンシャルを持つ事例の一つが、現在進行中の「商業デブリ除去実証(CRD2)」プロジェクトです。衛星などの宇宙機が急増する中で、スペースデブリ(宇宙ゴミ)問題の解消は、国際的にも喫緊の課題。JAXAが目指すのは、世界初となるデブリ除去技術の実証と事業化によって、新市場を開拓し、民間の宇宙産業育成に貢献することです。本プロジェクトはフェーズⅠ(軌道上のデブリの観察)と、フェーズⅡ(実際のデブリの除去)に分けて進めており、フェーズⅠのパートナー企業にはアストロスケールさんを選定し、技術アドバイス・ノウハウや試験設備の供与、知財や研究成果の提供を行っています。デブリ除去の実現は、宇宙状況把握(SSA)などの観点から、JAXAのミッションの一つである「安全保障の確保」にもつながるものです。

国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 理事 佐野 久氏
知財を事業に活用してぜひ社会に還元してほしい

JAXAの知財利用に当たっては、基本的には適正な利用料を申し受けています。ただしライセンスで利益を上げることが最終目的ではないので、2021年実績で実施料収入は一億円程度です。JAXAの保有する知財は公共性の高いものであり、これによって日本の宇宙産業が活性化することを目指すのが基本です。企業がJAXAの知財を事業に活用して得た利益を社会に還元してもらい、日本の宇宙産業のパイそのものが拡大することがベストシナリオですね。例えば航空産業ではそのような構図が先行して実現しています。それにならって、宇宙産業の基盤強化や体質強化を支える制度設計を、今後さらに進化させていきたいと考えています。

JAXAの知財活用事例の一部
企業 JAXA技術の概要 成果
多摩川精機株式会社 防振(振動絶縁)技術 無搖動防振装置の開発
株式会社キャンドックスシステムズ 広範囲に放射するアンテナの特許 小型ブロードビームアンテナの開発
春日電機株式会社 「はやぶさ2」のイオンエンジン技術 マイクロ波プラズマ除電処理システムの開発

©JAXA

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