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特集1
高度成長期に「即戦力の技術者養成」のニーズに応えて登場した高等専門学校(高専)が、グローバルビジネスのトレンドに沿った専門教育で、改めて注目されている。その流れは、高専が従来から持つ「地元密着」という特性と結びついて、地域産業のDXも推進していく。次代の知財の担い手の宝庫である、高専の最前線をレポート。
日本最初の高等専門学校(高専)12校が設立されたのは、高度経済成長のただ中の1962年。産業界の強い要望を背景に、中学校卒業者に5年間にわたる技術者教育を行う高等教育機関として、「ものづくり大国・日本」の発展を支え続けた。
現在、日本には58校の高専(国立51校・公立3校・私立4校)が存在し、毎年約1万人が入学する。本科を修了した学生の6割が就職し、残り4割は、より高度な専攻科への進学、国内外の大学への編入や留学、起業など、多様な進路を歩む。5年間一貫の専門教育システムは海外にも類を見ないもので、モンゴル・タイ・ベトナムなど、「KOSEN(日本型高等専門学校教育制度)」を導入する国も登場している。
現代の高専は、デジタルやバイオなど最先端分野の人材育成機関という側面でも期待を集める。数理・データサイエンス・AIの基礎知識を全国民に求める政府の「AI戦略2019」に積極的に呼応したのも高専で、すでに国立高専全51校が「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(リテラシーレベル)」に認定されている。
本特集では、全国51校の国立高専を設置する国立高等専門学校機構(高専機構)理事長に、高専が今どのような変化を迎えているかを聞き、先進的な取組を行う高専2校の現場を取材した。
高専教育の質保証サイクル
2000年代に入り、高等教育において「学校が何を教えたか」から「学生が何をできるようになったか」への質の転換が図られた。高専機構は、高専教育の質の保証および向上のため、モデルコアカリキュラムを策定している。
資料提供:独立行政法人国立高等専門学校機構