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特集1
ロボットやAIを活用した「物流最適化」「省人化・無人化」など、活性化する「スマート物流」。コア領域の技術や最前線のソリューションを俯瞰し、喫緊の課題である「物流2024年問題」の解決に向けて、知財が果たしていく役割を探る。
働き方改革関連法により、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の上限が年間960時間に制限されたことでクローズアップされた「物流2024年問題」。全国的なドライバー不足や輸送力低下に対策を講じない場合、「輸送力は2024年度には14%、2030年度には34%不足する」という試算に危機感が漂った。
ただし同時に、典型的な労働集約型産業とされる物流業界において、生産性向上や業務効率化に根本から取り組む契機にもなっており、「物流革新」の取組が官民で進められている。2024年5月に日本郵便とセイノーHDが異例の長距離共同輸送の業務提携を発表すると、同月にヤマトHDも共同輸送の新会社を設立するなど、業界再編も加速している。
知財も、物流革新で重要な役割を果たす。共同輸送ルートのマッチングシステムや産業用ロボットの汎用制御コントローラーなど、特許技術を活用して社会実装されている事例も多い。
特許庁は、令和4年度の「特許出願技術動向調査」のテーマの一つに「スマート物流」を選んだ。スマート物流を「物流×自動化技術やITの活用」と定義し、「物流最適化のための共有情報の活用」や「省人化・無人化技術の開発・活用」、「高品位な物流サービスの展開」などを提言している。
本特集では、知財活用の具体像を追い求め、物流専用ドローンが導く新しい市場の創出と、複数種のロボットを協調制御する技術による倉庫の自動化という、最先端の二つの事例を紹介する。