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特集1:株式会社エアロネクスト
「ドローンを活用した物流事業」で、地域社会の課題解決に取り組む株式会社エアロネクスト。地上150mの空域の経済化という新市場の創出を、特許を取得している重心制御技術の開発とビジネススキーム構築の両面から推進していく知財戦略の全体像について話を聞いた。
株式会社エアロネクスト
代表取締役CEO
田路 圭輔さん
1991年、株式会社電通入社。1999年に電通と米ジェムスター社が共同設立した株式会社インタラクティブ・プログラム・ガイド(IPG)の代表取締役社長を2005年から務め、「Gガイド」の普及を推進する。2017年に株式会社DRONE iPLAB(DiPL)を共同創業し、同年、資本業務提携を機に株式会社エアロネクストの代表取締役CEOに就任。2021年にドローン物流の戦略子会社株式会社NEXT DELIVERYを設立、代表取締役に就任。
PROFILE
株式会社エアロネクスト
[所在地] 東京都渋谷区恵比寿西2-3-5石井ビル6F(本社)
[URL] https://aeronext.co.jp(外部サイトへリンク)
[設立] 2017年
[事業内容] 産業用ドローン関連技術のライセンス事業、産業用ドローンの共同開発事業
[従業員数] 34人(2024年8月時点)
2017年の会社設立時、中国製の空撮用ドローンが市場を席捲していましたが、私は今後の産業ドローンは物流分野に巨大な可能性があると感じていました。人々の生活に密着した領域であり、大量のドローンの需要と高い稼働率が見込まれます。ただし当時の空撮ドローンの機体構造は、荷物を積むと重心バランスが崩れて傾いてしまい、物を運ぶのに不向きでした。それに対して、当社の特許技術「4D GRAVITY®」は、飛行部と搭載部を分離させて安定した重心制御を実現するもので、これにより燃費効率も高まり、速度も向上します。ドローンが社会全体で本格的に運用されるステージが来た時、「より早く、より遠く、より安定的に」という要求に応える標準的な技術になり得ると考えていました。
標準的な技術を実際にビジネスにする時、一番良い方法がライセンスです。 一般に特許は「自社の製品や技術を守る」ことに思考が向きがちですが、当社の発想はむしろ、「自分たちの技術を最速で世界に流通させる」ために特許を使うというものです。私はIP(知財)経営というモデルを非常に重視しており、簡潔に言うと、まだ市場が存在しない時点から強固な特許ポートフォリオを固め、それが強みを発揮する市場をデザインして、ブランド効果を合わせていく考え方です。当社の中核にあるIP経営戦略と、ドローン物流の分野で実践した市場創造の取組について、詳しくお話をしていきます。
「4D Gravity®」は、飛行部と搭載部を分離させて「貫通ジンバル構造」でつなぎ、安定した重心制御を実現する機体構造設計技術です。ドローンの基本性能全般の向上に資するだけでなく、多様な産業用ドローンの機体フレームに活用できます。当社は、空撮・物流・点検・測量・警備などさまざまな用途を想定して、4D GRAVITY®を搭載した「Next」シリーズの技術開発をしています。特に、人を運ぶドローン「Next MOBILITY®」の試作品開発まで到達したことで、重心制御技術を使ったドローンのひとまずの究極形を示せたのではと考えています。
そこで現在、エアロネクストは構造技術の開発だけでなく、システムやソフトウェアの事業領域へのシフトを進めています。これもまた、特許ポートフォリオに最初から織り込んでいた戦略の一環です。(田路代表取締役CEO)
画像提供:株式会社エアロネクスト