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Vol.62
広報誌「とっきょ」2024年10月28日発行号

特集1:株式会社エアロネクスト

ドローン物流の新市場を創出し
未来の社会を見通す「知財経営」

ドローン物流の全体像を提示してみせたSkyHub®

物流に特化した戦略子会社NEXT DELIVERYを設立し、地方自治体や各分野の企業との提携を行いつつ、ドローン物流のモデルを示したのがSkyHub®事業です(詳細下図)。ライセンスビジネスを成功させるには、「一定時期、上流と下流を自分たちでコントロールする」というセオリーがあります。ライセンスして製品を作るだけでなく、その製品が使われるマーケットも自分たちでデザインしていく必要があるのです。

ついドローン起点で考えてしまいがちですが、あくまで物流ビジネスとしての最適解を求めることが重要です。従来の課題として、市街地ではトラックで荷物を配送できても、過疎地では不採算になってしまう「ラストワンマイル問題」がありました。仮に各運送会社の荷物を集約して配送効率を改善しても、人手不足の問題もある。そこで過疎地の低空域であれば自由に飛行可能なドローンと掛け合わせる、というストーリーまで全部パッケージしたのが、SkyHub®です。

将来的には、地域物流は公共インフラの領域に向かうと予想しています。SkyHub®は順調に拡充していますが、これを最終型と考えずに対応していく必要があります。私が重視するのは、保有資産を軽くし、無形資産を戦略的に活用する経営。SkyHub®も、立ち上げ当初のように全て直営で行うのではなく、地域の物流会社に当社のパッケージをライセンスして運営してもらうビジネスを推進する段階に入っています。最終的には、ドローン配送というバリューチェーンから生まれる全ての事業活動をライセンスモデルに転換していくのが、SkyHub®のゴールです。

地上150mの低空域を経済化する新スマート物流「SkyHub®」

セイノーHDと共同開発し、「地上と空のインフラ接続」を実現した新スマート物流の仕組み。幹線道路を走るトラックなど既存の物流インフラで届いた荷物を、倉庫兼拠点のドローンデポ®からドローンで山間部や過疎地に配送。2020年に山梨県小菅村と協定を締結、その後各地の自治体と提携し、10カ所以上で社会実装を行っている。買物代行やフードデリバリーなど、多様なサービスに派生している。

地上150mの低空域を経済化する新スマート物流「SkyHub®」
「時間価値」が可視化された時、ドローン産業は爆発的に拡大する

今年1月の能登半島地震の時、当社のドローンも物資や医薬品を運び、支援に貢献する機会がありました。過疎地域で新スマート物流を始めた当初から、こうしたニーズが生じるようなケースを予測して、準備していたのです。かつて私が「ドローンはインフラだ」と主張した時、皆は当惑しましたが、私が言わんとしたのは、鳥と電波しか飛んでいない低空域とドローンを掛け合わせることで、新たな経済活動や社会活動が生まれるビジョンでした。

そもそも私がドローンに興味を持った理由は、人間の身体を拡張する道具だからです。また、インターネットという革新的な発明がいまだ達成していない「フィジカルなものの瞬間移動」の担い手としても、大きな魅力を感じます。

人間にとって最重要なアセットは時間です。多くの人はまだ、自分の意志で行動する時間は無料だという錯覚に基づいて生活していますが、いずれそのような感覚が急速に変容すると思います。「時間価値」が可視化された暁に、人間を膨大な手間やコストから解放する手段として、ドローン産業が爆発的に拡大すると予測しています。現在は、その未来に至るビジネスのステップを設計しているところで、知財戦略においても、その新しい価値観を示す概念の商標化などを積極的に進めています。

2023年12月の北海道上士幌町での実証実験では、日本初の「ドローン飛行レベル3.5」での配送を実施
2023年12月の北海道上士幌町での実証実験では、日本初の「ドローン飛行レベル3.5」での配送を実施

イラスト:かざまりさ

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