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Q5. 特許権の間接侵害

Q: 我が社が特許を有する製品の模倣品が、日本で流通し始めました。出所を調べたところ、その模倣品は完成品としてではなく、部品として輸入され、国内で組み立てられていることがわかりました。上記の部品は、我が社の製品の製造以外には使えないものです。この輸入行為を、特許権の侵害を理由に止めさせることはできるでしょうか?

A:

特許権の侵害とは、本来的には、特許権者に無断で、特許発明の内容(構成要件)全体の実施をすることを指すものとされており(これを「直接侵害」と言います。)、一部のみの実施や、異なる態様での実施は特許権の侵害とはならないものとされています。

この点、質問の場合で言えば、特許製品の「完成品」の生産、使用、譲渡等を行う行為が、上記の「全体の実施」にあたります。 よって、ご質問にあるような部品の輸入行為は、全体の実施とはいえない以上、本来的な特許権侵害にはあたらないことになります。しかし、ご質問の内容から判断する限り、上記輸入部品は、本来的な特許権侵害行為にあたる模倣品の製造行為に使われていることは明らかといえ、特許権の十分な保護を図るためには、かかる行為も特許権侵害にあたるとする必要性は高いといえます。また、輸入の際にこれを特許権侵害行為として差止めることができれば、その後の、模倣品の製造・販売という特許権侵害行為を水際で効果的に防ぐことが可能となるでしょう。

そこで、特許法第101条は、上記のように、特許発明の内容全体の実施に至らない場合でも、特許権侵害を誘発する可能性が高い態様の行為については、同条第1号から第6号までに列挙して、これらの行為を特許権侵害(これを「間接侵害」と言います。)にあたるものとみなして、禁止しているのです。この点、上記の第1号から第6号までのうち、第1号は、「特許が物の発明についてなされている場合において、業として、その物の生産にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」を間接侵害にあたるものとして規定しています。例えば、特許になっているテレビの完成品の組み立てに必要な一切の物をセットで輸入するような行為がこれに該当します。

ご質問にある部品の輸入行為も、上記第1号に該当するならば、これを間接侵害として特許権侵害行為とみなし、その差止めを行うことが可能となります。

この点、第1号においては、その物の生産に「のみ」用いるという「のみ」の意味について文言上明らかではありません。かかる文言は、特許製品の生産に用いる以外に「他の用途がないこと」を言うとされていますが、「他の用途がないこと」とは具体的にどのような場合を指すのかについて、判例・学説上争いがあります(この点、平成14年4月25日大阪地裁判決は、社会通念上、経済的、商業的又は実用的であると認められる他の用途がないことを要すると判示しています。)。

もっとも、ご質問にある模倣品の部品は、当該模倣品の製造以外に使用できない部品であるとのことですから、上記の文言について、どのような解釈をとったとしても、特許製品の生産に用いる以外に「他の用途がない」ものと言うことができ、上記第1号の、「その物の生産にのみ用いる」部品であるものと言えるでしょう。

よって、ご質問にある模倣品の部品の輸入行為は、特許法第101条第1号により特許権侵害の行為であるものとみなされ、特許法第100条第1項第2項の輸入の差止めや廃棄を求めることができるほか、関税法第69条の11第1項第9号及び第69条の13第1項により、「特許権を侵害する物品」として、その輸入の差止めを申立てることが可能となります

 

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[更新日 2024年2月14日]

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