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Vol.38
広報誌「とっきょ」平成30年8・9月号

大ヒット商品の歴史を辿る
あのとき、あの知財

サントリーウイスキー角瓶
(サントリースピリッツ株式会社)

長く愛されているロングセラー商品や、一大ブームを巻き起こしたヒット商品には、そうなるべき理由がありました。開発者の熱い想い、徹底したこだわり、伝統とブランド――発想と技術に裏打ちされ、長く守られてきた商品の歴史と今日に至るまでの魅力をひもときます。

サントリーウイスキー角瓶の写真
ボトル画像は一部修正を施しています

発売:1937年10月~
山崎・白州蒸溜所のバーボン樽原酒をバランスよく配合。芳醇な甘い香りと厚みのあるコク、ドライな後口が特長のロングセラーウイスキー。

日本発ウイスキーブランドが辿る、挑戦の歴史

スコッチに負けない日本のウイスキー

今、世界でも注目されるジャパニーズウイスキーの元祖、「サントリーウイスキー角瓶」。

本物の国産ウイスキーづくりを目指した創業者・鳥井信治郎氏は、1923年に日本初のモルトウイスキー蒸溜所「山崎蒸溜所」を開設。1929年に本格国産ウイスキー第一号「白札」を発売すると、その後も“スコッチに負けない、日本人に合うウイスキー”を求めて試行錯誤を重ねた。そして1937年、ついに納得のいくブレンドを完成させ、誕生したのが「サントリーウイスキー」である。

実は発売当時、「角瓶」の名はなかった。

基本ブレンドに苦心し、特急列車の食堂車や百貨店などでサンプル試飲を行うといった試行錯誤の末に完成したこのウイスキーは、日本人に受け入れられ、愛されていった。やがて食卓に馴染んでいくとともに、いつしか瓶のフォルムがそのまま愛称として定着したのだ。

ジョッキで乾杯をするイメージ写真

この「角瓶」の文字商標は、「瓶の形状を表しただけ」という理由で一度登録拒絶されたものの、実際には一般に広く認識されていること(商標法第3条第2項適用)から登録が認められた経緯がある。

80年以上変わらない堂々たる亀甲瓶

亀甲模様と黄色のラベルというデザインは、80年以上たった現在もほとんど変わらない。

芳醇な“日本らしい”味わいにふさわしいパッケージとして、当時、チーフデザイナー・井上木它氏が注目したのは薩摩切子の香水瓶だという。長寿のシンボルとして縁起のよい亀甲模様は、ウイスキーの琥珀色を美しく反射させ、欧米のウイスキーボトルとは違った存在感を放っている。

【左】本格国産ウイスキー第一号「白札」の写真  【右】角ハイボール缶の写真
【左】本格国産ウイスキー第一号「白札」 【右】角ハイボール缶

そして近年、「角瓶」は「角ハイボール」の人気によって新たな境地を得た。より手軽な「角ハイボール缶」も人気商品となったが、缶には瓶と同様に亀甲模様を配し、意匠権・特許権で保護。こうした続発的な権利保護によってブランドイメージが広く認知され、模倣リスク等の排除につながっている。

「角瓶」が愛される理由。それは、情熱の末に生まれた味わいと魅力的なデザイン、そして長い歴史をかけて育んだ強固なブランド価値にある。

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