ここから本文です。
3月8日は国際女性デー
知財の世界で女性たちが活躍中
3月8日は国際女性デー。本特集「知財を生み出す女性たち」では、知財を活用し新たな価値を生み出す女性リーダーたちに焦点を当てます。
彼女たちの実践知は、これからの知財戦略と組織づくりへの大きなヒントとなるはずです。

データが示す女性の活躍
研究開発や知財といった、いわゆる理系の仕事の現場は男性だらけ? いいえ、それは一昔前の話。日本の女性研究者の割合は、諸外国と比較すると高くありませんが、近年、日本の研究者と弁理士に占める女性の割合は、ともに増加傾向にあります(上図参照)。
知財を生み出すもとは多種多様
こうした中、本号では知財の世界で活躍する女性に注目します。スタートアップから大企業まで多岐にわたる現場で活躍する彼女たちは、組織や研究開発プロセスの第一線で、知財や技術の専門知識を活かしながら、知財活用や技術的発展を力強く推進しています。時には、育児等の経験を通じて身についた母親としての感性を活かすことも。
例えば、真に事業に必要な知的財産権の権利範囲を追求する戦略、不可能と思われるような夢を実現するための努力を続ける粘り強さ、日常生活の困りごとを見い出す着眼力、困りごとを解決するためのアイデアを考える発想力など、知財を生み出すもととなるものは多種多様。
彼女たちの知財を武器に世界へ挑むストーリーから、知財の世界で役立つ多くのヒントを見つけてみてください。
Interview01
ファイトケミカルプロダクツ株式会社
EXPO 2025 JPO-WIPO AWARD受賞
東北大学発のスタートアップ、ファイトケミカルプロダクツ。
特許取得の「イオン交換樹脂法」を用い、米ぬか由来の未利用油から高機能素材を生み出します。
加藤社長は、エンジニアの知見を活かし、特許とノウハウを使い分ける緻密な知財戦略を構築。
女性リーダーとして多様な人材が活躍する組織を率い、循環型社会を目指す同社の歩みについて伺いました。
特許とノウハウを戦略的に使い分ける
私は東北大学の出身で、卒業後はプラントエンジニアリング企業でエンジニアとして働いていましたが、結婚と出産を機に退職。しかし、下の子が1歳になる頃、恩師であり当社の技術の生みの親でもある北川尚美教授から声をかけていただき、大学に戻ることになりました。
イオン交換樹脂は、もともと水などの液体から不純物を除去する用途で広く利用されてきました。東北大学では、イオン交換樹脂が油中で反応と分離を同時に進行させる機能を持つことを発見しました。そして、米サラダ油の製造過程で副生する食べられない油から、微量成分であるビタミンEを低エネルギー・低溶媒条件で分離・回収できること、さらに、残りの成分を発電用燃料などに用いられる脂肪酸エステルへ変換できることを明らかにしました。当時、大学では基礎研究が進み、スケールアップを目指す段階にありました。そこで、私が企業で培ってきたプラント設計の知見と大学の研究成果を融合させ、実用化を推進することになりました。その後、大学発ベンチャー創出プログラムに採択され、2018年に事業化し、私が代表取締役に就任することになりました。
本技術の基本特許は当初、東北大学が保有していましたが、事業化にあたり、ビタミンE製造技術に関する知的財産権を有償にて大学から取得し、現在は当社が保有しています。
当社のビジネスは、自社で機能性素材を製造・販売する事業と、技術そのものをライセンス提供する事業の二本柱。知財戦略については、装置の構造や基本的なプロセスについては国内外でしっかりと特許を取得し、他社による容易な模倣を防ぎ、技術的な信頼性を担保します。一方で、装置を動かすための細かな温度管理や制御のタイミングといったノウハウについては、あえて特許にはせず、社内だけの秘密としてブラックボックス化。このように、特許とノウハウを戦略的に使い分けることで、技術流出のリスクを抑えながら、グローバルな展開を可能にしています。
特許権の取得に関しては、当初は研究論文をそのまま弁理士に渡してお任せするような状態でしたが、化学メーカーの知財部門出身の方から厳しいご指摘をいただき、どの範囲まで権利化すべきか、請求項をどう構成すべきかを社内で徹底的に議論し、戦略的に出願する体制へと変わっていきました。今では、知財への理解も深まり、自分たちで明細書の骨子を作成し、コントロールできるようになっています。
「女性活躍」が当たり前の社会へ
2025年、私たちは「EXPO 2025 JPO-WIPO AWARD」の女性活躍推進部門を受賞しました。大変光栄なことですが、私は「女性活躍」が当然になり、その言葉自体がなくなる社会が理想だと思っています。
理系・工学系分野では女性が少ないのが現状ですが、現場では性別による能力差などないことに気づきます。「女性だから」と遠慮したり、自分で枠を決めず、「やってみたらできる」ということを、次の世代にも伝えていきたいですね。
スタートアップの経営は資金調達など苦労は絶えませんが、将来的発展の基盤となるのが知財です。確かな技術と知財があることが、パートナー企業との信頼構築において大きな力となっています。私たちの技術は、米ぬか由来のものだけでなく、世界中の未利用油を価値あるものに変える可能性を秘めています。ここ宮城を拠点に、知財を武器に世界へ羽ばたき、循環型社会の実現に貢献していきたいと考えています。
EXPO 2025 JPO-WIPO AWARDの表彰会場で。左から特許庁長官・河西 康之氏、審査委員長・日野真美氏、ファイトケミカルプロダクツ・加藤社長、世界知的所有権機関(WIPO)事務局長・ダレン・タン氏
ファイトケミカルプロダクツ株式会社社
代表取締役
加藤 牧子さん
東北大学工学研究科・北川尚美教授の研究室の卒業生であり、プラントエンジニアとしての経験と技術士(化学部門)の資格を持つ。北川研究室で開発された世界初の「イオン交換樹脂法」を基盤技術とした東北大学発のスタートアップ企業を2018年に立ち上げ、CEOに就任。
ファイトケミカルプロダクツ株式会社
Interview 01
未利用資源を新たな価値に変える技術。
知財戦略で拓く循環型社会への道
ファイトケミカルプロダクツ株式会社
東北大学発のスタートアップ、ファイトケミカルプロダクツ。特許取得の「イオン交換樹脂法」を用い、米ぬか由来の未利用油から高機能素材を生み出します。加藤社長は、エンジニアの知見を活かし、特許とノウハウを使い分ける緻密な知財戦略を構築。女性リーダーとして多様な人材が活躍する組織を率い、循環型社会を目指す同社の歩みについて伺いました。
Interview 02
少数精鋭の特許権で「美しい特許網」を作る
AI医療の最前線
株式会社カルディオインテリジェンス
長時間心電図解析ソフトウェア「SmartRobin AIシリーズ」を展開し、医療のDXを推進するカルディオインテリジェンス。同社の急成長を支えるのが、共同創業者である波多野薫氏が提唱する「美しい特許網」です。第6回「IP BASE AWARD」スタートアップ部門奨励賞を受賞した独自の知財戦略と、多様な個性が活躍する組織づくりについて、波多野氏に話を伺いました。
夜空を巨大なキャンバスに!
世界初の人工流れ星へ挑む女性起業家の夢を守る知財力
株式会社ALE
「流れ星を作りたい」その夢を現実に。天文学者で二児の母、岡島礼奈氏が語る、宇宙ビジネスと知財活用の秘訣とは?
知財支援はINPITにおまかせ!
合名会社川敬商店
「INPIT知財総合支援窓口」は独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)が、47都道府県に設置している地域密着型の相談窓口です。中小企業をはじめとした企業の皆さまの経営課題解決に向け、自社のアイデア、技術、デザイン、ブランドなどの“知財”の面から支援を行います。
申請手続のデジタル化で利便性や迅速性が向上
日本で専売特許条例が公布されてから、2025年で140年となりました。これを記念して、2015年から2025年までの10年間における印象的な出来事と、現役職員の振り返りを連載していきます。
女性弁理士のリアルな本音に迫るインタビュー記事を公開中
クライアントの夢に寄り添い、行政との橋渡し役となる――。そんな弁理士の「現場」を記事に収めました。今回密着したのは、女性弁理士の田中咲江さん。オフィスでの様子から、仕事の難しさとワークライフバランス、そして「面白い仕事」と笑顔で語るやりがいまで。その情熱と空気感を、特許庁HPでぜひご覧ください。
意匠・商標の国際出願のページを大幅にリニューアル!
知財経営支援ネットワークにおけるアクションプランを策定しました
ふくしまイノベーション「企業ファイル」FILE#08
株式会社マザーソリューション
2024年1月、特許庁は福島県及び公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構と、知的財産の保護及び活用に関する連携協定を締結しました。知財で福島の新しい時代を切り開く企業やプロジェクトを紹介します。
不可能を可能にした夢の花
独自技術と知財で実現した世界初の「青いバラ」
サントリーフラワーズ株式会社
さまざまなカタチで暮らしに進化をもたらす知財たち。新たなアイデアによって生まれた多彩なアイテムを紹介します。