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発想の転換で新たな価値を創造 とっきょ

Vol.68 2026年3月12日発行号

特集 知財を生み出す女性たち

Interview02

株式会社カルディオインテリジェンス

第6回IP BASE AWARD受賞

少数精鋭の特許権で「美しい特許網」を作る
AI医療の最前線

長時間心電図解析ソフトウェア「SmartRobin AIシリーズ」を展開し、医療のDXを推進するカルディオインテリジェンス。
同社の急成長を支えるのが、共同創業者である波多野薫氏が提唱する「美しい特許網」です。
第6回「IP BASE AWARD」スタートアップ部門奨励賞を受賞した独自の知財戦略と、多様な個性が活躍する組織づくりについて、波多野氏に話を伺いました。

共同創業者間の徹底的な対話で築いた「事業を守る」知財戦略

 当社にとって知財とは、事業成長のエンジンであり、かつ守りの要。知財戦略は、「製品・サービスに直結する基本的な部分の特許とノウハウを適切に使い分けたハイブリッド戦略を実施する」という方針です。目指しているのは、本当に必要な部分だけに絞り込んだ特許権による、シンプルだけど強固な「美しい特許網」。闇雲に特許権を取得するのではなく、全体の事業計画を見て「特許権で守るべき部分」を精査し、権利化しています。
 ただ、創業当初は少し違っていました。共同創業者の多くは博士号を持つ研究者で、「技術的に高度なものこそが特許になる」という固定観念が根強くあり、「事業計画から逆算」し、「製品の提供価値」につながり「特許権で守るべき部分」を精査して、作成した出願申請書は、技術的に高度な内容の多くが記載されていなかったために「このような内容では、特許庁に特許権を認めてもらえないのではないか」という声がありました。
 象徴的だったのは、発作が起きていない非発作時の心電図から心房細動の兆候を見つけるAI技術の出願時でした。出願書類に技術的に高度な部分が記載されていなくても、解決しようとする「課題」そのものに新規性があれば、特許権は取得でき、その特許権は強力になる―。私はそう信じ、社長と膝を突き合わせて議論を重ね、ついには出願し特許権を取得しました。これがきっかけで、技術的な高度さ、イコール、特許権の強さではないという認識が、社内に浸透していきました。
 現在、当社の知財プロセスは経営の中枢に組み込まれています。新規な特許出願や拒絶理由通知に対する対応の際には、役員全員が内容を確認。社長を含む役員全員で事業戦略に合致するように対応を精査しています。


SmartRobin
AIを活用した長時間心電図解析ソフトウェア「SmartRobin(スマートロビン)」。心房細動の高精度な自動検出を実現し、従来は膨大な時間を要した解析作業を大幅に効率化することで、脳梗塞の原因となる不整脈の早期発見を支援する。

SmartRobin

知財は世界へ進出するための「切符」

 当社主力製品「SmartRobin」の開発では、女性スタッフの声が大きく反映されました。というのも、心電図解析の現場では多くの女性が活躍しており、ボタンの配置や配色の微妙なニュアンスなど、以前現場で活躍していた彼女たちの「こうなっていた方が使いやすい」というプロフェッショナルな感性が随所に反映されています。
 こうした感性は、心電図解析の現場に選ばれるための重要な要素になっています。多様なバックグラウンドを持つメンバーが対等に意見を交わす当社の風土は、組織の柔軟性や意思決定の質を高める上でも大きな武器になっていると実感しています。  当社では、グローバルな事業展開も視野に入れていますが、海外企業と連携する際、知財か薬事承認のどちらかは最低限必要だと言われています。ですから、当社にとって、知財は、世界へ進出するための「切符」であると言えます。進出先の国の特許権を取得していることは、その国のパートナー企業から信頼を得るための基盤になります。
 また、「第6回IP BASE AWARD」の受賞は、私たちが当たり前だと思ってきた活動が間違っていなかったという証明になり、社員全員の自信にもつながりました。
 大切なのは、会社のビジョンを知財の観点で考え抜く「当事者意識」です。特許のひとつひとつが、会社のビジョンや価値観を反映したものであること。そのために周囲と対話を重ねるプロセスこそが、知財の真髄ではないでしょうか。さらに、会社の志が自分自身の志と一致していれば、これほど幸せなことはありません。ぜひ、ご自身の軸を見つめ対話を始めてみてください。

  • ※ 販売名:長時間心電図解析ソフトウェア SmartRobin AI シリーズ


会議中

「『異なる専門性と感性の融合』が組織の質を高めていると感じます」と波多野氏

波多野 薫さん

株式会社カルディオインテリジェンス
R&D担当
波多野はたのかおるさん

東北大学大学院情報科学研究科修士、グロービス経営大学院経営学修士(MBA)。2019年にカルディオインテリジェンスを共同創業。第6回IP BASE AWARDスタートアップ部門奨励賞を受賞。その他、株式会社QDレーザ社外取締役、東北大学特任教授なども務める。

PROFILE

株式会社カルディオインテリジェンス

  • 所在地:
  • 東京都港区東麻布1-25-5 VORT麻布イースト2階
  • 設立:
  • 2019年(令和元年)
  • 事業内容:
  • AIを用いた長時間心電図解析ソフトを開発する医療機器製造業
  • 従業員数:
  • 20名(2025年9月現在)

Vol.68 記事一覧

特集1 ファイトケミカルプロダクツ株式会社
特集 知財を生み出す女性たち

Interview 01

未利用資源を新たな価値に変える技術。
知財戦略で拓く循環型社会への道

ファイトケミカルプロダクツ株式会社

東北大学発のスタートアップ、ファイトケミカルプロダクツ。特許取得の「イオン交換樹脂法」を用い、米ぬか由来の未利用油から高機能素材を生み出します。加藤社長は、エンジニアの知見を活かし、特許とノウハウを使い分ける緻密な知財戦略を構築。女性リーダーとして多様な人材が活躍する組織を率い、循環型社会を目指す同社の歩みについて伺いました。

特集2 株式会社カルディオインテリジェンス
特集 知財を生み出す女性たち

Interview 02

少数精鋭の特許権で「美しい特許網」を作る
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株式会社カルディオインテリジェンス

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漫画 株式会社ALE
知財戦略どうやって取り組んでいるの?

夜空を巨大なキャンバスに!
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株式会社ALE

「流れ星を作りたい」その夢を現実に。天文学者で二児の母、岡島礼奈氏が語る、宇宙ビジネスと知財活用の秘訣とは?

INPIT支援合名会社川敬商店
アイデア・出願・事業展開・海外展開等

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