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特集2
中小企業を含めた日本企業の海外展開を後押しするため、特許庁では国際的な知財インフラ整備のための取組を行っています。国際政策課多国間政策室の小野孝朗室長に、その具体的な内容を聞きました。
海外の特許取得のスピードを上げるために日本国特許庁が提唱し開始したのが、「特許審査ハイウェイ(PPH : Patent Prosecution Highway)」です。PPHは、各特許庁間の取り決めに基づき、第1庁(先行庁)で特許可能と判断された発明を有する出願について、出願人の申請により、第2庁(後続庁)において早期審査が受けられるようにする枠組みです。
PPHを利用することで一次審査結果の通知(FA)が出るまでの期間を短縮できます。例えば米国では、通常16カ月ですが、PPHを利用すれば6カ月で審査結果がわかります。また、既に第1庁で特許性ありと判断された出願を対象とするため、第2庁での特許取得率のアップも期待できます。
2006年に日米間で世界初となるPPHを開始して以来、現在48の国・地域で実施されています。そのうち日本との間でPPHが利用できるのは、42の国・地域で、現在も拡大中です。
知財制度の不備があったり、適正に権利が利用できない国・地域では、模倣品や海賊版が作られ流通してしまうことが多々あります。そこで私たちは、被害状況の調査や情報収集を行うとともに、これらの国・地域に対して対策を強化するように働きかけています。また、模倣品、海賊版を税関で差し止めてもらえるように、該当国・地域の税関職員に対して研修を行うなど、取締り強化のための環境づくりも行っています。
冒認商標に関しては、特に被害が多い中国や台湾に対し、商標審査において日本の地名などを安易に登録しないなどの適切な対応を要請しています。また、日本のユーザーの皆様には、法的対応マニュアルを提供するほか、北京のジェトロ事務所と台北の日本台湾交流協会にワンストップで相談できる特別相談窓口を設けてもいます。
知財保護が十分ではない国へは、適切な知財保護の実現は、先進国のみならず、その国にイノベーションの創出促進やブランド力アップなどの経済発展をもたらすことだと理解してもらえるよう、啓発活動も行っています。
例えば同じ特許制度といっても日本と他国では、細かく見ると違う点もあります。そこで、日本のユーザーが海外でも日本と同じように知財権を取得・活用できるように、日本と他国の知財制度や運用を調和する働きかけを行っています。必ずしも相手国にすんなりと受け入れられない場合もありますが、そのようなときにどう上手く調整をしてWin-Winの関係としていくかが重要です。