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あのとき、あの知財
大ヒットの裏側を探る!
芯先に注目した新開発の「クルトガエンジン」を搭載し、書くたびに芯が自動的に回って尖り続けるシャープペン。いつも一定の細さと濃さで書き続けられ、ノートや手帳もきれいに。
発売:2008年
登録商標 第 5148803号 / 第5219565号
登録意匠 第 1333079号 ほか
ヒットのワケ
書くたびに芯が回って鋭角になる機能は従来のシャープペンにはなく、約5,000本の試作品を経て書き味のよさを実現しました。使用頻度が高い学生から人気となり、年間80万本の当初目標を軽く超え、300万本の売り上げを記録したんですよ。通常のシャープペン部品の倍にあたる22パーツを使用していますが、内部が見える構造や素材の工夫のほか、学生が買いやすいよう価格も考慮しています。
研究開発センター品川 副所長 中山 協さん
文字を書くたびに芯が回って、いつも濃く、細く。そんな新機能で大ヒットとなったのが、三菱鉛筆の「クルトガ」。2008年の発売以来、シリーズ販売累計9000万本以上を記録している。本格的な開発が始まったのは2005年。
「基本機能から見直した、全く新しい次世代型シャープペンを」との特命によるものだったという。
文具業界は「成熟産業」といわれ、シャープペンの基本構造は40年近く変わっていない。従来の製品は、書き続けるうちに芯が偏って斜めに摩耗(偏減り)する。書いているうちに文字が徐々に太くなったり、斜めに尖った芯先が紙に引っかかったりするのは常だった。この“潜在的な不満“を解消したのが、自動芯回転機構「クルトガエンジン」だ。機構内部が3つのギアに分かれ、芯に連結された中ギアが筆圧を利用して上下に運動。これにより一画書くたびに中ギアと芯が少しずつ回転して芯先を均一に摩耗させ、常に円錐形の芯先を保つ。ただし、芯を回転させる原動力となる筆圧は個人で異なり、芯の減り方も千差万別。試作を重ね、一画で約9度回転、40画で一周※という数字にたどり着いた。
この自動芯回転機構は、製品化が決定する前に基本特許として出願。回転部分を視認できる技術など数十件に及ぶ関連特許も取得し、常に細く濃い描線と、快適な書き味を実現している。商標の「クルトガ」は、芯がクルっと回って尖る特徴に由来。新機能を誰もがすぐ認識できる点を訴求し、命名された。さらに、芯が回って尖る様子を想起させる図形商標も登録し、プランドイメージを消費者に分かりやすく伝えている。
一本の細い筆記具に詰まった独創的なアイデアと多くの知財。そんなことを思い浮かべながら、書き味を楽しんでみてはいかがだろう。
※ 一部商品は一画で約18度回転、20画で一周。
2019年12月2日
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