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Vol.44
広報誌「とっきょ」2019年12月9日発行号

知財活用企業紹介

株式会社コメダ

くつろぎという体験価値を提供 知財戦略におけるコメダの流儀

「コメダ珈琲店」や「コメダ謹製やわらかシロコッペ」など日本をはじめ海外でもフランチャイズ(FC)展開の快進撃を続けるコメダ。メディア広告を行わずに認知度を高めるコメダのブランド戦略・知財戦略にまつわる取組にフォーカスします。

本社の写真

Company Profile

ブランドコンセプトを体現する店舗と同じデザインの内装でまとめられた本社

名称 株式会社コメダ
本社 愛知県名古屋市東区葵3-12-23
資本金 1億9680万円
従業員数 317人(社員)1,109人(パート・アルバイト)
事業内容 コーヒーショップおよびフランチャイズチェーンの経営
   
2019年、47都道府県出店達成
コメダ珈琲店の写真
「くつろぐ、いちばんいいところ」をコンセプトに、誰もがくつろげる街のリビングルームとして約860店展開する「コメダ珈琲店」。カップやソーサーに付しているロゴマークは商標登録をしている。※2019年10月現在

三角屋根にレンガの壁でおなじみの「コメダ珈琲店」をはじめ、「コメダ謹製やわらかシロコッペ」「おかげ庵」などの飲食店をフランチャイズ展開(FC)する株式会社コメダ。

1968年に名古屋で創業した同社は、1993年よりFC展開を本格化し、2019年6月には遂に日本全国47都道府県の出店を達成した企業です。その数はすべての業務形態を合わせて、実に約880店舗。名古屋の喫茶店という枠を大きく超え、いまや日本中の多くの人が知っている喫茶店チェーンとなりました。

「当社が知的財産に対する取組を本格的に始めたのは、FC展開のスタートと同じ1993年頃でした。名古屋を飛び出して展開するにあたり、まずは『コメダ珈琲店』の名を商標登録したのです」。そう語るのは執行役員営業サポート部 部長の杉野正貴氏です。以降、「コメダおじさんロゴ」「KOMEDA's Coffee」「おかげ庵」をはじめ、看板商品の「シロノワール」など定番商品も商標登録。現在は総務部内にある法務担当者3名で、新商品や新規事業の名称を中心に、商標関連の業務を行っています。

くつろぐ、いちばんいいところ」がブランドコンセプト
●●の写真
執行役員 開発本部 副本部長 丸地猛司氏(右側)と、執行役員 営業本部 副本部長 兼 マーケティング部 部長 兼 営業サポート部 部長 杉野正貴氏(左側)。

「コメダ珈琲店」「おかげ庵」といった業務形態に関わらず、コメダの一貫したブランドコンセプトは「くつろぐ、いちばんいいところ」。広告塔ともいえる店舗外観をはじめ、統一感のある内装、スタッフによるサービス、独自性の高い商品は、すべてがブランディングにつながっているといいます。

「お客様におくつろぎいただける空間を演出するために、漆喰をモチーフにした壁、天井の木材、レンガを使用しています。また大きめで温かみのある色調の椅子や、高さ・幅にこだわった安定感のあるテーブル、プライバシーを守るパーテーションを組合わせて、統一感のあるデザインを全店舗で徹底しています」と、同社で店舗デザインを長年手掛けてきた執行役員 開発本部 副本部長の丸地猛司氏はいいます。

「当社では、店舗の外観はもちろん、内装、設備や備品の配置・組合せが、ブランドイメージの統一性・同一性にとって必要不可欠だと考えています。新規出店に際しては当社指定の設計・施工会社への委託を推奨しており、当社指定の会社に委託しない場合にもブランドイメージを維持するために、本社の社員が施工に携わります」と丸地氏。

800店以上にも及ぶFC展開でブランドコンセプトを維持するための方策は、もちろん建物だけではありません。商標を守るロゴマニュアルをはじめ、接客やサービス、店舗運営にまつわるオペレーションマニュアル、調理に特化したクッキングマニュアルや衛生マニュアルに至るまで、コメダのノウハウを凝縮してマニュアル化しているそう。

「ただ、店舗やサービスがずっと変わらない、ということではありません。くつろげる空間は、時代によって変わっていきます。たとえば、パソコンを叩くキーの音に対してついたての防音性を上げたり、充電のためにテーブルにコンセントをつけたり。変わらないのは、『くつろぐ、いちばんいいところ』というコンセプトであって、それを追求するために店舗やサービスも変わっていきます」と杉野氏はいいます。

そして、メディア広告をほぼ行わないそうです。

「創業者の考えは、いつもお店に来てくださるお客様を大事にするというもの。ですから新規のお客様を狙ったメディア広告はほぼ行っていません。『体験価値』こそが広告宣伝であると考え、居心地の良い空間、期待を上回るメニューやサービスなど、また来たくなるお店作りに力を入れています」と杉野氏。

「不正競争防止法」による類似店舗の使用差止の仮処分決定
コメダ珈琲店の写真
2016年に立体商標として登録された「コメダ珈琲店」。商標登録第5851632号

2016年、コメダ珈琲店の外観・内装、商品に酷似した店舗に対する訴訟で、「不正競争防止法」による店舗使用差止の仮処分決定が下されて話題となりました。

「想定していたよりもはるかに大きな社会的反響があったことに驚きました」と丸地氏。訴訟前は、外観や内装、商品がコメダ珈琲店に似ている店舗があるという情報提供が頻繁にありましたが、以降はほぼなくなったそうです。

「この訴訟以降、社内でも知的財産の重要性についての認識が高まりました。商標については、新規商品はもちろん定番商品も改めて権利範囲を見直すなど、商標登録を強化しています」と現在の知財への取組について杉野氏は語ります。

「これを機に、総合的な知財戦略の一つとして、店舗名を付した形ではありますが、最も標準的な郊外型建物形で立体商標を登録しました」

海外をはじめ新規事業で知財を活かす
シロノワールの写真
看板商品の「シロノワール」をはじめ、独自性の高い商品については積極的に商標登録出願をしている。

一方、ときを同じくして2016年より海外でのFC展開もスタート。海外でもブランドコンセプトを変えず、コーヒーカップも日本と同じく、有田焼のものを使用しています。同時に、中国や台湾でも商標登録を行いました。ハウスマークはもちろん、台湾での現地語「客美多(コメダ)」も登録。今後海外展開の可能性がある国でも出願を行っています。

また、創立50周年を機に〝KOMEDA COMES TRUE.〟を合言葉とする「心にもっとくつろぎを」プロジェクトをスタート。これらを商標登録し、コメダ式のサステナビリティ活動に取り組んでいます。

2020年、改正意匠法の施行によって保護対象が建築物や内装まで拡充されます。それを踏まえ、丸地氏は「新規性という要件が必要な意匠法では残念ながら『コメダ珈琲店』や『おかげ庵』は対象となりませんが、新規事業については商標はもちろん、意匠登録についても積極的に活用していきたいと思います」と将来のビジョンを語ってくれました。

新店舗「ADEMOK」の写真
2019年10月にパンの製造販売を専門に行う新店舗「ADEMOK」を沖縄に出店。名前の由来は、「KOMEDA」を逆にしたもの!
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