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Vol.44
広報誌「とっきょ」2019年12月9日発行号

“日本発”ドローンメーカーの挑戦

独自の最先端技術を使った産業用ドローンの開発

小型ドローンの非GPS環境下での飛行を実現

新技術の開発競争が繰り広げられる産業用ドローン業界。100%自社技術を謳う、株式会社自律制御システム研究所(以下ACSL)の担当者に、話を聞きました。

Company Profile

株式会社 自律制御システム研究所(ACSL)の写真

[名称] 株式会社 自律制御システム研究所(ACSL)
[住所] 千葉県千葉市美浜区中瀬二丁目6番地1 WBGマリブウエスト 32階
[資本金] 30億円
[従業員数] 44名
[事業内容] 産業用ドローンの開発と製造

ロボット制御の研究に取り組んでいた、千葉大学・野波健蔵研究室から生まれたベンチャー企業。
2013年に創業し、2018年に東証マザーズに上場。

– 現在ドローンはどのようなところで活用されているのでしょうか。
山本俊介の写真
ACSL-PF2

ドローンはいま、様々な場面で「人」に代わって活躍しています。

たとえば、従来インフラ設備などの「点検」作業を行うには、足場を組むための費用や人件費などの多大なコストが掛かっていました。しかし、ドローンを活用すればそういったコストを削減し、さらには飛行ルートを記録しながらドローンが集めたデータ・画像の解析もできます。弊社ではAIを使って集めたデータの画像診断を行い、顧客の要望した情報の抽出、報告するレポートの作成までを一気通貫で行うシステムも手掛けています。

ドローンがピンポイントで着陸するマーカーの写真
日本郵便にて、南相馬∼浪江で約10km局間輸送を実用化。写真内のマーカーは、ドローンがピンポイントで着陸するための印。

ほかにも「物流」分野では、2018年11月から、日本郵便が弊社のドローンで配送サービスを開始しました。福島県南相馬市の小高郵便局から約10キロメートル離れた浪江郵便局まで荷物を積んだドローンを飛ばすというものです。この飛行は補助者なし目視外飛行(レベル3)と呼ばれているもので、これは日本ではほとんど実現されていません。最近では、2019年10月の台風19号で被災した東京都奥多摩町で、救援物資を運ぶ緊急配送を実施。自治体などから要請を受けるケースも多くなっています。

– ACSLならではの強みは何でしょうか?
画像処理を活用したビジュアルスラムの写真
画像処理を活用したビジュアルスラムは、GPSなどに依存せず、屋内・トンネル内などでも自律飛行が可能。

多くのドローンはGPSを利用して飛行するため、GPS情報を取得できない場所では飛ばすことができません。そのような、非GPS環境(屋内やトンネル内など)で活躍するのが、ビジュアルスラムという技術です。この技術は、搭載したカメラに映る情報から周囲の状況を把握し、自分の位置を推定するというもので、車の自動運転などにも使われているものです。データの処理量が大きいため、小型のドローンへの搭載は難しいといわれていましたが、それを可能にし、自律飛行を実現したことが弊社の強みです。 ドローンを飛ばすためのアプリも自社で開発しており、関連する技術は特許出願もしています。

ドローンの心臓部であるフライトコントローラーが自社製であることも特徴です。弊社はソフトウェアも含めて、すべての重要技術が自社製なので自信をもって品質保証ができ、各企業の業務に応じたカスタマイズにも柔軟に対応できます。

また、安心・安全のための技術も、弊社の強みです。故障しにくい設計や、万が一トラブルが起きても事故を未然に防ぐような技術開発にも力を入れています。

– ACSLにとって知財活動はどんな位置づけですか?

研究開発機関からスタートした会社ですので、特許権の取得には積極的に取り組んできましたが、上場してからはより一層、知財戦略に力を入れています。いまは、技術を盗用されたり、他社から訴訟されても対応できるように、防衛的な知財活動を中心に取り組んでいます。

現在、知財専門の部署はなく、ほかの部署との兼務ですが、その代わり外部の力を最大限活用しています。法律事務所やドローンの技術や知財に詳しい特許事務所にご協力いただき、コンサルティングも含めて包括的な知財活動を行っています。

自律飛行に関するソフトウェア関連はブラックボックス化していますが、機体のハードウェアや点検方法などは積極的に出願するようにしています。

海外への出願は、PCT国際出願を利用しています。ドローンに用いられる技術は様々な分野にまたがるものが多いので、自社で網羅的な調査をすることが難しいのですが、このPCT国際出願では、審査官が作成する調査報告を得ることができます。我々は、この内容をもとに海外で権利取得を行うか否かを判断しています。

※PCT国際出願とは、特許協力条約 (PCT: Patent Cooperation Treaty) に基づく国際出願のこと。複数の国への特許出願手続きを簡素化できる。https://www.jpo.go.jp/system/patent/pct/seido/index.html

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