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Vol.45
広報誌「とっきょ」2020年3月9日発行号

知財活用企業紹介

株式会社スノーピーク

自らがユーザーになり自らしたい体験を世に送り出す

国内生産にこだわり、高い品質と優れたデザイン性でアウトドアのビギナーから玄人まで幅広く支持されているスノーピーク。ユーザー視点で課題を発見し、製品・サービスを生み出す「デザイン経営」を、意識せずとも実践している、その秘訣に迫ります。

会社の写真

Company Profile

自らもユーザーという立場で考え抜かれた製品は、革新的で独創的なものが多い。

名称 株式会社スノーピーク
本社 新潟県三条市中野原456
資本金 10億7,003万円(2018年12月末時点)
従業員数 社員:341名(2018年12月末時点)
事業内容 アウトドア製品の開発・製造・販売
アパレル製品の開発・販売
   
開発のきっかけは、自身が使う道具に満足できなかったから
スノーピークの本社の写真
新潟県の燕三条を本拠地として、地元に密着した製品開発にこだわり続けるスノーピークの本社。※2019年10月現在

平成31年度、特許庁『知財功労賞』に新設された『デザイン経営企業』カテゴリーで、特許庁長官表彰を受賞したアウトドアブランドの『スノーピーク』。

徹底したユーザー目線で開発された製品の数々は、使い勝手の良さのみならず、そのデザインの秀逸さと高い品質によって、多くのキャンパーたちに支持されてきました。キャンプを愛する人が集結する同社の開発理念は、自らもユーザーとして、自分たちが欲しいと思う革新的な製品を作ること。その製品を通して、キャンプを楽しむ人と人とのつながりが強くなる体験価値。さらにその体験を通じて人生価値を高めることが重視されています。

この、キャンパーがキャンパーのために作り出した製品は、まさに『痒い所に手が届く』仕上がりとして、多くのユーザーに支持されているのです。これこそ意識せずともデザイン経営を実践しているといえるのではないでしょうか?

そこで今回は、スノーピークの魅力的な製品開発における姿勢や、知財に対する意識についてお話をじっくり伺いました。

「そもそもスノーピークは、登山愛好家でもあった創業者の山井幸雄氏が金物問屋を立ち上げた際に、当時の道具に満足できず『本当に欲しいものを自分でつくる』という志の下、オリジナルの登山用品を開発したことにはじまります。

一人で企画・開発を行い、自らの足で工場を探して試作。その試作品を片手に営業をかけて量産までこぎつけた。この精神が今も根付いているのです。現在も開発の担当者は、アイデア出しから製品が量産されるまでの工程を全て一人で行います。

青栁 克紀氏の写真
執行役員 人事管理本部長 CHO 青栁 克紀氏。

そしてもう一つ大切にしているのは、地元とのつながりです。新潟県の燕三条で、職人さんたちとともに作り上げるからこそ、製品に対する愛情や責任感も強まっていると思います。

商標登録は、1963年に登録された『Snow Peak 』のロゴが始まりで、会社名や製品名、ブランド名などは商標登録しています。特許や意匠は、開発担当者が自分たちが欲しいものを純粋に追求していくことで、新しいものを思いつく。

それを出願して権利化するという流れです。」

企業として拡大するなか、これまでとは違う組織作りが必要となってきた

設立当初は15人ほどであった同社も、今や数百人規模の大所帯。当然ながら組織として、これまでと同じ経営方針でいられるはずもないと思いますが・・・。

「それはご指摘の通りですね。長い年月続けていれば、当然ながら昔からいる社員の年齢はあがりますから、給料も高くなります。通常の企業であれば、年齢とともに管理職となり、経営を意識した働き方が求められますよね。弊社も以前はそういう形式をとっていました。

クリエイティブ職というと今風の響きですけど、かつての言葉を使うなら職人です。そもそもモノづくりが得意な人が、人を育てたり、管理したりすることが得意とは限りませんよね。年齢を重ねたら管理職にならないといけないというのは、その人のポテンシャルを活かしきれないのでは?そういう考えから、現在ではクリエイティブ職を専門に続けられる役職を新たに設けました。

しかもクリエイティブ職としての給料には、上限を設けていないんです。実績ベースでの査定ですから理論上は社長よりも高給取りになることができる!まぁ、流石に社長よりも高い人はまだ存在していませんが(笑)。あくまで、社員の特性や自発性を尊重した環境づくりを意識した結果といえますね。

焚き火台の写真
現在の焚き火ブームの火付け役となる、地面を痛めない「焚き火台」を発表。

さらに、オートキャンプ事業を立ち上げてから約30年、『スノーピークウェイ』というミッションステートメント(運営理念)を昨年初めて改訂しました。『自然指向のライフスタイルを提案し実現する』から、『自然指向のライフバリュー(人生価値)を提案し実現する』へと変えています。自然と人、人と人とのつながりを通じ、人生価値を高めていきます。

キャンプを取り巻く環境や時代の変化、弊社のビジネスフィールドが広くなってきたことなどもあり、私たちの志をより正しくお伝えするためです。」

国内市場の充実化と、海外市場での展開強化
スタイリッシュなデザインの写真
アウトドアに限らず、インドアでも使用したくなるスタイリッシュなデザイン。このデザイン性の高さも魅力のひとつ。

「日本のキャンプ人口は6〜7%といわれています。私たちは自然と触れあうことで、人間性の回復ができるという考えの下、残りの93%の方にも『自然に出れば解決できることがあるかもしれない』ということを伝えていきたいと思っています。

その思いは国内に限らず、海外の方へも発信していきたい。そういった意味でも、今後は海外市場での展開も強化していくつもりです。

例えばアメリカでは弊社はチタンのコップで知られているんですけど、小物を専門に扱っているのではなく、アウトドアの総合的なメーカーであることの認知を拡大していかねばなりません。

そこで前述の『スノーピークウェイ』の変更が関わってくるわけです。海外展開を強化するにあたって、スノーピークが何を伝えたいのか? 原点に立ち戻って、自社のブランディングを見直している最中です。

キャンプ文化が成熟しているアメリカでも、日本で築いてきた『おしゃれで快適なキャンプ』を提案していきたいと思います。」

モノから顧客体験へ、それも人生価値を高めることを決意表明したスノーピークのさらなる挑戦は続きます。

キャンプの写真
広大なキャンプ場内に建てられた本社の社屋では、いつでも開発製品の使い勝手を試すことができる。まさに理想の環境。
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