Interview02
株式会社Laspy
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Interview02
株式会社Laspy
防災備蓄を街のインフラに!
Laspyが提供する防災備蓄ワンストップサービス「あんしんストック」は、都市の防災インフラを再構築する画期的な試み。
コロナ禍での社会不安を原点に、安心な社会の実現を目指す藪原社長の挑戦と、その事業を支える知財の力に迫ります。
企業の課題を解決する防災備蓄の代行業務
当社創業のきっかけは、社会不安が高まったコロナ禍の買い占め騒動の中で、「なぜ必要な物資が偏在し、手に入らなくなるのか」と疑問を感じたことでした。災害やパンデミックのたびに繰り返される物資不足。それは備蓄という仕組みが各個人の努力に依存しすぎているからだと考え、コミュニティ全体で効率よく備蓄を整える、そんな社会の実現を目指して、私は「Laspy」を立ち上げました。
「あんしんストック」は、法人や施設向けに防災備蓄をサブスクリプション型で提供・管理するワンストップサービスです。備蓄品の調達、保管、棚卸、賞味期限切れ時の入替え、そしてフードバンクへの寄付。これらを一元化するシステムを提供し、導入企業はマイページ上で各拠点の備蓄状況や保管場所、期限まで一目で把握できます。加えて必要に応じて当社倉庫の利用や、レイアウト・収納方法の個別対応も行っています。また、災害発生時には安否確認サービスなども無償オプションで利用可能です。
現在、サービスは法人を中心に工場やオフィス、ホテル、共有スペースのある集合住宅へと拡大し、契約企業は約90社超。都内のインキュベーションオフィスや、大手メーカー、管理会社など、幅広い業種で受け入れられています。東京都では条例で企業などに従業員の3日分の飲料水や食料などの備蓄に努めるよう求めていますが、企業が通常業務以外でこれに対応する負担は小さくありません。こうした背景が、当社サービスの大きなニーズにもなっています。
予想外のかたちで知財が拡販に貢献
「あんしんストック」では、2022年5月に特許を取得しています。出願のきっかけは、日本スタートアップ支援協会からの「事業アイデアをしっかり知財化すべき」という強い推奨でした。当時、知財に関する知識はほとんどありませんでしたが、知財コンサルタントによる事業アイデアの整理と要件定義の支援、また特許提案書作成は弁理士の方に全面的にサポートしていただき、またスタートアップ対応面接活用早期審査を利用したこともあって、スムーズに短期間で特許取得することができました。
取得当初は、ビジネスに直接影響しているという実感はありませんでしたが、事業を進める中で大きな効果を体験します。過去に同様のサービスを断念した大企業が多数存在すると聞く一方で、我々のサービスを知って「ぜひ販売させてほしい」という代理店の申し出が格段に増えたのです。現在、約50社の代理店が「あんしんストック」を販売していますが、これは特許があることに加え、このビジネスアイデアをサービス化するには多大な労力と費用がかかることを認識されているからだと考えています。当社にとっての知財は、中小スタートアップである私たちのビジネスを、資金力のある大企業から守る「盾」のようなものだと認識しています。
今後は、ガソリンスタンドや郵便局といったさまざまな生活インフラとの連携も視野に入れ、全国展開を目指していきます。周辺領域やリスクマネジメント領域で新たなプロダクトを開発しており、実用化の際には、特許性があるかを確認し、必要に応じて知財取得を進めていく方針です。これからも専門家のお力を借りながら、ビジネスを守り成長させる重要な要素として、知財活用に力を入れていきたいと思います。
株式会社Laspy
代表取締役CEO
藪原 拓人さん
2006年SMBC日興証券、2015年三菱UFJモルガンスタンレー証券でESG運用や投資銀行業務などを経験後、2018年にKDDIで新規事業企画を担当。2021年、防災備蓄プラットフォーム「あんしんストック」を提供する株式会社Laspyを創業。
知財は盾と矛の武器であり、ビジネス発想の生命線
―スタートアップと共に挑む弁理士の現場
「あんしんストック」の特許出願は2021年ですが、当時はまだアルゴリズムがシンプルなビジネスモデル特許が認められることは多くなく、出願はある意味でチャレンジでした。結果、一度拒絶を受けたものの、「災害を検知し、その程度の閾値に応じて備蓄品を割り当てる仕組み」を核として手続補正を行い、早期に特許権を取得することができました。
私は、スタートアップを支援する際は、まず彼らの「真似されたくない」という強い思いを真摯に受け止めることから始めます。弁理士はとかく進歩性の有無とか、権利が取得できそうかどうかという話から入りがちですが、起業家が考えているビジネス視点で深く対話することで信頼を築き、事業の核となる「着目している課題」や「解決手段」を特定し、まだ公開されていない将来のアイデアからも特許性を探る、ビジネスコーチングのような役割も担うべきだと思っています。
スタートアップにとっての特許は、単なる権利ではなく、経営戦略上の強みを抽出した発想の生命線でもあります。弁理士は、DXやAIといった新しい技術分野の発明に対しても臆することなく、発明者の代弁者として「なんとか事業上の強みをそのまま特許にできないか」「この特徴的なビジネスを権利で守れないか」とギリギリまで考えなければなりません。
「知財」とは生きた発想であり、何が知財と呼べるかは時代とともに変化しています。教科書通りではない知財も丁寧に扱い、創造的に挑戦的に、企業が事業を成功させるための多角的な知財の選択肢を提供することが、スタートアップ支援における弁理士の醍醐味だと思っています。
ソシデア知的財産事務所代表
弁理士 小木 智彦さん
株式会社Laspy
Interview 01
100年の耐久性。デザイン性も
沖縄から世界へ 次世代超軽量コンクリートの可能性
株式会社HPC沖縄
沖縄のスタートアップ企業が開発した超軽量コンクリート「HPC」が注目を集めています。その特長は軽くて強く、しかも海水で練ることが可能。独自技術を特許で保護し、ライセンスビジネスを展開するHPC沖縄の取組について、阿波根社長に聞きました。
Interview 02
防災備蓄を街のインフラに!
知財が加速させた
スタートアップのビジネス展開
株式会社Laspy
Laspyが提供する防災備蓄ワンストップサービス「あんしんストック」は、都市の防災インフラを再構築する画期的な試み。コロナ禍での社会不安を原点に、安心な社会の実現を目指す藪原社長の挑戦と、その事業を支える知財の力に迫ります。
「普及」と「品質維持」に知財を活用
災害時にも安心して住める高品質住宅を全国に!
株式会社アーキビジョン21
仮設住宅への展開が期待されるムービングハウス「スマートモデューロ」。その普及のために知財を活用したブランド保護戦略を展開するアーキビジョン21の活動を紹介します。
知財支援はINPITにおまかせ!
四国プランニング株式会社
「INPIT知財総合支援窓口」は独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)が、47都道府県に設置している地域密着型の相談窓口です。中小企業をはじめとした企業の皆さまの経営課題解決に向け、自社のアイデア、技術、デザイン、ブランドなどの“知財”の面から支援を行います。
ハーグ協定のジュネーブ改正協定への加入
2025年は、日本で専売特許条例が公布されてから140年となります。これを記念して、2015年から2025年までの10年間における印象的な出来事と、現役職員の振り返りを連載していきます。
「コンセント制度」を適用した初の商標登録を行いました!
特許庁は、2025年4月7日、昨年4月に開始された「コンセント制度」を適用した初の商標登録を行いました。
INPIT外国出願補助金 令和7年度第2回公募のお知らせ
模倣品対策支援事業(サポート型・セルフ型)公募のお知らせ
ふくしまイノベーション「企業ファイル」FILE#05
株式会社クフウシヤ
2024年1月、特許庁は福島県及び公益財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構と、知的財産の保護及び活用に関する連携協定を締結しました。知財で福島の新しい時代を切り開く企業やプロジェクトを紹介します。
災害時に“あったかい”を提供する電子レンジバッグ
株式会社WILLTEX
さまざまなカタチで暮らしに進化をもたらす知財たち。新たなアイデアによって生まれた多彩なアイテムを紹介します。